掲載日 2008年8月1日
1879年に日本最初の損害保険会社として創業された東京海上日動火災保険株式会社(以下、東京海上日動)は、損害保険業界のリーディングカンパニーの地位にあり、現在、総合保険グループである東京海上グループの中核企業として事業展開を行っています。
損害保険業における特徴的な事業形態は代理店を通じて保険商品を販売していることです。東京海上日動の代理店は約6万店を数え、代理店との情報のやりとりやコミュニケーションは、事業を推進する上で重要な役割を果たしています。
保険会社と代理店間の一体感を醸成し、コミュニケーションをより緊密かつスムーズにするための仕組みの構築が積年の課題でありましたが、この課題を解消するために導入したのがIBM WebSphere® Portal(以下、WebSphere Portal)を中心に据えた全社員向けのポータルサイト・システムでした。
お客様ニーズ

東京海上日動火災
保険株式会社
IT企画部 企画室
デザイングループ
課長 川杉 朋弘氏
代理店との一層の情報共有化へ、
どうすれば、社員には代理店への通達を読んでもらえるか
東京海上日動では、これまで代理店向けにエクストラネットを構築し、一方、社員向けのシステムとしてはイントラネットを活用していました。しかし、それらのシステムはそれぞれ独自に設計され、進化のプロセスも異なっていたため、システム連携がうまくいかないという問題が発生しており、代理店との情報共有やコミュニケーション不足を指摘する声も挙がっていました。
加えて、損保業界には大きなビジネス環境の変化があり、その影響について東京海上日動 IT企画部 デザイングループ課長 川杉朋弘氏は次のように話しています。「1998年以降、損保業界は自由化の荒波にさらされることになります。他社と横並びの商品構成から脱却して、当社でも飛躍的に保険商品が増え、営業社員がその約款や規定を把握するだけでも大変になり、代理店さんへの情報を精査している余裕もなくなっていました。さらに2002年のミレアホールディングスの設立による旧日動火災との経営統合、そして2004年の合併が続いたため、2001年から2004年までの3年間は統合システム・合併システム構築一色で、社員向けイントラネット強化に割く時間もなかったというのが現実でした」
さらに同氏はシステム上のもう一つの問題点を次のように指摘します。「当時の当社の情報系メニューは、ランチャー・メニューで『通達』なり『メール』なりのボタンを押さないと情報が表に出てこない仕組みになっていました。情報が奥深くに入っていて、それを呼び出す前に仕事が入ってしまえば、「情報をキャッチする」という必要不可欠の行動が後回しになってしまっていました。社員に情報に触れてもらい会社の動向について敏感になってもらう、特に代理店さんに対してどのような情報や通達が発信されているか、ということに敏感になってもらい代理店さんとの情報共有を強化していくためには、情報を表層化させる必要がありました。そのために、メニューも含めたイントラネット・システムの総合的な検討が急務でした」
2004年には「抜本改革プロジェクト」が立ち上がり、仕事のやり方を根本的に変えようという動きが始まります。社員向けのイントラネットも見直すことになり、同社IT企画部と、システムの実装を担う東京海上日動システムズ株式会社(以下、東京海上日動システムズ)は新システム構築の検討、そのための課題の整理に入ります。
ソリューション

システム図
ビッグコンセプトチェンジを打ち出し、
通達を2系統に分け、ポータル画面の中央に配置
代理店との情報の共有化をどう図り、社員に通達(レター)をどう読ませるか。
そのためのソリューションとして東京海上日動が検討したのは、ポータルサイト・システムの構築でした。
その経緯を東京海上日動システムズ ITサービス本部 オープン基盤サービス部 ソリューションプロデューサー 新開康司氏は、次のように話します。
「それまで東京海上日動の情報系の通達などはIBM Lotus Notes®(以下、Lotus Notes)ベースで行っていました。
ポータルもLotus Notesベースで構築ということは当然考えましたが、当時の統合・合併の流れの中で、ここは社員に見た目にも明確に分かってもらえる形で変えたかったという思いがあり、
IBMの提案もあって新たなポータルを検討することにしたのです」

東京海上日動シス
テムズ株式会社
ITサービス本部
オープン基盤サー
ビス部 ソリューショ
ンプロデューサー
新開 康司氏
こうして、東京海上日動はポータルの基盤としてWebSphere Portalを採用することになります。川杉氏は、このポータルの意義を次のように話します。「ポータル構築の一番の目的は社員一人一人の意識改革です。当時の経営トップ層には、事務で窒息しそうになっている営業第一線を何とか変えなければという思いがあり、その解決策の一つが情報伝達・情報流通の強化の実現を狙った当プロジェクトでした。このポータルの大きな特長は、代理店さんと共通の通達と社員固有の通達を2系統に分けて表示し、それらを画面の中央に配したことです。これはビッグコンセプトチェンジです。変わったということを強く印象付けました。とにかく、代理店さんにどのような情報が出ているのかを社員には見てほしかったのです」
「大きな変革を伴うプロジェクトだけに、システム構築は導入後の運用を考えながら進めていきました。各部の要望や課題を整理し、納得してもらうポータルにするために念入りな対話が必要になり、そこが苦労をしたところでもあります。システムそのものは、これまでの技術の積み重ねにより容易に構築できましたし、可能な限り標準機能で構築することにこだわりましたので、稼働後のメンテナンスはかなり容易になりました。画面デザインに関してはIBMユーザーエクスペリエンス・デザインセンターにも参画してもらい、レイアウトや配色を一緒に検討しました。

