掲載日 2010年6月28日

八十二銀行 本店株式会社八十二銀行(以下、八十二銀行)は、融資審査の高度化ならびに効率化、稟議作成の省力化を実現し、顧客サービスを向上するため、融資業務の抜本的な改革に取り組み、その一環として電子稟議を主要機能とする新融資支援システムを構築しました。
新融資支援システムは、SOA(サービス指向アーキテクチャー)の採用により、既存の基幹系システムのホスト資産を有効活用しつつ、分散系システムやパッケージ製品とのオンライン連携を実現しました。これら融資業務の効率化に加え、八十二銀行が幹事行を務める「じゅうだん会」の初の分散系共同版システムの礎として、拡張性と柔軟性を備えることができました。
お客様ニーズ

融資統括部
リーダー
小松 聡 氏
お客様の期待に応える営業活動を目指して
長野県の中枢金融機関として地域とともに発展することを使命とする八十二銀行は、経営の質の向上や利用者の立場に立った業務運営など、総合的な企業価値の向上に取り組んでいます。また同行は、山形銀行、筑波銀行、武蔵野銀行、阿波銀行、宮崎銀行、琉球銀行の地銀6行とともにITの効率的活用を推進する「じゅうだん会」の幹事行として、システム共同化の効果増大に向けた取り組みを重ねています。
銀行を取り巻く環境が厳しさを増す中で、八十二銀行が2007年度より推進してきたテーマの一つが融資業務改革です。「誰もが自信を持って、素早く間違いなくできる融資業務」を基本コンセプトとするこの改革の狙いを、同行融資統括部のリーダーを務める小松聡氏は次のように話します。
「お客様ニーズの多様化が進む中、銀行が提供するサービスも複雑化しており、従来に比べ必要とされる知識・スキルが高度化
しています。一方、融資の現場では、業務量の増加や担い手の変化等が進む中、新たな担い手の育成を含め、いかに融資力やお客様対応力を高めていくかという課題を抱えていました。こうした課題を踏まえ、効率的に信用リスクやオペレーショナル・リスクを抑えた業務運営を行うため、審査の高度化、稟議起案の効率化、オペレーショナル・リスクの排除、ローコスト・オペレーションの確立といったテーマの実現に向け、融資業務の抜本的な改革に踏み切りました。この結果として、お客様との対話時間の確保、営業店での同一水準の融資判断の実現、審査から実行までのスピード向上など、お客様の期待に応える営業活動の実現を目指しています」
八十二銀行は、融資事務の標準化の一環として行内規程やマニュアルの再構築、商品や徴求書類の見直しなどに着手すると同時に、電子稟議を柱とする新融資支援システムを構築し、改革を推進するという方針を打ち出しました。
「電子稟議の中でまず実現したいと考えたのが、稟議起案や与信判断に必要な情報を効率的なデータ連携で自動作成・収集し、起案
や審査に関する業務を大幅に効率化することです。また稟議起案にかかるプロセスをシステム化し、起案作業等をナビゲーション
することや、審査上の留意事項・必要な書類等を説明するガイダンス機能でサポートすることにより、業務遂行をトータルに支援します。これにより、融資経験の浅い担当者も高度な案件組成や審査ができる、すなわち自然と審査能力が身につく仕組みを構築したい
と考えました」(小松氏)
ソリューション

システム部
システム開発
グループ長
小布施 嘉雄 氏
SOAのコンセプトを採用して、既存のホスト資産を活用
新融資支援システムを構築するにあたり、八十二銀行が導入したのがSOAの考え方です。同行システム部システム開発のグループ長を務める小布施嘉雄氏は、背景には自行開発への強い思いがあったと話します。
「計画段階ではパッケージの導入も検討しましたが、当行が求める業務ニーズに見合ったユーザー・インターフェース(画面)を備えたものはありませんでした。また、構想したのは単なる電子稟議システムではなく、じゅうだん会で共同利用する基幹システム(共同版システム)や周辺システム(分散系システム)ともリアルタイム連携が可能なシステムであり、通常のパッケージでは対応が困難でした。さらに、じゅうだん会のメリットを維持・発展させていくために、システムの利用範囲を拡大していきたいという考えもありました。そこで新融資支援システムは、じゅうだん会初の分散系共同版システムとすることも視野に入れ、自行開発するのが望ましいという結論に至りました」
さらに、同行システム部システム開発の丸田秀紀氏が言葉を続けます。
「既存の基幹システムは、ホスト・コンピューター(IBM System z®)を用いて運用しており、各行の業務で扱うほとんどのデータがそこに集約されています。このホストの信頼性は非常に高く、勘定系オンラインや情報系のマスター・データ管理などの処理も安定した稼働を続けています。ならば、このホスト資産をそのままの形で利用し、新融資支援システムとのリアルタイム連携を実現するのが最善と考えました。そこにIBMから提案されたのが、SOAを活用した一連のソリューションだったのです」
システム
全体構成図
IBMの提案は、大きく次のようなソリューションから構成されています。SOAに対応した金融機関向けソリューション体系「Rapid Enterprise Renovation for Financial Service Systems(SOA RER for FSS)」、業務プロセス統合ソフトウェア「WebSphere® Process Server」、複数システム間のメッセージ連携インフラにエンタープライズ・サービス・バス(ESB)を提供する「WebSphere Enterprise Service Bus」、そしてアプリケーション基盤ソフト「WebSphere Application Server」です。
まず、既存の基幹システムをSOA RER for FSSによってラッピングし、ESBに接続することでSOAサービスとしての活用を可能とします。同じESBには新融資支援システムも接続され、両者のリアルタイムな連携を実現します。また、WebSphere Process Serverが、このインフラ上のさまざまなSOAサービスを統合し、融資業務のビジネス・プロセスを自動化する役目を担います。
なお、新融資支援システムの主要機能である電子稟議については、BPEL(Business Process Execution Language)を用いてワークフローを構築し、ビジネス・ロジックと分離して運用することにより、組織変更などにも容易に対応できる仕組みとなっています。
導入効果

