掲載日 2008年6月5日
株式会社アイ・ティ・フロンティア(以下、アイ・ティ・フロンティア)は、お客様のIT戦略・IT計画策定支援から、システム設計・開発、IT基盤運用、さらにはシステム・IT基盤運用まで、お客様を総合的にサポートする「真のITパートナー」を目指しています。
同社では以前からA社の大規模基幹システムの運用・保守を担当していましたが、システム導入から約10年がたち、メンテナンス性が下がってきているという問題点が発生していました。そのため、お客様側から「システムを刷新して即応性のあるビジネスを展開したい」という要望がありました。その際、アイ・ティ・フロンティアから提案をしたのが、システムの全面再構築でなく、Service Oriented Architecture(以下、SOA:サービス指向アーキテクチャー)技術を段階的に適用することによるシステム刷新でした。
そこで2007年10月から、検証という形でSOAの実装を開始。約2.5カ月におよぶ検証の末、SOAを導入するお客様に対してメリットがあることが実証できました。その際、Enterprise Service Bus(ESB)として活用されたのはIBM WebSphere® Message Brokerであり、既存のIBM System i™との連携にはIBM WebSphere MQ、SAPのERPパッケージとの連携にはIBM WebSphere Business Integration(WBI) Adapter for mySAP.comが採用されました。
お客様ニーズ

株式会社アイ・テ
ィ・フロンティア
コンピテンスセン
ター
技術コンサルティ
ング部
マネージャー
川上 義夫氏
SOA実装による既存システムを活用した刷新を検討
アイ・ティ・フロンティアのお客様であるA社の大規模基幹システムは、長年の機能追加や更改などの結果、システムが複雑化し、機能変更・追加やメンテナンスにかかる負荷、リードタイム、コストなどの増大が課題となっていました。そこで、2006年度にはコンサルティング会社によるBusiness Process Reengineering (BPR)を実施、業務見直しを行ったのです。その結果、システムの全面刷新をしたいという要望がA社からアイ・ティ・フロンティアへと寄せられました。
「お客様のシステム規模がかなり大きいため、システムを全面刷新するとコスト面、期間面ともにリスクが大きいことが想定されました。そこで既存のシステムを生かす形でアプローチができないかと考えていたのですが、それに対する答えがSOAの段階的適用でした。ただし、これまで大規模基幹システムへのSOA実装は前例がないため、SOA化で本当にメリットが生じるかどうかの裏付けとして実証実験を行うことになったのです」と話すのは、アイ・ティ・フロンティア コンピテンスセンター 技術コンサルティング部 マネージャーの川上義夫氏です。
アイ・ティ・フロンティアでは日本IBMと共同で2005年度からSOA技術の研究を行ってきていました。その集大成として実際に稼働しているお客様の基幹システムを検証環境で再現し、システム連携基盤としてSOA実装を試みることになりました。これは、実プロジェクトを想定した初のケーススタディーでした。
「弊社では『System Detox Platform』という名称を用いていますが、システム全体を作り替えるのではなく、システムの運用をしながら俊敏性を問うところは作り替えをし、そのまま使えるところは使うというのが、SOA実装のコンセプトとなります」(アイ・ティ・フロンティア 技術戦略担当役員補佐 兼 コンピテンスセンター センター長 兼 理事 栗谷川雅史氏)
ソリューション

システム図の拡大
会計サブシステムだけ外に切り出してシステム間を連携
A社へのSOA実装は全面的に行うのではなく、会計サブシステムだけ基幹システムの外に切り出すという段階的なSOA適用方法をとりました。
「A社ではシステムの更改を継続してきたことにより、システム間の連携が非常に複雑化した状態となっていました。そこで、これをSOAの観点で切り出してひも解くことができないかと考えたのです。ただし、SOAによる全面再構築をするのでしたら期間・コストのリスクは従来の方法と変わりません。そこで問題とされている部分にフォーカスし、そこからSOAを取り入れて段階的にステップアップしていこうと考えました」と、アイ・ティ・フロンティア コンピテンスセンター 開発技術部 マネージャーの鈴木通夫氏は話します。
また、長期間のメンテナンスをしていたことで、仕様設計のドキュメントと実際のシステムの状態の乖離(かいり)が生じ、システムを全面刷新した場合、それを正確に再現できるかどうかのリスクが発生することが予想されました。SOAのアプローチで既存システムをサービスとして使うことにより、そのリスクを減らすことができることも大きなポイントとなっています。なお、会計サブシステムだけ基幹システムの外に切り出すということは、システム間を連携する基盤(ESB)が必要となりますが、そこで選ばれたのはWebSphereソフトウェアです。
「ESBについては数社の製品を比較検討しましたが、製品についての情報量が豊富な上、サポートレベルも高いことでWebSphere製品を選択しました。ただ単に製品を提供するだけでなく、どう使うかというレベルまで一緒に考えてくれたというのも大きな選定理由です」(川上氏)
続けて鈴木氏は、「われわれはお客様の問題に適切な解決策(ソリューション)を考えているので、製品で可能なことに合わせるのではなく、われわれの考える解決策に合わせられる製品であることが非常に良かったですね」と話します。その点をふまえて採用されたのは、ESBとしてWebSphere Message Broker、System iとの連携にWebSphere MQ、SAPのERPパッケージとの連携にWBI Adapter for mySAP.comです。
導入効果

