掲載日 2010年7月5日

株式会社東京証券
取引所 外観株式会社東京証券取引所(以下、東京証券取引所)は、部門ごとに構築してきた情報系システムを、費用を抑えつつ短期間で改善することを目標に、IBM WebSphere® Enterprise Service Bus(以下、WebSphere ESB)でService Oriented Architecture(サービス指向アーキテクチャー、以下、SOA)のシステム基盤を構築しました。SOA基盤上に独立したサービスとして各機能を実装することで、可視化しやすくコスト範囲が特定できる情報系システムが誕生しました。
お客様ニーズ

株式会社東京証券
取引所 池内 博氏
システム間の影響を小さくして開発スピードやコストを改善
東京証券取引所は、次世代売買システム「arrowhead」による注文処理や約定処理の高速化、取引件数の急増に対応するため、売買審査システムを改良することにしました。売買審査システムは、証券取引での作為的な価格形成や不正な行為を監視するためのシステムです。しかし、東京証券取引所には、売買審査システムを含め、部門業務ごとに構築された20種類以上の情報系システムがばらばらに稼働し、それらに起因する問題がありました。東京証券取引所 IT開発部でデリバティブ・システム部長を務め、売買審査システムの刷新も担当した池内博氏は、この問題を次のように説明します。「サイロ化した各システムをどのように再構築していくかが課題でした。それぞれのシステムで運用を開始した時期が異なるため、あるシステムを改良した後に、他のシステムを新しくするといったことを繰り返していました。このため、いつまでも抜本的な対策が打てませんでした」
20種類以上の情報系システムが互いに関係しあっていることも、システムの再構築を難しいものにしていました。法改正への対応や新サービスの提供など、さまざまな要因でシステムを作り直さなければなりません。このとき、それぞれのシステムへの影響を調査し、該当する個所のコストを考慮しながら修正する必要があります。すべての作業を終えるまでに1年近くの期間がかかることもありました。
東京証券取引所は、このような複雑に関係しあったシステムによる問題を解決するため、SOAを念頭に置いた基盤上で独立したサービスを組み合わせてシステムを構築すべきと考えました。「システムを改良するときのスピードを上げたり、コストを下げたりするためには、システム間の影響を小さくすべきだと考えました。ハードウェアとソフトウェアを一体にしてシステムを考えるのでなく、個々の独立した『サービス』として機能を実装し、それらを疎結合することで、可視化しやすくなり、改善のためのコストも特定できるようになるはずです。SOAによる基盤上に実際のシステムを配置するというアプローチを採ることで、数年後にすべての情報系システムを改良し終えたときには、それらがすべてSOA基盤上で稼働することになります」(池内氏)。
ソリューション