東京海上日動火災
保険株式会社
IT企画部 企画室
デザイングループ
課長代理
古田 周平氏
先進的なイメージながら、温かみのある画面に仕上がっています」と話すのは東京海上日動 IT企画部 企画室 デザイングループ 課長代理 古田周平氏です。
経営トップの決断もシステム構築の推進力となり、社員向けポータルサイトは2007年12月から稼働しています。ユーザー数は約4万人。端末数は約3万5千台。
出社して、全社員がログオンして最初に見るのがこのポータルです。ログオンが集中する朝は、システムにかかる負荷が懸念されましたが、入念な負荷テストを繰り返したこともあり、サービスイン当初から現在まで順調に稼働しています。
導入効果

東京海上日動シス
テムズ株式会社
ITサービス本部
オープン基盤サー
ビス部 ソリューショ
ンデザイナー
山田 敬宏氏
全社員が見るポータルの実現で、
情報を出したいという潜在ニーズも刺激
東京海上日動システムズ ITサービス本部 オープン基盤サービス部 ソリューションデザイナー 山田敬宏氏は画面構成について次のように説明します。
「これまでランチャーで起動していたアプリケーションはポータルの画面メニューから直接呼び出せるようにし、会社の方針を伝えるコーポレート・メッセージやカンパニー情報の表示エリアを設けました」
カンパニー情報とは、営業部門(個人向けのリテイル営業部門、大企業等法人アカウントのコマーシャル営業部門、自動車ディーラー向けのディーラー営業部門)の統括セクションが、各部門の営業社員向けに提供する情報のことです。
これまで、本店の各セクションは、どの営業部門かを問わず全社ベースで情報を発信していたため、営業社員は必要な情報をピックアップするのに相当手間取っていました。
今回のポータルでは情報配信先をシステムが判断するようになり、各営業社員は必要な情報だけをスピーディーに入手できるようになりました。
ポータルの画面
画像の拡大
コーポレート・メッセージでは、社長のメッセージが文書としてではなく動画で配信されようになり、伝わり方が違うと好評です。
これまで特別なチューナーを必要とし、時間も限定されていた衛星放送に加えて、全ユーザーの端末においてオンデマンドでコーポレート・メッセージが視聴できるようになり、
スケジュールが不規則な営業社員でも時間を問わず視聴できるようになりました。
古田氏は、これからの効果に対する期待を次のように話しています。「全社員が見るポータルができたことは、情報の出し手にも相当なインパクトがあったのではないかと思っています。全社員が目にする情報を出す場所ができたことで、情報を出したいというニーズも、これまで以上に顕在化してきました。出し手の意識が変わりつつあることを実感しています」川杉氏も「このポータルを起点に、いろいろなことができるはず」と付け加えます。
将来の展望
ポータル能力の100%活用へ、
今後も使い方やコンセプトの周知を徹底
今後の課題について、川杉氏は次のように話しています。「人間の脳と同じで、今はまだ潜在能力の30〜40%くらいしか使っていない状況です。今あるシステムの能力を100%使ってもらえば、社員の仕事への取り組みも相当変わるはずです。経営トップ層の期待もかかっていますし、「インフラ」と「意識」と「体制」というこの三つの要素を三位一体で動かさなければなりません。そのためには使い方はもちろん、コンセプトの周知徹底を引き続き図っていくことが大事です。例えば当社のイントラネット関連のマニュアルとしては初めてのことですが、フルカラーのマニュアルも用意しました」
「最近では、情報伝達をマネジメントに組み込む、という取り組みも開始しています。情報を見た後、アクションをどう起こすかを定義付けし、マネージャーが部下に対し情報を伝達するということを義務付けるという試みです」と、古田氏はさらなる意気込みを見せています。情報の窓口(ポータル)である以上に、社員の意識も変えつつある東京海上日動のポータルサイト。その能力を100%発揮する日は、それほど先のことではないでしょう。
お客様情報
損害保険の引受、損害の調査・保険金の支払、新商品の開発、営業支援、資産運用、その他の各種事業に取り組み、営業拠点は国内に128営業部支店。海外営業拠点は36カ国・260都市に及び、文字通り日本を代表する損害保険会社として事業を展開しています。

本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は, 2008年6月末時点のものです。
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