掲載日 2005年7月14日

株式会社三省堂書店大手書店チェーンである株式会社三省堂書店(以下、三省堂書店)は、1881(明治14)年創業という老舗の書店です。125年もの歴史を持つ同社ですが、先進のシステムをいち早く取り入れることでも知られており、同業他社の中でもトップをきってITを導入している企業でもあります。
同社ではこれまで数々の業務をIT化してきていますが、今回導入したのは業界初となる書店向け売上管理(分析)ASPサービスです。このサービスは、データベースエンジンにDB2 Universal Database™、データマート、データウェアハウスに最適化された分析エンジンにIBM Red Brick™ Warehouseを採用することにより実現されました。
お客様ニーズ

株式会社三省堂書店
理事 情報システム室
室長
児玉好史氏
委託販売制度の問題を補完する、出版社と書店とのデータ共有化が必要に
三省堂書店では、受発注の管理システムとしてInformix® Red Brick Warehouse(現IBM Red Brick Warehouse)を2001年12月にはすでに導入していたという経緯があります。しかし、受発注管理以外に出版業界で大きく懸念されていた問題がありました。「出版業界では、書籍などの委託制度をとっているため、出版社と書店間での売上情報共有化が重要となっています。ただこれまでは、出版社を中心としたデータ共有の仕組みは存在しても、書店を含めた共有化は進んでおりませんでした。また、導入コストも高いため、自前でシステムを構築するのも難しい状況でした」(三省堂書店 理事 情報システム室 室長 児玉好史氏)
出版業界では、委託販売制度がとられていますが、売り上げの管理や分析はベテラン書店員や出版社営業マンによるカンや経験に頼られています。しかし、現在流通している書籍は60数万点。カンや経験によりヒットを生み出すこともありますが、大量の返品となることもあり、リスクをともなうギャンブル的な要素も含まれているという問題がありました。そこで、データに基づいた適正な受発注ができるよう書店と出版社の間での売上データ共有化、そして、その先につながるデータウェアハウス化が迫られていました。
ソリューション

販売情報Web配
信サービスのシステ
ム概要
売り上げの管理や分析にIBM Red Brick Warehouseのエンジンを活用
「弊社では契約した出版社へと売上情報を送信するという試みを1990年からスタートさせています。もっともその当時は、前日の売り上げを翌日の朝に8inFDを送付するという形でしたが、それの延長線上にあるのが、2003年6月にサービスインした売上管理(分析)ASPサービスです。データベースエンジンにDB2 Universal Database、データマート、データウェアハウスに最適化された分析エンジンにIBM Red Brick Warehouseを採用、売上分析機能を搭載しているのが特徴です」(児玉氏)
このサービスは、売上分析機能のほか、POSシステムと連動して売上データを出版社へと公開する機能を持っています。また、単品在庫管理システムでは、書籍の自動発注機能や棚管理機能を持っています。さらに、書籍の入荷、返品、売上情報などはすべてPDAによって行なわれ、補充発注もPDAからダイレクトにできるようになったのです。ほかにも、書誌(和書)検索システムも導入。店頭検索端末を使い、お客様がお目当ての書誌を簡単に探し出すことができるようにもなりました。
一歩進んだサービスとして、2005年8月には販売情報Web配信サービスの稼働も予定されています。「この販売情報Web配信サービスでは、インターネットを利用してリアルタイムの販売情報を見ることができます。三省堂書店32店舗790台のPOSレジから送信されてくるデータをすぐ見られるということは、受発注の適正化にたいへん役立ってくれるのです」(児玉氏)
販売情報Web配信サービスでは、サーバーなどのハードウェアを日本IBM幕張美浜事業所のデータセンターに設置。また、障害発生時に対処してくれるシステム技術支援センターを日本IBM豊洲事業所に設置しています。まさに、日本IBMと三省堂書店とのオンデマンド型サービスによる協業が実現したのです。
導入効果
売り上げアップやコストの削減と共にお客様サービスの向上も
「データに基づいたオペレーションができるようになったため、新人社員でもベテラン社員と同じような業務ができるようになりました」と児玉氏は話します。これまでは、長年にわたる蓄積が必要だった売り上げの管理や分析、受発注部数の見極めなどが、売上管理(分析)ASPサービスによりベテラン社員でなくともできるようになったのです。なお、書籍の自動発注機能だけでなく、もう一歩進んで「売れそうな本の発注や発注数の指定などを指示する機能」を付加することも可能でしたが、「そのようなシステムになると、ベテラン社員でもコンピューターに指示されたとおり作業するだけとなり、社員のモチベーションを下げてしまいますので」(児玉氏)ということで導入はされませんでした。
なお、販売情報Web配信サービスについては、これからの導入であるため具体的な効果はまだ現われていません。しかし、このサービスでは、店舗ごとの売り上げが1時間単位のリアルタイムで見られるほか、指定した月に売り上げが基準部数以上あり、かつ在庫がゼロのタイトルを検索できる「在庫ZERO」、仕入れがあった月から1カ月以上売れていないタイトルを検索できる「売上ZERO」なども見られるようになっています。そのため、在庫切れによる売り逃がしや過剰在庫によるスペースの無駄の排除など、売り上げの向上に寄与することが予想されます。ここにきて、データウェアハウス化が完成されることになります。
これらのサービスが稼働したことにより、お客様、出版社、三省堂書店すべてがWin-Winの関係を築けたといいます。「探しているタイトルが検索しやすくなり、在庫切れも少なくなったことでお客様へのサービス向上、返品の減少で出版社のリスク軽減、そして、売り逃がしの低下や過剰在庫の減少で三省堂書店は売り上げアップとともにコスト削減を達成しました」(児玉氏)
将来の展望
ASP事業として他の書店チェーンへソリューションを提案
構築されたサービスはもともと自社運用だけを考えて作られたわけではありません。「ASP事業として同業他社の書店チェーンにソリューションとして提案しているところです。将来的には三省堂書店のASPサービスとしてではなく、弊社がこのサービスの事業者となることを思い描いています」(児玉氏)
また、売上データについては現在でも契約をしている出版社に販売をしていますが、ソリューションを導入するほどでない小規模な書店チェーンなどにも、この売上データを販売することを考えています。
近い将来、出版業界全体がひとつとなったデータ共有システムが実現、業界自体の体質変革にも寄与してくれることでしょう。
お客様情報
1881(明治14)年、古書店として東京・神田神保町で創業した老舗書店です。現在では、関東を中心に全国32店舗9営業所を構えるほか、ネットショッピングサイトも運営しています。また、IT化を推進しており、全国をネットワークで結び各店の販売情報を最大限に活用したサービスを提供するなど、先進の書店を目指しています。

用語の説明
- ASP
「アプリケーションサービスプロバイダー(Application Service Provider)」の略。インターネットを介してユーザーにソフトウェアをレンタルするサービスのこと。汎用性の高いソフトウェアを多くのユーザーが利用することで、高品質なサービスを低コストで提供することが可能となる。 - データウェアハウス
Data WareHouseと表記され、DWHと略されることもある。時系列に蓄積された大量の業務データの中から、各項目間の関連性を分析するシステム。従来の単純な集計では明らかにならなかった各要素間の関連を洗い出し、売り上げの向上や不良在庫の一掃などに効果がある。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴ、Informix、Red Brick、DB2 Universal DatabaseはInternational Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標です。
他社の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ各社の商標。