株式会社協和エク
シオ 戸塚 勝巳氏
信頼性やサポート力の高さ、実績の多さから WebSphere ESBを選択
東京証券取引所は、SOAによるシステム基盤を構築するためにWebSphere ESBを選択しました。WebSphere ESBは、アプリケーション間のサービスを統合する柔軟な接続インフラストラクチャーです。池内氏は、選択の理由を次のように話します。「システムは、一度作ってしまえばそれでよいというものではありません。構築後もPDCAサイクルを繰り返し改善していくものです。この点から、アプリケーションには寿命があり、必要に応じて作り直すものになります。しかし、アプリケーションを構築する基盤は、しっかりしたものでなければ困ります。基盤がふらついてしまうと、その上に構築するアプリケーションのよりどころがなくなってしまうからです。このような意味で、WebSphere ESBは、信頼性が高く、メーカーも信用できます。また、実績もあるため、WebSphere ESBを導入することにしました」
また、売買審査システムの構築に携わった株式会社協和エクシオ ビジネスソリューション事業本部 部長の戸塚勝巳氏は、WebSphere ESBを推薦した理由を次のように話します。「サービス統合を進めていくにはフレキシブルな製品が必要だと考えています。今後の情報系システムの姿を検討していく上で、上流のビジネスプロセスのモデリングから実装までを一貫して支えるプラットフォームとして適切だと判断しました。また、ベンダーのサポート力も、製品を選定する上で無視できない要素でした」
導入効果
開発ステップのフェーズ分けと反復作業によって開発効率と品質を向上
WebSphere ESBをSOA基盤とした売買審査システムの開発は、二段階のフェーズで実施されました。最初のフェーズでは、既存の売買審査システムで提供していた機能の実装に焦点をあてました。これらは、システムに関するノウハウが東京証券取引所内にすでにあり、正しい動作がどのようなものであるかが分かっている機能です。これに対して2番目のフェーズには、既存のシステムにはなく、新たに実装する高度な機能で、システム利用者である売買審査部門も含めて実際の動作を検証しながら開発しなければならないものが集められました。「売買審査システムには、審査のためのさまざまな機能が必要です。それぞれの機能は、基本的に疎結合で個別に実装しています。ある機能に変更を加えても、その影響が他の機能に及ばないような作りになっています」(池内氏)。
売買審査システムは、それぞれの機能ごとに開発し検証するという、反復型開発アプローチを繰り返して実装されました。「システムは、売買審査部門から出てきた要件を元に構築しました。新しい機能に関しては、利用部門からのアイデアをシステムとして実装した場合に実際に使えるかどうかを判断できませんでした。このようなシステムの構築では、ユーザーに見せながら作り込んでいくという手法が適していると思います。機能を独立したサービスとして実装したことで取り扱いもしやすかったです。結果としては、反復型開発によるアプローチは成功だったと思います。利用者である売買審査部門からもよい評価を得ています」(池内氏)。
また、反復開発中には、サービスの粒度も繰り返し検討されました。池内氏は、試行錯誤しながらサービスの粒度を決めなければならなかった理由を次のように話します。「SOAでは、どのようにサービスを定義するかが難しい部分です。一つのサービスのサイズをどの程度の粒度にするかは、開発効率やコスト、納期などを総合的に考慮して判断していく必要がありました。まだ、SOAによるシステムを作り始めたばかりで答えは出ていませんが、工期の短縮やコストの低減には寄与できていると思っています」
開発ステップを二つのフェーズに分けたことで、開発者が業務内容を理解しながら開発作業を進めることができた点も大きな効果です。「株取引に関する業務は専門知識がなければ分かりません。例えば、相場操縦とはどのような状態であるかが分からなければ、膨大なデータからその状態を示すものは抽出できません。このような業務の専門知識を熟知しているのは業務部門の者だけです。業務部門と常にコミュニケーションをとり、要件定義書を作り、それを開発部門と業務部門のインターフェイスにしました。何かを変更するたびに、要件定義書を修正し、業務部門とレビューしました。これを繰り返したことで、要件定義書という形で詳細なドキュメントを残せ、開発者が業務内容を理解できました」(池内氏)。
このような手順を経たことで、最初の開発フェーズでは2回以上あった反復開発の手直し回数が2番目の開発フェーズでは1.7回くらいに減り、開発効率とともに品質も向上しました
将来の展望
情報系システム再構築のために業務改革に着手
売買審査システムの構築を通してSOAによる効果を確信した東京証券取引所は、次のステップとして業務改革に取り組んでいこうと考えています。池内氏は、業務改革の必要性を次のように話します。「情報系システムは、利用ユーザー部門がビジネスプロセスを見直した結果を元にして作られるべきです。このため、業務改革を行い、それをシステムに実装しようと考えています。現状を例えるならば、『ジグソーパズルの台紙を作り終えた段階』です。業務改革を進めることでジグソーパズルのピースである個々のサービスが分かり、最終的に1枚の絵になるようにシステムを実装していきたいと思います」
お客様情報
株式会社東京証券取引所の最も重要な使命は、有価証券の円滑な流通と公正な価格形成を図ることです。このため、同社は、いち早く売買取引のコンピューター化に取り組み、日本の代表的な株式市場を運営しています。
ビジネス・パートナー
1954年5月に創立された株式会社協和エクシオは、情報通信ネットワーク構築とシステムインテグレーションサービスで培った技術によって、付加価値の高いシステム・ソリューション・サービスを提供しています。
製品・技術情報
ソフトウェア
参考資料
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システム概要図
(187KB)
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お客様導入事例 株式会社東京証券取引所 (397KB)この事例のPDFがダウンロードできます。
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事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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