掲載日 2007年11月5日

多摩市立図書館本館東京都多摩市立図書館は、本館と地域館5館からなり、約70万冊の蔵書を管理し、15万人近い市民と、近隣の住民などに公共図書館としてのサービスを行っています。
この多摩市立図書館に2006年3月、総合図書館情報システムCLIS/400が導入されました。そして2006年10月に市内のすべての公立小中学校の所蔵登録がほぼ完了しました。公立小中学校に設置されたCLIS/400の端末を使って、市立図書館と学校図書館のシステム的な連携がスタートしました。
お客様ニーズ
プロジェクトチームと審査会の立ち上げ
多摩市立図書館では、平成16年(2004年)にこの図書館システムを導入するためのプロジェクトチームを発足させました。このプロジェクトチームで、システムの内容を検討し、各メーカーに提案してもらう内容を具体的に決めました。
あわせて審査会を設けました。
「このプロジェクトチームと審査会のメンバーには、それぞれ、図書館職員だけではなく、セキュリティー環境の視点から、市役所の企画政策部の情報推進担当も入っていました。さらに、学校図書館との連携を視野に入れていましたので、学校教育部の指導室と学校の予算を管理している教育総務課などもメンバーとなっていました」と多摩市立図書館のご担当者は選定の経緯を語ります。
「図書館システムを持っているメーカーの中から、多摩市と同規模以上のシステムを扱っているメーカー7社に提案を依頼し、審査会で評価をした結果、総合点で1位のサン・データセンターのCLIS/400を導入することが決定しました」
今回の図書館システム導入の大きな柱は、学校図書館との連携でした。市立図書館のシステムも10年近く使用していたため入れ替えが必要でしたが、学校の図書館にも問題がありました。
全小中学校に図書館司書を配置し環境整備
小学校の学校図書館にはスタンドアロンのシステムが入っており、きちんと運用されている学校もありましたが、導入から時間が経過し、中にはPCが壊れたままになっている学校もあったそうです。また、中学校では紙、つまり図書カードなどを使って貸し出し、返却業務を行っていました。
「多摩市では、平成6年から8年の3カ年に、段階的にすべての小学校全21校にスタンドアロンの図書館システムを導入しました。しかし、すべての学校で積極的に利用しているとは言えない状況でした。当時は、学校図書館が現在ほど重要視されていなかったのかもしれません。その後、学校図書館に専門職の図書館司書を配置し始め、平成15年度からは市内のすべての小中学校全31校に図書館司書を配置しています。このように近年、学校図書館の環境整備に力を入れてきました」と多摩市教育委員会 学校教育部指導室のご担当者は説明します。
図書館と学校との連携のメリット
「最初は、図書館と学校とがシステム入れ替えの予算を、別々に申請していました。でも同じ図書館同士、システム上で共有したり連携したりすることによって、お互いにメリットがあるのではないかと検討を始めました」と図書館のご担当者は今回のシステム設計思想を振り返ります。
「まず、書誌データが共有できます。導入前は学校がそれぞれ1校1校、自校分のMARC(デジタル化された書誌データ)を買っていました。もちろん図書館でもMARCを買っていて、その中には当然、同じ本も含まれます。1つのMARCを共有すれば、MARC購入の費用も削減できます。このように考えて、新しく導入するシステムでは、市立図書館と学校図書館が書誌データを共有できる仕様を打ち出しました」と、連携に至った経緯を説明します。
「また、以前から図書館では、学校に団体貸し出しをしていましたが、今までの図書館システムでは、貸し出しをした本は、A校に貸したということしか分かりませんでした。学校側では、その本が届いた後の物理的な本の移動、どこに配架して誰に貸して・・・ということが、システム的に管理されていないため、その本を回収しようとしたときに、行方がわからないということが、よくありました。そこで、学校と一緒に、書誌データだけではなく、蔵書も管理できるシステムにして、学校が児童・生徒に貸したということを機械的に管理できないか、と考えました」と図書館のご担当者は連携の必要性を語ります。
ソリューション

CLIS/400の管理画面
システムの連携から人・物の連携へ
学校図書館にとっては、高機能の図書館システムが利用できるようになり、書誌データを作る必要がない。市立図書館にとっては、団体貸し出しをした本を最終利用者単位で管理できる。
これが新システムの大きな利点でしたが、学校図書館が市立図書館と同一システムを使用するメリットはこれだけではありませんでした。
