掲載日 2005年3月10日
東京ガス株式会社(以下、東京ガス)では、「Open I」、「Open II」の二つのプロジェクトを通じて、オープン環境下で基幹システムのデータベースへのアクセスを達成しています。「Open I」時に達成した1日一回の夜間バッチ処理によるデータのレプリケーションと社内イントラでのアクセス形態を一歩進め、2003年5月から着手した「Open II」では、1TB(約300テーブル)の大規模データベースを5分以内のほぼリアルタイムで差分レプリケートします。これにより、オープン側にメインフレームとほぼ同等のデータを持つことが可能となり、CRMシステムやWebサービスをはじめ、さまざまな社内システムと連携できる基盤の確立を達成し、今後の展開が期待されます。この2プロジェクトのインフラ構築は伊藤忠テクノサイエンス株式会社(CTC)が担当しました。
このメインフレームで構築したCIS(お客さま総合情報システム)で活躍するのが、IBM eServer®
zSeries® 、IBM DB2®、 IBM CICS Transaction Server(以下、CICS)。また、今回の「Open II」プロジェクトでは、新たにIBM DB2 UDB V8.1、レプリケーション用としてDB2関連製品のDB2 DPropR、WebSphere® Application Server V5.0(以下、WAS)が活躍しています。
お客様ニーズ

東京ガス株式会社
情報通信部
CISサービスグループ
主幹 鈴木 明氏
夜間バッチ処理から、5分以内の最新データ・レプリケーションへ
東京ガスでは、ガス料金等のお客さま対応を行う24時間コールセンターを運営しています。CISシステムはメインフレームで稼働していますが、ハードウェア保守等の定期保守のためシステム停止が発生し、24時間完全対応のコールセンターとしては24時間対応システムへの課題がありました。「メインフレームが計画停止・定期保守している際でも、ぜひお客さま情報にアクセスしたいという要望があり、3年前に「Open I」プロジェクトに着手しました」と語るのは、東京ガス 情報通信部 CISサービスグループ 主幹の相原 稔氏です。
「Open I」プロジェクトでは、およそ945万に及ぶお客さまのメインフレームのデータを、一晩に1回、手作りの夜間バッチ処理を実行して一括更新していました。500GBの更新バッチを夜の21時から朝方まで実施し、一番大きいマスターのレプリケーションだけでも約4時間かかります。
そのため、このデータ鮮度を上げて、ほぼリアルタイムな最新データをオープン側システムでも利用したいというニーズに応える「Open II」プロジェクトを立ち上げることになりました。技術的にも予算的にもバランスが良く納得できるものとして、「5分以内のレプリケーション」が目標となりました。
同社情報通信部 CISサービスグループ 主幹の鈴木 明氏がこの「5分」を語ります。
「それまでは、一晩に1回、24時間に1回しかデータ鮮度が上がらなかったものが、メインフレームとほぼ同等のデータが、常にオープン系のデータベースとして提供されること自体に非常に価値があります。システム面で考えた場合に、5分というタイムラグはリアルタイムと同等の価値があります」
ソリューション

システム図(図を
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5分以内でレプリケートされるオープン系のデータベースがメインフレームとは別の場所にあるという価値
今回の「Open II」プロジェクトでは、通常処理時はオープン側のデータベースを使用し、さらに最新情報が欲しい場合は、メインフレーム側の最新データを参照できるアーキテクチャーを採用。処理内容に応じて使い分け、メインフレームの処理負荷の増加を抑制して負荷のバランスも保っています。
「Open II」で選定した製品は、DB2 UDB、WAS、DPropRです。IBM eServer zSeries、DB2、CICSで構築してきたメインフレームとの親和性、信頼性を考慮したと語る鈴木 明氏は、ミドルウェア選定について「メインフレームのデータベースに既存業務からアクセスしつつ、非同期にレプリケーションが実現できるミドルウェアを探した場合、IBMのDPropRが唯一の解でした」と言います。さらに、「データベースのテーブルを300個レプリケーションする際も、環境を構築する際にホスト版テーブル定義を多少手直しするだけで、そのままDB2 UDBに転用できて作業工数の削減につながりました。DB2 UDBは、稼働概念もDB2カタログ情報もホスト版DB2と違和感なく、メインフレームの知見を流用できました」と、同社情報通信部 CISサービスグループ 主任の阿曽 裕之氏は説明します。
同社ではコスト面と利用の手軽さから、オープンソースのアプリケーション・サーバーのJBossを使用してアプリケーションを開発し、「連結テストではWASとDB2 UDBの動くマシンにJBossで開発したプログラムをそのままポンと入れて動かせました」と語り、J2EEベースの開発メリットを評価する相原 稔氏です。
また、DPropRを使用したレプリケーション処理を担当した前出の阿曽 裕之氏は、1日10万トランザクション分のレプリケーション基盤設計を担当し、データ移行時に発生したトラブルをこう語ります。
「移行作業中にメインフレームのCPUを消費しすぎる事態が発生しましたが、IBMに相談してパラメーターを見直して、プロジェクトを続行できました」
2004年6月ごろには、WAS自体がダウンする事態が頻発し、スポットでIBMにサービスを依頼したと語る鈴木 明氏は、「非同期処理の部分でWASの処理全体が止まってしまい、設計の見直し案が出てきたときは困りました。IBMによく対応してもらい、原因特定と解決策が適用でき、非常に助かりました」と言います。
導入効果

