掲載日 2005年1月14日
1936年2月6日に設立された株式会社リコー(以下、リコー)は、設立当初、ジアゾ感光紙とカメラを中心とした事業を展開していました。現在は、複写機などの画像ソリューション、プリンターやCD/DVDメディアなどのネットワークI/Oシステム、ネットワーク・システム・ソリューションのほか、デジタルカメラ、半導体などを事業の柱にしています。ここでは、リコーが行なった特許をはじめとする知的財産(知財)に関する業務改革と、それを支える“RIPS21”というIBMが開発支援したITシステムの概要についてご紹介します。
お客様ニーズ

株式会社リコー
法務・知財本部
審議役 田端 泰広氏
知財保護の重要性増大
リコーでは、研究開発の成果を効率よく知財化する動き、権利化するだけでなく活用していく動きが活発になっています。
一つは、特許を取り、自社の製品の競争力を高めるという動きです。模倣製品、類似製品を排除し商品を守るためには、特許の取得が重要になります。
二つ目は、特許侵害コストの増大を回避するということです。米国はもちろん、日本も特許重視の時代に入っており、ひとたび他社の特許を侵害してしまうと、多額な損害賠償など大きなペナルティーを課せられることになります。それを回避する必要があるのです。
三つ目が、先進企業の多額な知財収入への関心の高まりです。ロイヤリティーの獲得額では、2003年のMDIデータファイル(ダイヤモンド社)によると、世界第1位のIBMが年間1,000億円以上、日本第1位の日立製作所が約400億円と大きな成果を上げており、特許をプロフィット化することが求められるようになっています。
そして四つ目が政府主導による、知的財産立国への対応です。知財を強化することにより日本の産業の競争力を高めていこうという動きに対応しようということです。
このような背景のもと、リコーは知財戦略の成功は21世紀勝利者の条件と考え、知的財産の経営資産化を目指すことになりました。そして、具体的な五つの目標を掲げました。
- 事業・技術戦略に有用性のある知財活動の重点化
- 質の高い特許群の出願強化と他社権利対応の強化
- 知的財産を戦略的に活用し競合優位の実現と事業の自由度の確保
- 知的財産関連情報の分析結果の事業・技術戦略への反映
- グループ知財総合力の発揮
リコーは、この目標の下に活動し、発明し、権利を増産し、そして活用していく、そのサイクルを太く早く回すことによって知財の経営資源としての活用ができると考えたのです。
知財重視風土の定着(QCD+P)
技術者は目標を持って研究開発をしているので、かならず、Quality Cost Delivery(以下、QCD)の目標があります。以前は、ここにパテント(P)の目標はなかったと話す田端氏は、「リコーでは、どうしてもモノづくりが先で、特許活動は二の次になってしまっていたのです」と言います。
それでは、知財業務の改革はできません。
そこで、リコーではQCD+P、つまり、パテント活動も研究開発の中でQCDと等しく重要であるということを風土として定着させることにしたのです。「自分たちの研究開発の成果である発明を知財化するのは発明者の仕事である。同様に、他社の特許を使っているのか調査し対策するのも技術者の仕事である。そういう知財活動は研究開発の一部なのだ」(田端氏)ということです。
そこでリコーでは、知財部門をプロフィット・センターにすることを目指しました。そして、それを支えるための情報システムの再構築が必要不可欠となったのです。
ソリューション

図:知的ビジョン
(クリックで拡大)
知財業務改革支援ツール“RIPS21”の構築
現在リコー内で“RIPS21”と呼ばれる新システムの開発支援を行なったのは日本IBMです。
従来リコーで“RIPS”(RICOH Intellectual Property System)と呼ばれていた基幹系の業務管理システムは、さまざまな問題がありました。これは、メインフレームを中心にしたシステムで、業務フローにはLotus Notes ® を利用するというものでしたが、関連会社で利用できない、個別分散型のシステム・DBがシステム拡張や業務改革の障害となるなどの問題を抱えていたのです。
そこで、基幹業務管理機能も含めた知財統合情報システム“RIPS21”が再構築されました。これは2002年4月に開発を開始し、昨年の8月にリリースされました。
“RIPS21”による業務改革支援

