掲載日 2004年12月13日
昭和シェル石油株式会社(以下、昭和シェル)は、1985年1月に昭和石油株式会社とシェル石油株式会社の合併により誕生した会社で、全国に15の支店(北海道支社含む)、710の特約店(2003年12月末現在)を持ち、ガソリンスタンドの数は5,017カ所(2003年12月末現在)に上ります。1980年代から続く規制緩和と自由化の波の中、同社がどのように変革し成長してきたか、その過程をご紹介します。
お客様ニーズ

昭和シェル石油株式
会社
執行役員兼BPR
プロモーション
センター部長
佐藤 仁様
規制緩和と自由化
これまで、日本の石油産業は、さまざまな規則によって制約されていました。
たとえばガソリンの生産枠、ガソリンスタンドの建設枠、原油の処理枠、重油の輸入枠などは業者ごとに割り当てられていましたし、精油所の設備の新増設には認可が必要でした。しかしこれは、裏を返せば規制や行政指導、関税によって保護されていたということでもあります。「各社横並びでやっていればリスクのない経営環境であった」と当時を振り返る佐藤氏。規制が緩和され、石油業界を取り巻く経営環境は大きく変わっていったのです。
当時の業界経営者たちは、規制緩和、自由化はできるだけゆっくりと、ソフト・ランディングさせたいと考えたそうです。しかし、自由化と同時にマーケット・メカニズムが働いてしまったため、環境は急変していきました。

図:レギュラー
ガソリンの
リテールマージンと
製品輸入量の変化
(クリックで拡大)
つまり、自由化と同時に各社が価格競争に走った結果、業界自らが価格破壊を起こしてしまったのです。そして、1996年の特石法廃止を境に、石油業界の経営は非常に苦しいものになりました。これは、自由化によって輸入量が増えたのではなく、マーケット・メカニズムによるものといえるでしょう。
ソリューション
第1期変革 - “Jump21”(1996年~2001年)
昭和シェルでは、特石法廃止によって環境が激変するのを予測し、1996年に第1期変革運動“Jump21”をスタートさせました。テーマは、「発想の転換と抜本的な行動の変革」。それまでは、安定供給、安定操業を大きな柱として経営していたので、自由化後は大きな発想の転換が必要でした。目標を「リーディング・カンパニーへの変革」とし、「とくに、目に見える定量的な成果を上げることを目指すことにした」と佐藤氏は言います。そして、それを実現するための戦略は「経営資源の集中化による競争力強化と収益拡大」、「ローエストコストサプライヤー化」、「部門横断・スピードを持った変革の推進」としました。
具体的に説明すると、「経営資源の集中化による競争力強化と収益拡大」のためにビジネス・ポートフォリオを組み替えること、つまり事業の見直しを行ない、結果的には関係会社の約3分の1を統合・売却・清算し、生産販売も付加価値の高い製品へシフトすることができました。そして、「ローエストコストサプライヤー化」のために、構造的なコスト削減を実施しました。たとえば、ガソリンをガソリンスタンドに届けるタンクローリー車を渋滞の多い時間帯を避けて運用する、というようなことを細かく実行していったのです。2003年には1995年と比べて1,177億円(単体ベース)の削減に成功し、それらは借入金の削減によるギアリングレシオ(資金調達比率)の改善、キャッシュフローの改善にも貢献しました。
第2期変革(2002年~)
持続性のある成長へと会社を導くために、2002年には第2期変革を開始しました。第1期の主軸であったコストの構造的な削減とポートフォリオの見直しは継続しつつも、顧客志向に軸足を移し、コスト削減から成長戦略、差別化戦略などを実行していったのです。たとえば、清浄性能の高いハイオク・ガソリン“Pura”などの新製品を投入し顧客ベースの拡大に成功しましたが、同時に顧客にフォーカスしたシンプルで効果的なビジネス・プロセスを再構築する必要にも迫られました。

図:SAP導入~
Business
Innovation Center
(クリックで拡大)
SAPをツールとしたBPRプロジェクト
顧客にフォーカスしたシンプルで効果的なビジネス・プロセスを再構築するため、SAPをツールとして仕事のやり方を抜本的に見直すBPRプロジェクト“BIC”(Business Innovation Center)を2002年2月から翌年の9月までの20カ月間で行ない、2003年の10月に、実際にSAPを導入させました。以前より、一部の機能でSAPを利用していましたが、この時に、独立したシステムを必要とした人事以外のすべての部門にSAPを導入したのです。原油の調達から、ガソリンスタンドでの販売まで、すべてをカバーするために、SAPのモジュール数は13に及んだといいます。
「ここに辿り着くまでには、いくつかの失敗もありましたので、それらの事例を徹底的にレビューし反省した上で、導入アプローチは、ビッグバン方式でビジネス主導型としました。そしてITセクションだけではなくトップダウンの全社運動としてプロジェクトを行ないました」(佐藤氏)
導入効果
稼働後半年段階でのSAP導入効果
半年後、SAPの導入効果が明確に現れてきました。ビジネス・プロセスでは、インターネットを利用した受注・請求業務の自動化(主燃料受注で90%以上)、オンライン与信管理の実施、月次決算の早期化(従来の8日から5日へ)などが達成され、データ面では、全社購買データの集中管理が可能になり、その後の集中購買への準備が整いました。さらに、マスターデータが統合・簡素化できたため、ホスト・システムの廃止により10%強の維持コスト削減が達成されました。
将来の展望
トランスフォーメーションを加速する
昭和シェルは、2004年4月、SAP導入を契機にトランスフォーメーションを加速する組織として「BPRプロモーションセンター」を設立しました。今後はこの組織を中心に「昭和シェルグループのトータルバリューチェーンの強化、ITと経営両方を理解する人材を育成し戦略を実現することを目指していきます」(佐藤氏)
お客様の声
リーディング・カンパニーを目指して
2004年7月、昭和シェルはサウジアラビアの国営石油会社Saudi Aramco社の、15%の出資を受け入れると発表しました。佐藤氏は「この資本参加は、新しい変革のきっかけになると考えており、より高い経営の透明性確保を実現するのが課題です」と考えています。
「リーディング・カンパニーとは、常に背中の見える距離を保てる、つまり、他社よりも常に一歩先を走る努力を続けられるような遺伝子を持った会社です。昭和シェルは、今後もそのような企業を目指して成長を続けたいと考えています」(佐藤氏)
用語の説明
- 特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)
石油の輸入自由化の前段階として施行された時限法。石油の輸入に関して、事実上、国内に精製設備を持つ企業のみが輸入できるとした。 - BPR
Business Process Reengineeringの略。業務改革。収益や顧客満足度の向上を目的に、業務内容やビジネスプロセスを見直すこと。 - ビッグバン方式
従来のビジネスプロセスやシステムをいったん破棄し、新たなビジネスプロセス、システムを一気に短期間で一括導入する方式。
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事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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