掲載日 2006年12月22日

商品イメージスターゼン株式会社(以下、スターゼン)は、生産から調達、加工、販売の各業務機能を備え、食肉業界でトップクラスの業績を誇る食肉卸売企業です。「食を通して人を幸せにする生活関連企業となる」を経営ビジョンに掲げ、「食」に関するトータルサプライヤーを目指している同社では、「食卓に並ぶ食品の安全と安心」を使命に取り組んでいます。
それに応えるもっとも大きな施策として登場したのが、国内初となる食肉(牛および豚)トレーサビリティーシステムでした。IBM® System i™ を中心に構築されたこのトレーサビリティーシステムは、「Safety Tracability And Responsibility System」の頭文字をとってSTARSと名付けられました。
開発を担当したのは、スターゼンの100%子会社であり、グループ内のシステム部門を担っている株式会社ジーコス(以下、ジーコス)です。2001年4月に開発が始まり、2002年9月から導入および運用がスタートしました。国内でBSEの発生が確認されたのは2001年9月のことであり、BSE発生前から食の安全性対策に力を入れていたことで、業界内だけでなく消費者への信頼性も高まりました。また、産地から販売事業所まで一貫して商品を管理することができるようになったため、在庫管理や利益管理にもSTARSが大きく貢献しました。より高い「安全」と「安心」「確かな品質」をお客様へお届けする為に、当システムへの新たな取り組みは今も続けられています。
お客様ニーズ

株式会社ジーコス
常務取締役業務本部長
本多 芳樹氏
システム化が難しかった
食肉の商品情報管理システム構築を目指す
「食肉というものは、大変管理がしにくい商品です。1個いくらという商品やキロいくらという商品など、さまざまな種類のものを扱っているため、システム化が非常に難しい面がありました。そのため、利益管理や在庫管理はシステム化されていたものの大ざっぱなところもあったのです。そこで、どこから購入された商品がどこで販売され、いくら利益が出ているのかということをシステム化しようという話が持ち上がったのが2000年3月のことです」と話すのは、株式会社ジーコス常務取締役業務本部長の本多芳樹氏です。時を同じくして、食肉の商品コード、物流バーコード、EDIフォーマットの標準化が農林水産省から提唱され、それらすべてに同時に対応する形で個別に商品情報管理ができるトレーサビリティーシステムを構築することが決定されたのです。
「BSEの発症が国内で確認されたのは2001年9月のこと。しかしそれに先駆けた2000年5月、まずは利益管理や在庫管理の合理化という発想から、後にSTARSと名付けられる食肉トレーサビリティーシステムの導入が決まっていたので、全く心配はありませんでした」(株式会社ジーコス 営業部長 近藤光俊氏)
利益管理や在庫管理の合理化が当初の目標ではありましたが、BSE問題をきっかけとして消費者の間で食の安全性への不安が広がってきたのもこの頃です。「当時は流通履歴の遡及が簡単にはできなかったため、社内においても商品の流通履歴をはっきり確認できるようにしたいというニーズが高まってきていました」(株式会社ジーコス システム部開発課 SE 高橋晃泰氏)
ソリューション

システム図
信頼性と安定性が高いSystem iを
トレーサビリティーシステムの中核に採用
2001年冬にはトレーサビリティーシステムを構築するハードウェアの検討がなされましたが、選ばれたのはIBM System iでした。
「スターゼンでは、基幹システムにシステム/34からシステム/38、AS/400®、eServer™ iSeries®まで使用していた歴史がありました。そこで一貫してトラブルが少なく、信頼性と安定性が高いことを経験として知っていたため、トレーサビリティーシステムにSystem iを採用することには迷いはありませんでした」と本多氏。
ただ、食肉の流通量の多さを懸念していたといいます。「牛の場合、1日の処理数は全7工場で300~350頭になります。その数はロースやヒレなどの部分肉にすると30~100倍となり、毎日膨大なレコード処理が発生します。さらに、通称『牛肉のトレーサビリティー法』と呼ばれている『牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法』により、そのレコードを3年間保存しなければいけません。しかしSystem iのデータベースはまったく問題なくそれに対応することができました」(近藤氏)
STARSの開発がスタートしたのは2001年4月です。商品情報はバーコードで一元管理されることになりましたが、そのバーコードのデータを読み取る端末には無線ハンディーターミナルが採用されました。「スターゼングループの全国48事業所、80拠点に配置された5250エミュレーター無線ハンディーターミナルは600台にものぼります。それがすべてSystem iに接続され、商品データをSystem iに送信される形となっています。導入に際しては、パソコンに慣れていない営業担当者も多く、無線ハンディーターミナルのオペレーションを覚えるまで苦労しましたね」(近藤氏)
また、このトレーサビリティーシステムは業界に先駆けた構築のため前例がなく、すべてにおいてトライ&エラーの連続だったと言います。
「シミュレーションからなにから全部やらなければいけないことが大変でしたね。導入時にも、全国6ブロックに分けて次に導入するブロックの担当者が前の導入済みブロックに行き、事前に受け入れ体制を整えて順次全事業所へと展開していったのです。全国でサービスインが完了したのは2002年9月、さらに上流工程の工場システムが展開されたのは2002年12月のことでした」(本多氏)
導入効果

