掲載日 2005年11月8日
旭化成グループの中で医療機器製造事業を展開する旭化成メディカル株式会社(以下AMと表記)は、SAP BWのバージョンアップを機に、全社ポータル構築に取り掛かりました。まず、経営層向けのポータルをプロトタイプとして構築し、その後、1500名の全社員向けのポータル「AMポータル」を構築。本社地区は三つ(経営層向け、正社員向け、派遣社員向け)、大分と延岡の2工場地区はそれぞれ二つ(課長以上の管理者層向け、一般社員向け)の職位、勤務域に分けた構成で情報を提供。旭化成グループの共通システムへも、SAP R/3データへも、すべて、シングルサインオンで入ることができるようになりました。
WebSphere® Portalを使用した「AMポータル」は、経営状況の可視化を達成したことに加え、さらに、旭化成本社のコンテンツへもシングルサインオンでアクセス可能となったことにより、旭化成グループ全体の推奨ポータルになりました。また、技術先行にならず、社員の業務に沿った使いやすいポータル開発を達成した点と旭化成グループへの貢献度を評価され、「旭化成メディカル社長賞・特別賞」を受賞しました。
この「AMポータル」構築には、柔軟性があり拡張しやすいミドルウェアのWebSphere Portalが活躍。プロトタイプ、本番ポータル構築は日本アイ・ビー・エム株式会社ソフトウェア・サービスと株式会社ライトウェルが担当しました。
お客様ニーズ

旭化成メディカル
株式会社
情報システム部 部長
栢森 宏氏
経営判断に必要なデータを経営層にビジュアル化して手軽に見せたい
「全社ポータル構築にあたり、ポータルが本当に皆の役に立つかどうかを判断してからやりたいと考えました。判断するにあたり、経営情報が最も必要な経営層向けにプロトタイプを構築して使用し、その反応を見て、全社員向けを本格的に作るかどうかの判断をすることにしました」と、語るのは旭化成メディカル社 情報システム部・部長の栢森(かやもり) 宏氏です。
開発にあたり、事前に実施した経営層へのアンケートでは、
- 基幹系のデータなどが有効に活用しきれない
- システムが多種あり、欲しい情報になかなかたどり着けない
といった現状も浮かび上がり、基幹系システムであるSAP R/3のデータをできる限り可視化して経営層に見せる仕組みの提供と、必ず見て欲しい「お知らせ」などの情報を全社員向けに提供することを目的として実施されました。
「構築にあたり、業務ごとのコンテンツを構成した場合はコンテンツを常に更新しないと社員に使ってもらえないですが、コンテンツ作成に人手をかければ業務効率化になりません。そのため、基本的にできる限り固定的な、ひとつの画面から通常業務が全部できるものを目指し、朝出社し、PCを起動させ、スタートアップから立ち上がった画面で1日の仕事ができるよう設計しました」と同氏。
ソリューション

旭化成メディカル
株式会社
情報システム部 課長
上野 公志氏
業務に必要な情報をひとつの画面に構成、
シングルサインオンでのアクセスを可能に
「ポータルというと、本人が必要な情報を集めて種々のリンクを貼るものも多くありますが、私達はあえて社員個人が編集できるポータル画面は用意しませんでした。
ポータル導入の目的は、短時間に必要な情報を入手して業務を遂行することで生産性をあげることです。
個人が編集できる画面を用意して単なるリンク集にならないように、基本的に仕事を1画面で完結させるように構築しました。
ポータルには業務で通常良く使うものだけを配置し、個人が迷うことなく短時間で必要な情報にたどりつけるようにしたのです。
個人個人が必要とする情報はブラウザーのお気に入りへ登録してもらうようにしました」同社・栢森 宏氏。
「ユーザーがWindows®にログインすると、自動的にポータルが立ち上がり、見て欲しい情報がプッシュされます。更に、各自の業務に必要な情報や、システムへのリンクだけが表示されるよう構成されており、その後もほぼクリックするだけの操作で情報へのアクセスが可能です。今まで全社員に行き届かなかった「お知らせ」情報も現在はこの画面から発信しています」と、同社情報システム部・課長の上野公志氏。
旭化成グループの中でシングルサインオンを可能にするには様々な課題があり、同社栢森 宏氏はその事情を語ります。
「全てシングルサインオンで簡単に使えるようにしたいと考えました。旭化成本社で認証が必要なWebシステム、自社で利用しているクライアント/サーバーシステムなど、さまざまなシステムが存在しています。その条件の中で、特別なシングルサインオン製品を使うことなく、短期開発できるのがIBMでした」
旅費精算システム、出勤証システムなどユーザーがよく利用する旭化成グループの共通システムも個別にID、パスワードを入力することなく利用できます。この成果を踏まえ、WebSphere Portalが旭化成グループの推奨ポータルとしてITガバナンスに明記されることとなりました。