「学校側から見たもう1つの大きなメリットは、同じ教育委員会の中で、学校教育部と社会教育を担当する図書館の生涯学習部が、組織として協力できたことです。このシステムを入れることによって、顔を合わせる機会も増えましたし、パイプができました。例えば、司書の先生は、学校の図書館に1人でいることが多いのです。以前は、システムを使っていて司書の先生が何か分からないことがあって困ったときに、聞く人がいなくて自分で勉強しなければなりませんでした。コンピューターの得意な先生がサポートしてくれることもありますが、いつもいるとは限りません。今回、市立図書館のシステムを入れることになり、司書の先生が、図書館の職員に電話やメールでシステムについて質問できるようになりました。これは大きなメリットです」と教育委員会のご担当者は語ります。
実は、市立図書館と学校図書館の連携には長い歴史があります。
「多摩市ができてから、公共図書館はずっと学校と連携して発展してきました。もう30年の歴史があります。30年前から、学校のクラスに団体貸し出しをしたり、市内の小学2年生の児童に、1時間、読書の支援をしたり、いろいろな協力をしてきました。そういった歴史の流れの中で、今回の図書館システム導入が、これまで築いた連携関係を深めるきっかけとなれば、大きな意義があります」と、多摩市立図書館のご担当者は背景を語ってくれました。
システムの導入に合わせて、物流体制も整備しました。
「システムでお互いの蔵書が分かるだけではなく、学校と図書館で本を物理的に運ぶための物流システム、連絡便の制度も整えました。今年度は週に一度、発送し運用しています」(図書館のご担当者)
学校図書館の所蔵登録に苦慮
市立図書館では、図書館システムを利用していましたので、データの移行は機械的な作業で、スムーズでした。しかし学校図書館のデータ整備には苦心されたそうです。
「学校で使っていたシステムのデータは精度が低いものが多く、ほとんど移行できない状態でした。きちんと管理していた一部の学校からは、データを使えないかとずいぶん言われましたが、全校足並みをそろえて1から蔵書登録をしてくださいとお願いをしました。学校には負担がかかりますが、市立図書館の書誌データにISBNなどで検索して、蔵書の登録をすればいいと説明をしました」と図書館のご担当者は語ります。
平成18年(2006年)8月に、臨時職員と司書合わせて数名で、各学校を回り、1校当たり4日かけて集中して蔵書登録を行いました。学校には端末が1台しかありませんから、登録補充用ノートパソコンと長いLANケーブルを持って回ったそうです。
夏休みには、学校の司書以外の先生にも手伝っていただいたりして登録しましたが間に合わず、9月は学校図書館を閉めて、司書の先生と臨時職員が登録作業を続けました。
所蔵の登録は、想定以上に大変だったそうです。ISBNをバーコードリーダーで読んで、確認して、所蔵の登録ができるはずだったのですが、古い本にはカバー、つまりISBNのバーコード印刷がないものがあり、打鍵で検索するなど機械的には登録できない本も多かったそうです。
「9月までに、ほぼ登録が終わりましたが、学校が所蔵している本で市立図書館に書誌データがない本が、予想よりかなり多くあることが分かりました。書誌データは、すべて市立図書館が作成しています。ですから、図書館で書誌データを作ったりダウンロードしたりという作業が、8月から翌年6月ごろまで、断続的に発生しました」(図書館のご担当者)
特にデータの「版」が違う本が多かったそうです。同じタイトル・出版者の本を所蔵していても、図書館の本は新版で学校と同じ版のデータがなく、学校の蔵書を登録する前に、書誌データの登録が必要なことが多かったとか。また、学校図書館には、市立図書館の児童書選定基準に合わない漫画風の伝記本などもあり、これらもすべて書誌の登録が必要でした。
「ただ、書誌データの管理はすべて市立図書館にしたのは良かったと思います。データの均質性が高まります」と図書館のご担当者は語ります。
システム導入前と導入後の、MARCと図書館システムの関連イメージ
導入効果
縄文時代から明治維新の時代に来たような進歩
「トラブルもなく、順調に運用できています。そしてとにかく早い。以前のシステムは、10年近く使っていたこともありますが何もかもが遅かったんです。例えば帳票・統計で定型では出せないデータについては、サーバーに直接アクセスして取り出せるようにしていただいていますが、そのスピードがまるで違います。前は大きなデータだと半日以上かかることもよくありましたが、格段に早くなりました」(図書館ご担当者)
「学校の立場から言うと、もともとほとんど紙ベースだった業務が最新のシステムに変わったので、縄文時代から明治維新の時代に来たような進歩です(笑)。そして、紙ベースの業務と比べて管理のレベルが変わりました。実はこれまで学校では、蔵書点検をやったことがないところがほとんどでした。紙の台帳を使った蔵書点検には、保護者のボランティアを募っても半年以上かかることがあるのです。このシステム導入により、年に1回は蔵書点検をするようになりました。また、貸し出し冊数などの統計も、今まで司書が手計算でカウントしていましたが、画面上の選択で容易に統計が取れるようになりました」(教育委員会ご担当者)
