掲載日 2005年10月13日

九州大学情報基盤
センター九州大学の創立は1911年(明治44年)。現在では、17学府11学部をはじめ、16の研究院や3附置研究所、病院などを擁しています。学内のIT基盤を担うとともに、大規模演算システムによる全国共同利用の計算機サービスを提供しているのが九州大学情報基盤センターです。1969年にスタートした大型計算機センターなど九州大学の5つの情報関連施設を統合・改組して2000年4月に発足しました。
共同利用のための計算機サービス施設は旧帝国大学を拠点に全国に7箇所あり、九州大学情報基盤センターはその一つ。九州大学での教育用計算機サービス、ネットワークサービス及び、全国の大学、短期大学、高等専門学校、研究所の研究者を主なユーザーとして計算機サービスを提供しています。
発足から数えて今年で5年。その間、IT環境は大きく様変わりし、さらに2004年4月からは九州大学が国立大学法人として独立法人化。他センターとのアライアンスというミッションを遂行しながら、九州大学情報基盤センターはこれら他センターも含めた、法人間での競争力も必要とされるようになりました。
こうした状況の中、共同利用サービスの後継システムの導入にあたって、九州大学情報基盤センターでは性能と価格の両面から提案を審査する総合評価落札方式を採用。入札に参加した3社のうち、ベンチマークテストによる性能評価試験を含む技術審査、および、応札価格の双方で高得点をマークしたIBM eServer® p5が最終的に選ばれました。これは全国共同利用センターでは初のIBMの採用で、また世界的にもp5の最初の大規模システムの導入となりました。
お客様ニーズ

九州大学情報基盤
センター センター長
工学博士
村上 和彰氏
国立大学法人化以降の共同利用計算機サービスにどう対応するか
九州大学情報基盤センターのミッションでもある学内向けサービスと全国共同利用計算機サービス。これらは、どちらかを優先させるということではなく、同時並行的に行なっていかなければなりません。新規システム導入の検討は、こうしたミッションをよりよく遂行していくためと、大学の独立法人化以降のシステムのあり方を視野に入れながら進められました。その経緯を九州大学情報基盤センター センター長の村上和彰氏は次のように語っています。
「大学独立法人化は学内向けサービスの法人間競争をもたらします。一方、共同利用サービスの方は全国の各センターで大所高所に立った共通のミッションがあり、日本全体を見回して、どのように計算機サービスを行なうかということが求められます。ところが法人化により、競争力が要求されるようになると、共同利用の方のミッションがかすみがちになってしまう。予算も、これまでは共同利用のためにつけてもらっていたものが、法人化とともに1本化されることになり、岐路に立たされることになりました。こうしたなかで2つのミッションを同時に並行して遂行していくためにはどうすればよいのかということが課題になります」
システム・レベルでの課題について、同センター助教授の天野浩文氏は次のように語っています。
「今回のシステム構築にあたって重視したのは、科学技術計算性能、すなわち数値計算性能の高さでした。あくまでも演算性能の高いものが欲しいと考えました。しかし、単に大規模であればいいというわけではありません。小規模の計算を多くのユーザーが同時並行で実行しても、互いに足を引っ張らない、そういうサービスが保証できるシステムでなければならないという要件がありました。さらに、世の中で標準的に用いられているソフトウェアやプログラミング言語が使えること。特定のメーカーの特定の機種でなければ使えない特殊なシステムであってはいけないとも考えました。また、サービスを提供してお金をいただくというのが、共同利用システムですが、法人化以降の競争力強化という観点からも課金体系については抜本的な改革が求められました」
ソリューション

システム構成図
汎用コンピューターの予算で
スーパー・コンピューター・クラスのシステムを導入
導入されたシステムは、バックエンド・サーバーのIBM eServer p5 595と利用者用フロントエンドのIBM eServer p5 570で構成されています。
<バックエンド・サーバー>
IBM eServer p5 595
POWER5プロセッサー 1.9GHz×64CPU・メモリー512GB 1台
POWER5プロセッサー 1.9GHz×64CPU・メモリー256GB 5台
POWER5プロセッサー 1.9GHz×32CPU・メモリー128GB 1台
<利用者用フロントエンド>
IBM eServer p5 570
POWER5プロセッサー 1.9GHz×16CPU・メモリー64GB 1台
利用にあたってユーザーはネットワーク経由でフロントエンドにアクセス。そこからホストであるバックエンド・サーバーに対して計算ジョブを投入することでサービスを受ける仕組みになっています。実効容量51TBのディスクアレイも装備。しかも、万が一に備え、それぞれのサーバーから二重化されたディスク・アクセス経路があるので、どちらかの経路に異常が発生してもサービスが継続できるという堅牢なシステムになっています。
「ベクトル並列型スーパーコンピュータの後継となりうるスカラー並列機がようやく登場してきましたね」
−あるエンドユーザー様の感想
急速に進化するハードウエア技術。今回のシステムでは、汎用コンピューターの価格でスーパー・コンピューター並みの実力を持つIBM eServer p5の導入を実現しました。村上氏は、p5の持つパワフルな処理能力と優れたコストパフォーマンスを高く評価しています。
このシステムのスケールの大きさは、課金の仕組みにも好影響をもたらしました。天野氏は「今回のシステムは想定していた規模を上回るもので、豊富な計算機資源を、より安い価格で安心して使っていただけるようになりました」と語っています。
また、九州大学情報基盤センターにとって、IBMは初めての外資系ベンダー。同じ用語でも、意味することに微妙なニュアンスの違いがあったりして、当初は戸惑いもあったそうです。しかし「一からシステムを組み立てていくという経験をして、用語だけでなく目的意識も共有できるようになり、現在は当初抱いていたような不安はありません」(天野氏)
全体会議をはじめ、担当分野ごとの個々のきめ細かいミーティングもIBMとの間で頻繁に行われ、それぞれが目標に向かって突き進み、機器の搬入からサービスインまで2カ月という短期間での導入となりました。
導入効果

