掲載日 2005年2月9日
日産自動車株式会社(以下、日産)は、1999年10月にIBMとグローバル・パートナーシップ契約を締結し、グローバルIS(情報システム)の機能、役割、パフォーマンス向上のために、日本、北米で計画・開発・運用まで総合的なISアウトソーシングを実施しています。
今回は研究・開発(R&D)において、新車開発におけるデジタル化の狙いや実際の事例、現在のデジタル化の状況、日産が考える今後の取り組みについての展望を紹介します。
お客様ニーズ

日産自動車株式会社
グローバル情報シス
テム本部
システム開発部
主担 佐藤 佳裕氏
新車開発におけるデジタル化の狙い
日産が目標として掲げる「日産バリューアップ」には、グローバル販売台数を420万台にする「成長」、営業利益率を10%以上にする「持続的な収益性」、投下資本利益率(ROIC)を20%以上にする「投資収益率」がうたわれています。これらを達成するためのR&D領域における経営課題は、魅力的な商品と“Time to market”、そして環境への配慮と安全性の向上、さらに製品コストと開発費の抑制であると考えられています。
「商品としての自動車の特徴を考えると、全体の中でデザイン関連部品が占める割合が非常に大きく、デザイン要素と耐久消費財を考えた場合、およそ70%がデザイン関連部品で、これらはモデル・チェンジごとに変更が必要ということになります。さらに、全体の部品点数の多さも特徴です。数万点の部品があり、必要な確認項目は数千項目に上ります。これは、設計、実験、生産それぞれの工程の中で多くの工数を必要とします」(佐藤氏)
これらを踏まえて、新車開発をデジタル化することで、どんなメリットがあるのかを考察してみましょう。従来は試作車を作り実験を行なった上で、さまざまな確認や設計変更を行なっていました。試作車を製作するには当然時間もコストもかかります。デジタル化することで、この部分の負荷を減らすことが期待されます。そうすれば、開発期間、開発コスト全体を圧縮することができるのです。

図:デジタルデータ
に基づく開発
(クリックで拡大)
具体的には、デジタル・モックアップを利用し、隙間の大小やバランスを検討する、部品干渉がないか確認できることが期待されます。また、性能シミュレーションによって衝突時のデータなどを検討することができ、デジタル・ファクトリーという手法を使うことで設備設計に関する検討もできるよう期待されたのです。
ソリューション
デジタル化の事例
日産では、R&D領域でのさまざまなニーズからデジタル化を進めてきました。それらの事例をご紹介します。
まず、Computer Graphics(以下、CG)の導入によるデザインの検討です。CG技術はデジタル・イノベーションに大きく貢献しました。テールランプのレンズカット、見栄えも含めた詳細なデザイン検討や、背景や動画含めた表現技術、さらには1/1フルスケール・プロジェクターの利用により、今では実車相当のデザイン評価・検討を短時間で行なえるようになったと言います。
「デザインの中でも、見栄え検討と言われるものは、従来はやはり試作車を作るまで検討が難しい領域でした。しかし、CGを利用することで、質感まで含めた検討、評価ができるようになりました」(佐藤氏)。
試作車で評価していた評価者がCGで細部に渡った評価・判断ができるようになるまでには、CG表現技術の向上のみならず、実物との相関や経験、慣れが多少必要だったようですが、日産では現在、有効な評価ツールとして定着しています。
デジタル・モックアップの技術も、CADがSolid技術を適用することで大きく変わりました。「Solidによる3次元CADの適用により、設計検討段階で生産要件も含めた設計検討精度が向上し、また解析やCAM・生産準備でのデータ利用も格段に進みました」(佐藤氏)
デジタル化で開発期間短縮・性能向上・開発費用削減にもっとも貢献しているものに、衝突シミュレーションがあります。試作車での衝突実験は、当然1度行なうと試作車1台を消費してしまうため、従来は多大なコストが必要だったのです。また、超短時間現象のため実験解析による限界もあり、デジタル化による高精度解析は、安全性能自体の向上にも大きく貢献しているのです。
最近の自動車では、空力性能も重要です。空力シミュレーションもデジタルで行なうことができます。特に、床下に付けられるフェアリング、ディフレクターといったさまざまな部品がどのように空力特性を改善するか解析するためには、シミュレーションは欠かせません。
「CGの利用は、R&D領域だけでなく、カタログやサービス・マニュアルの作成にも役立ちます。開発期間が短縮されるだけでなく、発売準備期間も短かくすることができました。従来、カタログ作成は実車とそのイラストで作成していましたが、最近は期間短縮やコスト削減のためにCGを利用した事例が急速に拡大しています」(佐藤氏)
そのCG品質は実際の写真との区別が難しいほどです。
導入効果
開発期間の短縮に寄与
日産におけるR&D領域のデジタル化での、具体的な数字としての効果をいくつかご紹介します。
まず、開発構成人数ですが、10年間に、実験のための人員は減少し、一方でCADデータの作成のための人員は増加しました。CAD端末の台数では10年間で4倍、現在は技術者1人に1台の割合です。また、導入されたコンピュータの能力は、10年間で1,000倍以上になりました。結果、性能シミュレーションを行なう適用項目数は4倍、逆にシミュレーションに必要な計算時間は1/12になり、当然ながら設計変更件数は大幅に減少しています。これらの要素が、開発期間の短縮に寄与しているのは言うまでもありません。
将来の展望
品質の向上
今後、求められるのは、品質の向上と言えるでしょう。そのためには、デジタル・データの段階からの品質保証が重要になってきます。
「それには、まず、デジタル・データの品質を上げなければなりません。現在は、デジタルデータの不良率がまだ高いですが、将来的には1%を切る必要があるでしょう。また、検討作業を、もっと前倒しで行なえることを期待しています。以前は試作・実験段階で行なわれていたさまざまな検討が、車両開発プロセスの中で行なわれるように変わってきました。この作業の精度を上げ、将来的には企画・初期計画段階でできるようにするのが目標です」(佐藤氏)
お客様の声
IBMとのグローバル・パートナーシップの効果
「日産はIBMとのグローバル・パートナーシップ契約締結後、IBMの経験、ノウハウを活用し、効果を上げる取り組みを行っております。今後はバリューアップを支え、経営・事業に貢献するパートナーとして、また時代を切り拓くIT Techonologyを活用し、ISの機能、役割を強化するための提案を期待しております。」(佐藤氏)
お客様情報
自動車の製造販売
用語の説明
- R&D
Research and Developmentの略。研究開発。企業活動の研究開発業務や各部門・ステージ - CAM
Computer Assisted Manufacturingの略。コンピュータ支援製造。工場の生産ラインの制御にコンピュータを応用し、CADで生成された部品形状を表すモデル・データから、直接自動的に作成する製造技術
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事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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