東京ガス株式会社
情報通信部
CISサービスグループ
主任 阿曽 裕之氏
メインフレームに遜色ないパフォーマンス、オープン環境に大容量のデータベースを構築・運用
相原 稔氏はDPropRの安定性を、「毎日夜間バッチによって大量の更新データが入ってきます。アプリケーションによっては50万件書き込む処理もあります。その場合は、通常より瞬間的に100倍程度のレプリケーション量に跳ね上がります。その場合でも、レプリケーションは5分きっちりでぶれません。導入して安定するまで4〜5カ月かかかる想定でしたが、期待以上に安定していて、正直言ってびっくりしています」と語ります。
阿曽 裕之氏も、「当初は、この大量データの移行が完全に行われるのかどうか不安でした。移行1カ月後には確認環境を構築して、ホスト側とオープン側データの整合性を検証しました。1行でもデータの不整合が出れば、DPropRに信頼は置けなくなりますからね。合格でした」と、付け加えます。
今回の事例は、1TBの大規模なデータベースのレプリケーションを短期間で達成し、オープン系に持っていけたことに、非常に意味があります。言葉を変えれば、メインフレーム上のデータをオープン系システムから直接アクセスする使用感をDPropRというミドルウェアと「Open II」という基盤で確保しているともいえます。
将来の展望

東京ガス株式会社
情報通信部
CISサービスグループ
主幹 相原 稔氏
さまざまな社内システム、Webサービスとの連携が可能
今回の「OpenII」プロジェクトにより、メインフレームのデータを使い、オープン環境のデータベースの大規模レプリケーションを安定的に運用している現在、東京ガスではこのインフラを手中にしてさまざまな可能性を実感しています。
すでにOpenIIプロジェクトで構築した基盤上で他ユーティリティの料金計算・契約管理システムが稼働。また、東京ガスの社内他システムに対し、Webサービス等でお客さまの最新情報を提供する展開となっています。
「オープン系に対するデータ提供として現在の「OpenII」基盤を使っていけそうだ、という知見が蓄えられたことが、一番の感想です。これにより、ビジネス・インパクトが起きて、何かが変わったというものではありません」と相原 稔氏は語ります。
今後は、毎回メインフレームまで見に行かなくても、ほぼリアルタイムのデータがそこにあり、Microsoft® Excelなどで扱うこともできるようになります。今までは、ホストのトランザクションを立てるしかありませんでしたが、これからは、それぞれのシステムに最適だと思うやり方で作ったアプリケーションに、適切にデータを提供して運用できます。利用できるアプリケーションやデータの幅が広がっており、今後の展開が楽しみです。
お客様情報
首都圏を中心とした地域への都市ガス供給を通じて945万のお客様が利用。さらに、電力・熱・エネルギー周りの付加価値を提供する「エネルギーフロンティア企業グループ」として、本社/関連会社一体のグループ経営体制を構築中。
用語の説明
- JBoss
JBoss.orgで開発されているオープンソースのアプリケーションサーバー。Pure Javaで作成されているため多くのプラットフォーム上で動作する。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴ、DB2、 eServer 、zSeriesおよびWebSphereはInternational Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標です。
MicrosoftはMicrosoft Corporationの米国およびその他の国における商標。
