掲載日 2006年12月10日
高付加価値のシステム・オン・チップ(SoC)の設計と、生産・製造のインフォメーション・システム(IS)の2本柱で、主に半導体や電子デバイス産業に向けたソリューションを提供している富士通エルエスアイテクノロジ株式会社(以下富士通LSI)。富士通電子デバイス部門の研究開発型会社としての設立以来、「新しい“ものづくり”を支えるITソリューションのトップサプライヤー」として高い評価を受けています。
同社の生産・製造IS事業は、パッケージ・ソフトウェアの開発販売に加え、コンサルティングからインテグレーション、運用支援サービスまで一括して提供しています。中でも最先端LSIなどの製造工程を自動化する半導体工場を中心にしたComputer Integrated Manufacturing(CIM:コンピューター統合生産)システム構築は主力サービスの1つです。
富士通LSIは2004年、お客様の半導体工場にCIMシステムを構築する際のソフトウェア品質の向上や開発期間短縮を目的に、変更管理ツールに「IBM Rational® Team Unifying Platform」を、テスト・ツールとして、「IBM Rational Robot」の適用を開始しました。導入から2年が経過した結果、納品後の障害発生件数やリリース管理時間が従来の1/3に激減するなど大きな成果が得られています。
お客様ニーズ
高品質で堅牢なCIMを提供するために
ファクトリー・オートメーション(FA)の高度化と、工場が現場で蓄積してきたソフトウェアをベースに発展した生販一体型の生産管理システムとして、1990年代から導入が進んだ日本のCIM。コンピューターで綿密な生産計画を立てるとともに、生産装置の制御や生産装置側からの工程進捗報告を自動化できるため、半導体のような多品種少量生産型の工場を省力化できるソリューションです。しかし、多様化するお客様のニーズや製品ライフサイクルの短縮、製造物責任や地球環境対策の重視、急速に進む技能者不足問題といった新しい変化に対し、各社が従来構築してきたCIMシステムの対応が遅れているという課題が明確化してきました。
富士通LSIは、このような新しい課題に対応できる最先端CIMの構築会社として高い評価を受けていますが、それは、競合他社との差別化を図るために、制御対象の特性が変化しても、安定に動作することを保証できるレベルの堅牢な制御(ロバスト制御)を、高品質に行える開発体制づくりに早急に取り組んできたからといえるでしょう。
納期やコストを計画通りに遂行することは、あらゆるサービス・ビジネスにおいて基本中の基本ですが、お客様からの仕様変更や追加が多数発生するCIMシステムの構築は、どうしても納期の遅れや予算オーバーというケースにぶつかります。また、納品後に問題が発生した場合に発生する修正やテストにかかる計算外のコストをどう削減するかも大きな課題でした。
受託するプロジェクトが多い富士通LSIでは、工程の名称や手法などの開発プロセスがプロジェクト単位や部署単位で異なってくる場合もあり、開発チームへの統一された作業標準が導入されていないことが大きな要因でした。プロジェクト単位に異なる作業標準が存在すると、開発要員をフレキシブルに動かすことが困難になり、例えば、要員が不足したプロジェクトに途中から別部門の開発者を参加させても逆に作業効率が低下することにもなりかねません。
このため富士通LSIは開発期間やコストの厳守、ソフトウェアの品質向上、リリース管理の効率化、プロジェクト進捗の客観性の向上と効率化、ソフトウェア開発業務改善スキルの習得という5つの目標を立て、2003年から最適なチーム開発ツールを比較検討してきました。
ソリューション

プロジェクトへの
ツール導入
根本原因の多角的な分析で出荷前の問題解決へ
ソフトウェア開発では、上流工程から下流工程まで一貫して、要求仕様やテスト仕様、プログラムのバグや仕様変更などの情報を効率的に管理することが品質向上につながります。Rationalツール群は、要求やテスト、変更に関する情報をリポジトリ(データベース)で一元管理できることが特徴です。一元管理によって、システム要件がどのように開発され、どのようにテストされたかというトレーサビリティーが確保できるとともにプログラムの変更作業を監査できます。
富士通LSIは、カメラ付き携帯電話やデジカメ用CCDを製造するお客様の半導体製造工場へ新CIMシステムを構築するプロジェクトでRationalの多様な開発ツールを導入しながら、Rationalコンサルタントと詳細に導入効果を測定しました。