あえて、不満な点も伺ってみたところ、「利用者公開検索の画面が違うので戸惑いがある」(図書館ご担当者)、「もう少し業務画面がカラフルで見やすいといい」(別の図書館ご担当者)といったご意見もありましたが、大きな問題はないようでした。
ただ、学校図書館では、管理ができるようになった反面、貸し出しに時間がかかるということが起きています。
「学校の場合は、昼休みなどの短時間に多くの利用が殺到します。紙だと『そこに置いておいて』と言うこともできましたが、システムではそうは行きません。現在、1校に1台ですので、借りるために生徒が列を成すことがあります」と教育委員会のご担当者は現在の課題を説明します。
「当初、児童・生徒にも、システムを利用してもらおうという案もありましたが、市立図書館と接続されたシステムですので、現在は先生専用になっています。プライバシーの保護や、ウィルスなどのセキュリティーを考慮しました」(教育委員会ご担当者)
将来の展望

多摩市立図書館本館
システムを利用した予約を試行
昨年の10月から学校でも図書館システムを使用し始めましたが、学校、市立図書館間の本の予約は、現在FAXを使って行っています。システムとしては当初から使えるようになっていますが、市立図書館も入れ替えたばかりなので、学校図書館でもまずは自校の貸し出し業務から慣れていく、という趣旨でした。
今月、学校図書館からのシステムを使った本の予約業務を試行します。
「今までは例えば、『米作りに関する本』などと必要な内容を書いて、学校から市立図書館にFAXをもらい、図書館で選書して配送していました。今後は、学校図書館で本を検索し、特定の本に対してオンラインで予約を入れてもらうようになります」と図書館のご担当者。
「学校の司書の中には、検索に慣れていない方もいて、不安材料もあります。また市立図書館は、市民、個人の利用者の方にサービスを行っていますので、学校から機械的に予約をかけて、個人利用者にご迷惑がかかるようなことがないか、試行して検討し、来年度からの本格的な運用につなげたい」とご担当者は計画を語ってくれました。
さらには、「来年度予定しているのは、市立図書館と学校の1対Nの関係の予約業務です。でも実は、学校同士の予約もシステム上はできるのです。学校同士、N対Nで、予約して配送することができるようになれば、大きな連携となります。市立図書館が全校にサポートするのは限界があります。将来的には学校同士で本を融通し、連携しあえるように、実践していきたい」(図書館のご担当者)と将来の展望を語ります。
そして学校の立場から教育委員会のご担当者は、「司書が配置されて学校の図書館は大きく変わりました。今習っている単元に関係ある本を並べたり、季節の飾りつけをしたり、学校図書館がとても温かみのある場所に変わりました。読書量も増えていますが、これ以上読書量を増やすのは難しいと思います。これからは、量より質ではないでしょうか。システムが入り、欲しい本がすぐ見つかるようになります。司書が、子供の疑問や好奇心に応えるようシステムを使ってサポートすることで、質が向上するのではないかと期待しています」と述べています。
また、図書館のご担当者は「プロジェクトチームを発足させて、選定や設計をしたことで、われわれも苦労したり、厳しい仕様となったりしたところもありましたが、結果的には非常に良かったと思います。セキュリティーなどの基盤を確実に整備することができ、市全体のシステムの中で図書館がきちんと位置づけられました。この安心感は大きいです」と市の中の、図書館システムの位置づけを語ってくれました。
そして、「なぜ図書館が負担を増やして、こういうシステムを導入・運用しているかというと、子供の読書活動の推進をしていくためにはやはり学校と連携するのが一番大事だと思っているからです。市立図書館が関与せず学校だけで、全市で統一したシステムを使うのは難しいでしょう。だから、市立図書館ががんばるしかない(笑)。市立図書館が支援していくことで学校との接点ができるし、学校図書館の充実にもつながるのではないかと考えました。今は、画期的に学校の図書館が充実したのでやってよかったな、と思います」と熱意を込めて語ってくれました。
今回、図書館システムの導入と合わせてグループウェアも導入し、司書間での情報共有が進みました。
また、ホームページも一新し、鮮度の高い充実した情報が掲載されるようになりました。
今回の導入で、市立図書館の負担は少々増えましたが、大きな進歩があったようです。主な点は以下のとおりです。
- 住民へのサービス向上
検索の多様化・高速化、ホームページの充実(携帯電話にも対応)、オンライン予約など - 全公立小中学校31校の学校図書館のシステム化
紙ベースの運用から、システム化し管理のレベル向上。蔵書点検も可能に - 学校とのシステム的な連携
書誌データの共有、オンライン予約(試行中)、学校間の連携も視野 - 学校図書館司書への支援強化
電話による相談、メーリングリストやグループウェアによる情報共有
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