経営層向けのポータル構築は2004年2月にスタートし、5月連休明けにサービスイン。経営層の評価も9割以上から使い勝手がよいと回答があり、全社ポータル構築へと進みました。本番ポータル構築は2005年1月から4月末までの4カ月間。本社地区の社員への説明を終えて7月から本格導入し、工場地区は8月から本格導入しています。
導入効果
本社地区正社員全員に、前日までの売上レポートを朝一番に表示
各種月報作成業務を大幅に効率化
AMポータルは、業務効率化と情報共有の観点で大きな効果をあげました。
「まず、本社地区正社員には、朝一番にポータルを立ち上げると、毎日更新されている前日までの売上情報が、目に飛び込んでくるわけです。経営層が経営データを直接見て自分で判断するようになったことが今回の目玉です」と言うのは前述の栢森氏です。
上野氏は、「今までは月報といっても経営陣が直接データを見ることはなく、各部署の社員がレポートを作成していたため、全員が同じ数値で経営状態を把握していませんでした。今は1枚の定形レポートが最初に全員の画面に出ますから、皆が同じ数値を使用して議論できるようになりました」と語ります。
基幹のデータを駆使して様々な社員が行っていた月報作成作業をできる限り軽減させるため、判断に利用するSAP BWの定型レポートもあらかじめポータルに表示しています。通常BWのレポートはクエリーをつくり自分でいろいろと加工しますが、経営層には操作負担が大きく、従来は部下にレポートを作成させたり、週報や月報のレポートを出すなどしていました。これを完全にテンプレート化し、毎朝のポータルの立ち上げと同時に、クリックひとつで、全社損益も工場の生産量や品質管理の数値も、見ることができるようになりました。
従来の経営データは、必要に応じて部下にレポートを作らせるか、週報あるいは月報単位の頻度だったものが、毎朝のポータル立ち上げと同時に前日までのデータを共有して見ることができるようになりました。
また、全社員への「おしらせ」情報は、従来はLotus Notes/Dominoで構築した「Anet」と呼ぶ文書系システムに掲示されていたため、情報更新時期が分りにくい、社員自ら見に行く必要がある、情報が見つかりにくいなどが重なり、閲覧する人数も限られていました。今ではポータルのトップに出ているため、全員に伝わるようになり効果が出ています。
将来の展望
事業部制度導入に伴い、業務別コンテンツ作成も視野に
使用している経営層や社員からの評判はよく、全社展開前に経営層向けに行ったアンケートでも9割が使いやすくなったと回答しています。2005年年末には再度アンケートを実施して「AMポータル」の再評価を行う予定ですが、まだ半年程度の運用のため、大幅な拡張などが出てくるのは1年が経過してからだろうと予想しているといいます。
前述の栢森氏は、「2005年4月より当社が事業部制を導入したこともあり、今後は職位区分以外に、役割や仕事ごとの区分によるポータル表示をどのように展開していくかの検討が必要です、また、現在は営業向けポータルへのリンクのように別のウィンドウを起動してしまい、一元的にアクセスできない部分も残しているため、今後は「AMポータル」のポートレットとすることを視野に入れています」と、今後の展望を語ります。
上野氏は、「ポータルで入り口が揃ったため、裏側のコンテンツを提供しやすくなりました。システムの整理の過程で何らかの変更が出ても、ユーザーは、従来通りポータルにアクセスするだけですから。そのため今後は裏側のコンテンツ整備に取り組んでいきたいです」とのこと。
WebSphere Portalは旭化成グループ企業の2社でさっそく導入が検討され、AMポータルは、今後その存在価値を一層高めていく予定です。
用語の説明
- ポータル
複数のアプリケーションやインターネットコンテンツなどを統合し、ログインする個人や所属によって表示を変えられる入り口サイト。従業員の生産性向上を目的として導入されることが多い。 - シングルサインオン
一度認証を受けることにより、許可されたすべての機能を利用できるようにしたシステム。システムごとに異なる認証を受けるため、何度もパスワードとIDの入力を繰り返す必要がない。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴ、WebSphere、Lotus,Lotus Notes,Lotus DominoはInternational Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標です。
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