株式会社リコー
法務・知財本部
企画室 情報グループ
リーダー 岡田 桂輔氏
“RIPS21”によるリコーの業務改革支援の狙いは、大きく三つです。
一番目の「技術者の知財活動への支援強化」では、まず、知財品質を高める(QCD+P活動)ために、開発ステップに沿った知財活動ができるようにしました。開発ステップごとに求められる知財活動(他社権利チェック・発明届出など)を計画的に行ない、その結果を適切・効率的にレビューできるように考えました。
次に、発明および発明届出書の質の向上、発明届出書作成の効率化を行ないました。知財情報の共有化・活用、業務のIT化、テーマメンバー間での発明情報・知財群情報の共有化、先行技術調査結果の蓄積・再利用、装置・ユニット図などの図面雛形登録・利用、関連発明の発明届出書再利用などで実現できるように考えました。
さらに、他社権利対応のさらなる効率化や調査もれ・問題特許対策遅れをなくすために、検索の高度化や問題特許対策の期限管理などのような仕組みも取り入れました。
二番目は、「知財担当者支援」です。
知財担当者の業務をITで支えるため、いくつかの工夫を盛り込みました
それが、PC環境の改善(ツインディスプレイ化による業務効率化)、関連テーマの発明内容や他社権利対応状況の情報提供による知財活動支援業務の効率化、関連発明検索機能の充実による併合処理・国内優先処理の的確性の向上、出願展開状況リストによる効果的な判断支援などです。
PCのツインディスプレイ化は、IBMのPCに、ディスプレイカードを差すことで実現しています。これらにより、知財担当者は「技術者の発明発掘・創造・評価活動に密着し、知財専門力を提供することができるようになる」(岡田氏)と考えたのです。

図:データ・機能
統合化による
シームレスな連携
(クリックで拡大)
三番目が、「情報活用基盤整備」です。
知財活動によって得られた知的資産(データ・分析結果やノウハウも含む)を最大限に活用するために、情報活用基盤整備と活用促進を図ろうということです。そのために、まず、知財の日常業務の状況や成果を一目瞭然にわかるようにし、課題を的確に把握でき、課題に対して迅速に手を打てるようにしました。
そして、社内外の知財情報を活用した自社・他社の比較情報を提供することで、自社の強み弱み・他社動向を把握できるようにし、事業戦略・技術戦略・知財戦略立案を的確に行なえるようにしました。
将来の展望
今後の業務改革期待効果
2004年8月にリリースされた“RIPS21"。現段階では、次のような効果を岡田氏は期待していると話します。
「事業部門、技術者および知財部門支援による効果では、関連発明情報の活用、先行技術調査の効率化による発明のレベルアップと強力な知財群の形成を期待しています。知財群管理、パテントマップ提供による有効な知財群の活用戦略の実施ができると考えています。
事業部門、技術者支援による効果では、開発初期段階での他社権利調査、調査もれ減少による設計変更コスト削減、および警告事件減少が期待されます。知財部門支援による効果では、知財担当者の技術者密着支援強化による、もれのない発明発掘の実施などが期待されるところです」
お客様情報
デジタルPPCなどの画像ソリューション、マルチファンクションプリンターなどのネットワークI/Oシステム、ドキュメントマネジメントソフトウェアなどのネットワークシステムソリューション、光学機器、半導体 などの提供
用語の説明
- プロパテント
特許権をはじめとする知的財産権の保護を強化すること。権利者に有利な判決や取り扱いにつながる。現在は、アメリカを始め、日本でもプロパテントが政策として推進されている。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴ、およびLotus Notesは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標です。
他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ各社の商標。
