掲載日 2010年4月5日
医療用機器の開発・製造を行っているテルモ株式会社(以下、テルモ)は、医療機器に組み込むソフトウェアの開発過程において、要求定義書や要件定義書の作成にIBM Rational DOORSを導入。要件定義の矛盾や、変更における関連の確認に活用し、仕様書の精度と、ソフトウェアの品質が向上しました。
目次
お客様ニーズ

MEセンター
研究員
井上 耕一 氏
製品の安全性確保に、ドキュメントのトレーサビリティーを行いたい
ソフトウェアへの要求から要件を定義することは、ソフトウェア開発の基本です。この段階で十分な検討がなされていなければ、後工程での手戻りや修正が多く発生してしまいます。コストアップにつながるだけでなく、納期等への影響が及ぶこともあります。医療用ソフトウェアを開発するテルモでは、医療機器に組み込むソフトウェアが年々複雑化しています。一つの製品にかかわる開発者の数も増え、上流工程でのプロセス整理がより大切になってきました。医療機器に組み込まれるソフトウェアとして、テルモでは特に安全性を重視しています。医療機器としての安全性確保のためにも、要求定義の分析や検証が必要であり、開発工程でのトレーサビリティー確保が課題とされてきました。
「現在の医療機器は、ハードウェアとソフトウェアが組み合わされ、全体としての評価が必要です。これまではソフトウェアの機能も少なく、規模も限られていたため、比較的少人数での開発でしたので、全体の把握も容易でした。しかしソフトウェア全体が高機能化しており、それに伴って開発規模や開発者の人数も増加しています。製品の安全性を確保しながら、ソフトウェアに対するさまざまな要求に応えていく中で、上流工程での要求管理を着実に行うことが、より必要となってきています」(MEセンター システムアーキテクト開発グループ 研究員 井上 耕一氏)。
アメリカではFDA(食品医療品局)、EUでもIEC62304において医療機器のソフトウェア・ライフサイクルに対する国際的な規格標準化が進んでおり、そこで強く求められているのが製造におけるトレーサビリティーです。グローバルにビジネスを展開する上でも避けては通れない課題であり、日本国内でも今後、法律が整備される可能性もあります。こうした点も踏まえ、テルモでは、ソフトウェアの開発における上流工程の見直しを行ってきました。
「要求から仕様に落とし込む段階で、患者さんに被害が及ばないよう仕様に落とし込まれているか、トレーサビリティーをきちんと取りたいと考えました。リスク分析を行う上でも、必要なことです」と井上氏は語ります。
ソリューション

MEセンター
部長
中村 克也 氏
仕様変更に伴うモジュール間の関連を、一覧できる点を評価
要求定義書の記述についてルール化するのに伴い、テルモでは要求仕様を管理し、上流のドキュメントについての関連づけを明確にするためのツールを模索していました。
「従来は、各ドキュメントをチェックしながら、モジュール間の関連性を見るためのマトリックスを手作業で作成していたため、非常に煩雑でした」(MEセンター システムアーキテクト開発グループ グループリーダー 部長 中村 克也氏)。
手作業で目視に頼るマトリックスでは、作成にもチェックにも時間がかかるだけでなく、漏れを百パーセント防ぐのは困難です。品質と効率、双方の向上を目指し、いくつかのツールを検討した結果、「要求分析から仕様を起こす過程において、最も使いやすかった」(井上氏)ことから、Rational DOORSの導入を決めました。
まずは要求仕様書等の記述についてのガイドラインを明確化しました。ルールに則った記載を行うためのテンプレートを作成し、いくつかのパイロットプロジェクトでIBM Rational DOORSを導入。要求仕様書の作成をスタートしました。効果が見極められた段階で、徐々にライセンス数を増加。製品全体の規格が定まると、ソフトウェアに関する要求仕様をとりまとめ、要求が定義されたところでIBM Rational DOORSに入力し、要求仕様書を書き出してリスク分析をかけ、ソフトウェアとしての完成度を確認する手順が確立されました。
導入効果

MEセンター
上席主任研究員
石川 皇 氏
ドキュメント間のトレーサビリティーを確保し、上流工程での品質向上に寄与
IBM Rational DOORSにより、要求仕様の変更に伴う仕様確認など、ドキュメント間のトレーサビリティーが容易に行えるようになりました。以前は、変更があった場合は関連する文書を見比べる必要がありましたが、ドキュメント作成時点でリンクを張っておくことにより、機能の関連や修正による影響範囲の見極めが簡単にできるようになりました。
「IBM Rational DOORSの導入により、仕様書作成段階での工数は増加しましたが、後工程での手戻り減少や、プログラム修正の時間が短縮されました」と、MEセンター システムアーキテクト開発グループ グループサブリーダー 上席主任研究員 石川 皇氏は導入効果を語ります。特に修正時における関連モジュールのチェックが、より確実に、短時間で行えるようになりました。
「これまでプログラム修正では、モジュール間の関連や影響を完全に把握できなかったことが原因で、ひどい目に会いました。あるモジュールを修正したら別のモジュールに影響が出たり、それを繰り返すことでつじつまが合わなくなってしまうといったことを経験してきました。しかしIBM Rational DOORSの導入後は、そうした手戻りや修正は少なくなったという実感があります」(石川氏)。
導入に際し、要求定義やテストのプロトコル定義など、開発工程の見直しを合わせて行ったことで、統一したプロセスでの開発が行えるようになったことも、より効果を上げています。
将来の展望
トータルに製品のトレーサビリティーを行うため、ハードウェア部門への展開も
テルモでは、開発プロセスの見直しとIBM Rational DOORSの導入で、ソフトウェアの要求定義書の品質が向上、開発工程の手戻りが減少しました。さらにIBM Rational DOORSの適用範囲を広げ、ハードウェアの開発工程においても導入を始めています。テルモで開発している医療機器において、ハードウェアとソフトウェアの垣根がより低くなり、双方を組み合わせて、一つの製品としてシステム全体の動きを評価するよう、変わってきています。こうした中、ソフトウェア開発において実績を上げているIBM Rational DOORSをハードウェア開発にも導入することで、よりよい製品開発に生かしていきたいと考えています。
「徐々にハードウェアの開発にも広げており、現在、入力を始めている段階です。相互にリンクを張るといった使い方はまだ先ですが、徐々に活用の段階を引き上げ、お互いに要求定義書を参照できる環境を整えていきたいと思います」(井上氏)。
また、医療機器として製品が利用されるには、厚生労働省による認可も必要です。「認可申請に必要なドキュメントの作成チームを作る予定ですが、IBM Rational DOORSで蓄積した要求定義書や仕様書が活用できないかとも考えています」(中村氏)。
製品開発に必須のドキュメント整備に、IBM Rational DOORSは今後も活用されていきます。
※この事例の掲載有効期限は、2013年3月31日です。
お客様情報
お客様名:
テルモ株式会社
所在地:
〒151-0072東京都渋谷区幡ヶ谷2-44-1
URL:
体温計など身近な医療機器から、注射器、カテーテル、人工肺などの専門医療機器まで、幅広い製品ラインで世界の医療を支えているテルモ株式会社。「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、人々の健康に役立つさまざまな製品を、世界150カ国以上で提供しています。
製品・技術情報
ソフトウェア
参考資料
- お客様導入事例 テルモ株式会社(606KB)この事例のPDFがダウンロードできます。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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