システム部
システム開発
丸田 秀紀 氏
融資事務を効率化するとともに今後の拡張性を確保
IBMは、じゅうだん会の共同版システムの運用・管理をはじめ、アプリケーションの保守作業もアウトソーシングで担っています。こうした長年の実績を評価し、八十二銀行は今回のプロジェクトでもIBMの提案を採用しました。
「IBMには検討段階から参画いただきました。じゅうだん会からも意見や要望を取り入れつつ、分散系共同版システムとして最適なソリューションを実現するには、各行の“現場の声”を知る第三者の仕切り役が必要であり、パートナーとしてIBMが最適と考えました」と小布施氏は話します。
しかし、八十二銀行にとってもSOAをベースとしたシステム構築は初めてのチャレンジであり、「何をSOAサービスとして切り出し、どこまで処理をさせるのかなど、試行錯誤が続きました」と丸田氏は振り返ります。
「不安を乗り越える上でも、IBMのサポートは心強く感じました。例えば、要件定義局面に目標とするSOAインフラを想定した環境で機能やパフォーマンスの事前検証を行ってくれたのですが、その裏付けがあったからこそ、私たち開発チームも『方向性は間違っていない』と確信を持ってプロジェクトに臨むことができました」
こうした経緯を経て、八十二銀行の新融資支援システムは2010年4月に稼働を開始しました。
新融資支援システムは、基幹系システムや財務分析などの周辺システムとのリアルタイム連携により、融資関連情報を即時に各担当者のPC画面に反映するほか、入力データを基幹システムに即時に引き渡すことも可能です。また、融資事務のプロセスを見直してワークフローをシステム化したことで、稟議回付の効率化および多種大量の判断資料を電子データとして一括管理するペーパーレス化を実現しています。これらは、稟議起案から回付、決裁、実行処理に至るプロセスの迅速化に大きく貢献しています。
加えて小松氏は、プロジェクト・メンバーが幾度も議論を重ね、特に苦労して設計・開発にあたったことで得られた成果として、画面の使い勝手にも言及します。
「新融資支援システムはAjaxを使用して非常に情報量の豊富な画面を作り込んでおり、従来の稟議で確認できた情報のみならず、その背後にある関連データまで、本当に見たい情報を素早く簡単に参照することができます。この仕組みを活用することで、より厳密な融資審査や業務現場での的確な教育訓練(OJT)を行うことが可能となります」
また、システム運用・管理の観点からも新融資支援システムは、基幹系システムの資産を有効活用したことによる、システム構築期間の短縮、保守容易性の確保、オペレーターや保守要員の省力化など、さまざまなメリットをもたらしています。
「SOAをベースとしたシステム間連携により、新融資支援システムのさらなる高度化はもちろん、さまざまな周辺システムとも容易に統合を進めることが可能です。今後の拡張を見据えた基盤が整備されたこと自体が、今回のプロジェクトにおける最大の成果と考えています。また、じゅうだん会に対してはホスト・システム以外でも共同化が可能なことを実証し、自行開発でありながらパッケージにも劣らない高いコスト・パフォーマンスを得ることができたと自負しています」と小布施氏は総括します。
※ページ末尾の参考資料で「新融資支援システムの概要図」をご覧いただけます。
将来の展望
オフサイト・モニタリングの対応など利用範囲を拡大
もっとも、新融資支援システムが稼働を開始してからまだ日が浅いこともあり、業務面での本格的な成果はこれからの期待ということになります。
「営業店や本部の現場を見てみると、新しいシステムに戸惑いはあるものの、予想以上にスムーズに定着しつつあるというのが実感です。現在はまだ一部、営業店端末での作業が残っていますが、今後はオンライン連携処理を拡大し、案件の登録から審査までの手続きをすべて1台のPC上で行えるようにしていきたいと考えています。そうすれば融資事務に費やされている各担当者の作業負担を30%近く削減できるのではないかと考えます」と小松氏は話します。
また、新融資支援システムはSOAをベースとしたインフラのもとでさらなる発展や機能拡張が考えられています。例えば、個人ローン審査システムや営業支援システムとの連携も、そうした中で有力視されているテーマです。また、オフサイト・モニタリングや本部管理業務への対応といった各種機能のレベルアップにも注力していく考えです。
SOAをベースに構築された新融資支援システムは、銀行業務全体をカバーする新たなビジネス基盤への発展を見据え、八十二銀行ならびにじゅうだん会の各行が推進する業務改革の礎になろうとしています。
お客様情報
1931年8月に長野市に本店を置いていた六十三銀行と第十九銀行(上田市)が合併し、その合計値を行名とした八十二銀行が誕生。長野県を地場とする地方銀行として、2009年度にスタートした第28次長期経営計画において、経営理念「健全経営を堅持し、もって地域社会の発展に寄与する」を原点とした「お客さまのために行動する銀行 ─ 原点からの出発 ─」をテーマに、地域密着型金融を推進している。
製品・技術情報
ソフトウェア
ソリューション
参考資料
-
新融資支援システムの概要図
(90.7KB)
この記事のシステム構成図がダウンロードできます。
お客様導入事例 株式会社八十二銀行 (1.24MB)この事例のPDFがダウンロードできます。
Adobe® Reader®が必要
本事例中に記載の肩書や数値、固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴ、ibm.com、System z、WebSphereは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corporationの商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点でのIBMの商標リストについては、www.ibm.com/legal/copytrade.shtml(US)をご覧ください。