株式会社ジーコス
営業部長
近藤 光俊氏
入庫ミスや出庫ミスが激減,
消費者からの生産履歴照会にも対応
STARSが導入されたことでさまざまな効果が現れました。その効果はまず営業担当者から聞くことができたそうです。「お客様から疑問点などがあったとき、その肉に貼ってあるラベルを遡及していけば、どの生産者が育てて、それをどう加工したかがすぐにわかります。それにより、迅速に問題を解決することができるようになったのです」(本多氏)
また、在庫管理がリアルタイムにできるようになったため、余剰在庫や滞留在庫を防ぐことができ、全社的に在庫圧縮を図ることに成功しました。さらに入庫ミスや出庫ミスが確実に防げるため、利益管理の面でも効果を上げることができています。「STARS導入前は手書きの出庫指示書だったため、数字の読み間違えなどの人為ミスが発生していましたがそれがすべてなくなりました」(近藤氏)
また、加工工場で、アラームシステムを採用したことでミスが劇的に減少したと高橋氏は話します。「登録作業自体は人がやることなので、どうしても間違えた情報が登録されてしまうこともあります。そういったときに各工程でアラーム(個体識別番号、種別、飼養地などの生産情報との不一致)として警告を出すシステムを採用しています。ミスが見つかると工程を差し戻すことができるため、後工程でミスが見つかるような事態は未然に防げるようになりました」
株式会社ジーコス
システム部開発課
SE
高橋 晃泰氏
さらに、STARSで扱っている生産履歴情報は消費者がいつでもiモードを含めたWebサイトから照会することができるようになりました。
「STARS発足当初は事業所やお客様からの照会が1日に数百件に及ぶ事がありました。それに比べると現在の照会数は落ち着いていますが、業界に不安材料があるときに照会数が多くなるめ、その照会数が少ないということは逆に消費者に安心感を持たれている証拠だと考えています。こういった生産履歴は日常的に確認していなくとも、なにか不安なことがあったときにいつでも確認できるということが消費者にとって安心感を与えているのではないでしょうか」と話すのは、株式会社ジーコスのシステム部開発課 課長代理 齋藤英明氏です。
将来の展望

株式会社ジーコス
システム部開発課
課長代理
齋藤 英明氏
牛と豚だけの生産履歴管理を
加工食品も含めた全商品への対応を目指す
STARSでは、牛肉の生産履歴管理からスタートし、現在では豚肉の生産履歴管理も行っています。しかし「お客様第一主義」をモットーに掲げるスターゼンとしては、お客様により一層STARSを活用してもらうべく、さらなるデータの連係を考えているといいます。「ソーセージやハムなどの加工食品も含め、生産履歴管理をすべての取扱商品へ拡大しようと考えています。また、海外商品についても、海外パッカーに働きかけ、生産元からトレースできるようにしていきたいと考えています」(本多氏)
その為の社内向けのデータは揃ってきており、加工食品を付加することの検討を始めている段階です。また、消費者が生産履歴を照会できるWebサイトも4年が経っているため、「現在照会できる情報のほかに、お客様は何を求めているか検討して、それらを付加していこうと考えています」と齋藤氏は話します。
なお、現在、豚のアラームシステムで採用しているRFID(無線ICタグ)については、「配送用のプラスチックケースにも付けることを業界で検討しています。さらに、部分肉のラベルに埋め込むことができれば、入出庫作業の大幅な効率化が図れるというメリットがあります。ただし、RFIDは現在ワンウェイで廃棄されてしまう等、まだ少し問題がありますが、それらが解決できれば全面的な採用も考えています」(近藤氏)
食の安全性への関心が高まっている昨今では、1件問題が起きると食肉業界全体に悪影響を及ぼしてしまいます。「食の安全性というのは、全業者が完璧でないと満足してもらえません。そこで、食肉業界全体にこのトレーサビリティーシステムを普及させたいと考えています。また、他の業界にも通用するシステムだと思いますので、さまざまな業界へと広めていけたらいいですね」と近藤氏が最後を締めくくりました。
お客様情報
1948年に全国畜産株式会社(現スターゼン株式会社)として創業、食肉の卸売および製造・販売を中心として業務を拡大している食のトータルサプライヤーです。今では当たり前となっている「冷蔵トラックでの輸送」「オーストラリアからの冷凍牛肉の輸入」「正肉の規格化」を業界に先がけて実施。管理面では、トレーサビリティーへの取り組みを積極的に行い、国産牛および国産豚の生産履歴情報を公開しています。
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ゼンチク(現スターゼン株式会社)の100%子会社として、同社のコンピューター業務を引き継ぐ形で設立。1999年8月1日には、株式会社ゼンチク・コンピューター・システムから株式会社ジーコスへと社名変更をしました。難しいといわれている食肉業界のコンピューター化に取り組み、業界に先駆けたさまざまなシステム開発を行っています。

用語の説明
- トレーサビリティー
製品の流通経路を生産段階から最終消費段階、または廃棄段階まで追跡が可能な状態のことをいう。「追跡可能性」とも訳される。元々は計測機器の精度や整合性を示す用語として使われてきたが、やBSEや食品添加物問題、産地偽装問題などの発生により、食品の安全性や、消費者の選択権に対する関心が高まっているなか、とくに食品分野でのトレーサビリティーが注目されている。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴ、AS/400、eServer、iSeries、System iはInternational Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。
他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ各社の商標。