IBM eServer p5
ユーザー・サイドに立った課金システムに多くの支持
九州大学情報基盤センターでは、これまでは個々の研究者と契約を取り交わす利用形態が主流でしたが、大規模システムを導入できたことで、組織単位での包括的な利用契約に基づく受注が可能になりました。
「大学によっては教育用と研究用の計算サービスを一つのシステムで同時に提供しなければならないところも多く、そういうところでは学内で使うPCの台数を増やさなければいけない。しかし大規模計算機のユーザーは比較的少ないので、一つの予算のなかに、そのような計算サービスのコストを入れておくのが難しいというケースが出てきております。こうした場合にも、これからは一つの大学や研究所に対して包括的にサービスを提供することができるようになります。これは共同利用センターとしては、新しいサービス形態だと思います」(天野氏)
こうした新しいサービス形態にあわせて、課金体系にもメスが入れられ、年間定額制というシステムがつくられました。この背景には従来の従量制での問題を解決しようという狙いもあります。
「年間定額制というのは、例えばCPU2個、メモリー8GBといった一定の計算機資源を1年間自由に使える権利をお渡しするということです。ユーザーは年度の初頭に権利金を払うと、年度末まで追加料金を気にすることなく使うことができます。これまでの従量制ですと、年度に使うことができる研究予算には限りがあるため、年度後半になると、いくら払えばよいのかが気になって使いにくくなるということがありましたが、その心配がなくなります。また、年間通しで計算機資源を占有する必要はないけれど、ある時期に大規模な計算を大量に行ないたいというユーザーには、例えば10万円の前払いで50万円分まで使える共有タイプも用意しています。しかも包括契約なら、システム管理に労力を費やすこともありませんので、研究者は研究に専念できるというメリットも享受できます」(天野氏)
こうした課金制度も大規模システムを導入したから可能になったこと。包括的な契約になれば、ある程度の計算機資源を保証する必要があるし、そうしなければ自前のホスト導入と同等のサービスを提供することはできないからです。そのためにはシステムにある程度の規模は必要になります。
そして、課金制度も含めた新しい利用形態のもと、包括契約のユーザー第1号となったのが福岡大学です。この課金システムは多くのユーザーの支持を得、現在、さらにいくつかの大学からも引き合いがきているとのことです。
センター利用によるユーザー様の計算事例(一部)
・材料科学・計算化学・物性理論
シリコン融液の粘性係数
EMI+(エチルメチルイミダゾリウム)の構造最適化
一次元ハバード模型の小数原子クラスターの磁気的性質や
金属絶縁体転移の解析
三次元ソリッド要素を用いた板材弾塑性解析
・流体解析・流体構造連成解析
三次元非圧縮性粘性流体の層流計算
三次元圧縮性粘性流れ計算によるラジアルタービンスクロールの解析
・音響工学
整形残響室内の定常音場解析 ほか
将来の展望

九州大学情報基盤
センター
助教授 工学博士
天野 浩文氏
近未来ビジョンとして、ポスト「地球シミュレータ」との連携を模索
全国共同利用サービスの一翼を担い、さらに学内のIT基盤整備への期待を集める九州大学情報基盤センター。今後の展開について、村上氏は次のように語っています。
「発足当初に比べると、当センターがやるべき仕事は格段に増え、期待される度合いも大きくなってきましたね。要求されるサービスは、質的にも量的にも変化してきました。学内に関して言えば、これまでIT投資は部局ごとに予算をとってやってきましたが、ムダが多く、これからは部局横断型でやっていく必要があると思います。そのリーダーシップをとるのが当センターであり、チーフ・インフォメーション・オフィサー的な役割も要求されています」
全国共同利用サービスの今後について、同氏は「地球シミュレータ」の次の大規模システムとの連携という近未来のビジョンを語ってくれました。
「日本最大の計算機『地球シミュレータ』の次を開発しようということで、文部科学省では来年度の概算要求を出しています。それがスタートするのは5~6年後になりますが、そのときはそれを運用するセンターができます。そことの連携、棲み分けに各センターがどのように取り組んでいくか、その答えを早急に出す必要があります」
また、天野氏はネットワークが高速化したことを受けて、今後はデータの可視化サービスにも力を入れていきたいと語っています。
「計算はセンターで、画像にするのはユーザーが手元でという利用形態がこれまでは主でしたが、ネットワークが高速化してきましたので、データ可視化のシステムをセンターに集約し、画像をネット送信して分析作業をしていただくという運用も可能になりました。むしろ可視化したほうがデータ量は少なくなるぐらいです」
ビッグ・プロジェクトへの取り組みから、ユーザー・サイドに立ったきめ細かなサービスの提供まで。今後の九州大学情報基盤センターの事業展開に大いに期待したいものです。
お客様情報
九州大学情報基盤センターは、学内のITインフラ整備はもとより、大規模演算システムにより全国スケールで計算機サービスを提供。さらに他の共同利用センターとのアライアンスにも積極的に取り組んでいます。
用語の説明
- 国立大学法人
より個性的で魅力ある大学にするために、法人にすることを定めた法律で、2003年10月に施行。教育や研究に各大学が独自に工夫を凝らせるようにもなりました。 - 地球シミュレータ
地球規模の環境変動の解明・予測を目的に、1998年、当時の科学技術庁が開発を開始。スーパー・コンピューター地球シミュレータを駆使して気象予測や災害予測でも活躍しています。
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事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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