変更管理ツールとして採用した「Rational Team Unifying Platform」は、開発アセットやワークフロー・プロセスへの共通アクセスを提供し、開発チームを統合するスイート製品で、下図のようにさまざまなツールで構成されています。中核製品の一つである「Rational ProjectConsole」は、プロジェクトの多様な状態レポートを自動出力できるため、問題の根本原因を多角的に分析できることが特徴です。特に、発生タイミングが不定であるため、通常のマニュアル操作では再現させることが困難な不具合やコンピューターの動作中に、使用可能なメモリー容量が減っていくメモリーリーク現象なども自動テストできるため、富士通LSIでは、出荷前にどれだけの問題を検出できるか、ツールに大きな期待をしていました。
また、お客様から開発要件が何度も変更されるCIMシステムにおいて、高い重要性を持つテスト領域には、「IBM Rational Robot」」が採用されました。Robotは、複数の統合開発環境(IDE:Integrated Development Environment)やプログラミング言語を使用したアプリケーションの開発向けに設計されたツールで、各種のテストを幅広くカバーし、従来手動で行っていたテスト工程を簡単に自動化できます。
導入効果

ベストプラクティ
スの観点からの改
善結果
約1年続いた富士通LSIのお客様工場のCIMプロジェクト。Rational導入前に策定された5つの目標は、すべて解決しました。納品後の障害発生件数はこれまでの1/3にまで減少。リリース(ソフトウェアの配布)作業の平均所要時間が1/3と大幅に効率化されたことも、驚きをもって評価されました。従来は、完成した新プログラムをリリースすることが決定してから、本番環境で稼動するまでに、ソースコードやリリースノートの不備などで1週間以上もかかることもありましたが、この工程は大幅に低減しました。
開発工数やコストに関しては「ソース・ドキュメント版数管理や障害管理、ドキュメントの作成状況管理、自動化テストに大きく貢献しました。障害管理を行ったことにより、不具合要因や発生工程の傾向を把握することができ、以降の開発での対策を検討することができた」と報告されました。また、RationalツールはWebベースで利用できるため、遠隔地のプロジェクト・メンバーでも成果物や障害情報をリアルタイムに共有できたことも評価されています。
また、メトリクス(尺度)の収集作業は従来の1/10に大幅に効率化されました。ソフトウェア開発の世界では、「測定はソフトウェアの管理で重要な要素」といわれ、プログラムの行数など開発成果物に関するメトリクスや、作業時間などプロセスのメトリクスを多く収集する必要があります。従来は、各担当者の自己申告に基づいたメトリクスを集計していたため、データに主観的要素が含まれてしまう上、手作業で集計しなければならないため、プロジェクト管理者にオーバーヘッドが発生していました。Rationalツール導入により、客観的なメトリクスデータの収集・集計が行えた効果は高く評価されています。例えば、プログラムのコーディングミスの内訳なども自動的に一目で分かるリスト化されました。
Rationalツールの導入効果が定量的に表せることで、「特に管理職の意識が変わりつつある」という効果も表れています。
将来の展望
富士通LSIは、今後Rationalツールの適用範囲を拡大していく計画です。要求管理や仕様変更への効率的で柔軟な対応や流用開発による戦略的ビジネスの横展開、一貫性のある構成管理システムによる資産の再利用の促進などが次に解決すべき課題として挙げています。
お客様情報
富士通エルエスアイテクノロジ株式会社は、富士通株式会社電子デバイス部門の研究開発型会社として、最先端な「LSI設計および生産・製造をサポートするソフトウェア」を開発・運営する会社として設立され、以来、総合的ソフトウェア開発会社を目指してきました。「新しい“ものづくり”を支えるITソリューションのトップサプライヤー」を目標に、主に半導体および電子デバイス産業に向けたSoC(System on Chip)の設計と検証を支援するシステムとソリューションと生産管理・製造管理のシステムとソリューションを事業の2本の柱とし、「品質」、「納期」、「コストパフォーマンス」の向上をモットーに、良い製品を効率よく、お客様の視点に立って提供することを目指しています。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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