株式会社アイ・テ
ィ・フロンティア
コンピテンスセン
ター
開発技術部
マネージャー
鈴木 通夫氏
SOA適用により、システム刷新コストを約40%削減できると想定
SOA実装検証は、実現方法や検証範囲の検討など、綿密な机上検証を2007年7月から約3カ月間行ってから実行されました。実機による検証は、その後、約2.5カ月間かけて行われましたが、SOAの導入事例はほとんどないため、基幹システムとしての使用に耐えうるのかどうかが懸念されたといいます。
「基幹システムが止まることは許されないため、耐障害性や、本番稼働時に扱う大量データに性能的に耐えることができるのかが懸念されました。万一、トラブルが発生したときに素早く復旧することができるのか、その際にデータが失われることはないか、特に、ESBはすべてのデータが通過する要の部分なので、負荷をかけた際にここで問題が起こらないか、また起きた場合に回避策があるのかどうかも検証の対象でした」(川上氏)
そこで本番稼働と同じ負荷をかけて実証実験を行いましたが、成功裏に検証は終了しました。ランニングコストについては長期間運用しないと結果が出ませんが、今回のケースでは、システムを全面刷新をした場合には初期投資に数十億円規模のコストがかかるところが、段階的にSOAを適用することにより、初期投資額を約40%削減できると想定しました。
「今回の実証実験はわれわれが他社と差異化できる武器を得るという側面もありました。大規模な基幹システムへ段階的にSOAを適用するというアプローチを持つことができれば、今後はそれを求めるお客様にも提案できるようになります」と話すのは鈴木氏です。今日、大半の企業ではITシステムを導入済みですが、システムの全面再構築が難しかったり、一部のシステムを切り離そうにもその方法が分からないといった企業が増えています。そこで、大規模システムをビジネスに合わせてどのように変えていくかがポイントであり、その解としてSOAが有効となるのです。
将来の展望

株式会社アイ・
ティ・フロンティア
技術戦略担当役員
補佐 兼
コンピテンスセンター
センター長
兼
理事
栗谷川 雅史氏
2008年度内には次のフェーズを展開予定
第1段階のSOA実装検証が成功した今、アイ・ティ・フロンティアでは「基幹システムの段階的疎結合化」を進めていく次のフェーズを考えています。
「今回の延長線上で接続パターンの網羅性を増やすとか、データの管理をどうするのかなど、実際のビジネスにどうつなげていくかの仕組み作りを検討しています。時期としては2008年度内にスタートしたいと考えています」(川上氏)
システム規模が10億円以上の企業であれば段階的なSOA実装のメリットが発生することが見込まれており、大規模システムを抱えるお客様に適用できることがはっきりとしました。そこで、アイ・ティ・フロンティア内の他の部署からの問い合わせも入ってきているといいます。
「今回のSOA実装検証で課題が洗い出されました。そこで今後は、テストをいかに効率的に進めるか、持っている資産をいかに可視化していくか、そして、どういったテクノロジーやプロダクトを適用していくかをもう一歩突き詰めた上で、新規案件に取り組んでいきたいと考えています」と、栗谷川氏が締めくくりました。
お客様情報
三菱商事(80%)と日本アイ・ビー・エム(20%)の出資により、三菱商事関連のIT企業5社が統合し、2001年に発足。お客様のIT戦略やIT計画の立案支援から、システム設計・開発、IT基盤構築、さらにはシステム・IT基盤運用まで、「真のITパートナー」としてお客様を総合的にサポートしています。
用語の説明
- BPR
「Business Process Reengineering」の略。企業活動について売上高、収益率などの目標を設定、それを達成するために業務内容や業務の流れ、組織構造を分析・最適化することをいう。その場合、組織や事業の合理化が伴うため、高度な情報システムを取り入れることが必要となる。 - ESB
「Enterprise Service Bus」の略。SOAに基づいたアプリケーション統合を「バス」の概念でデザインし、その連携を実現するための基盤となるソフトウェア製品のことを指す。
製品・技術情報
ハードウェア
ソフトウェア
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM,IBMロゴ, System iおよびWebSphereは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corporationの商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点での IBM の商標リストについては、www.ibm.com/legal/copytrade.shtmlをご覧ください。
