掲載日 2010年9月10日

第一生命保険
株式会社 本社1902年(明治35年)の創業以来、「お客様第一主義」の経営理念を実践している第一生命保険株式会社(以下、第一生命)は、企業価値のさらなる向上と「お客さまから最も支持される生命保険会社」を目指し、2010年4月業界に先駆けて株式会社化を果たしました。
こうしたことを契機に、ご契約者はもとより、投資家からも選ばれる保険会社となるために、契約時の説明から支払いまでのサービス品質のさらなる向上と業務の生産性向上を同時追求しています。その一環として、IBMとの共同研究を通じて開発したプロセス・セマンティック分析ソリューションを活用し、複雑な保険事務プロセスにおける実態や課題の可視化を実現することにより、客観的データに基づいた業務改善につなげています。
お客様ニーズ

保険金部 保険金
企画課 課長
野々宮 恵一氏
業界最高の支払いサービスの提供と、生産性向上を実現するためには「客観的モノサシ」が必要
保険金や給付金を支払う保険金部は、保険会社の重要なセクションであり、支社やサービスセンターをサポートする立場として、お客様との接点業務も多くあります。「保険金部では、業界最高の支払サービスをご提供することを部のビジョンとして掲げています。具体的には、豊富な知識をもって、お客様にわかりやすい説明を行えるよう、お客様接点業務の強化に努めています。株式会社化されても生命保険は、お互いが助け合う制度という本質に変わりはありません。困ったときにすぐに役立つ保険であるために、正確、迅速にお支払いするのがわれわれの使命です。お客様や株主の皆様からのご支持をいただくには、より高いサービス品質の提供と生産性の向上を同時に実現することが求められており、外部からの評価にも耐えうる『客観的モノサシ』が必要でした」と保険金部保険金企画課で課長を務める野々宮 恵一氏は話します。
ソリューション

保険金部 部長
廣中 恭明氏
システムの中に埋没してしまったプロセスを新たなソリューションで「見える化」する共同研究
保険金部では、お客様からの保険金請求の受付、診断書などのテキスト化・コード化、点検、査定、支払い処理など、日々膨大な事務処理をイメージ・ワークフロー・システム上で行っています。野々宮氏は、「紙で業務を行っていた時代は、どこでどれだけの滞留が起きているかなどの状態が目に見えてわかりやすかったのですが、ワークフロー・システムでは、業務の状態がシステムの中に埋没してしまうことから、どこで滞留しているか把握しづらく、さらに担当者1人1人が効率的に業務を行っているかも把握しづらくなっていました。業務管理の観点においてもきちんと説明責任を果たし、一歩進んだ事務プロセスへ進化するためにも、この課題をクリアする取り組みが求められていました」と語ります。
「また、システム処理している業務の中でもAルート、Bルート、Cルートなどがあり、例えばそのうちBルートが遅いのではないかという感覚的なものはありましたが、遅れた理由やその時間差など、具体的な違いについては十分に把握するまでには至っていませんでした」と保険金部 保険金企画課 課長の髙橋 聡氏は話します。
さらに保険金部の部長として業務を統括する廣中 恭明氏は、今回のプロジェクトの必要性を次のように話します。
「これまでの業務改革は、システム化されていない部分がフォーカスされ、そこをシステム化することで効率化を図ろうというアプローチが多かったのですが、いざシステム化してみると、結果として本当に効率化されたかどうか分からなくなってしまいました。品質と生産性を共に高めて、次のステージにいくためには、まずシステムの中に埋没してしまったプロセスの実態を捉え直し、課題やボトルネックを『見える化』する仕組みの必要性を強く感じていました。また、今年4月に保険法が施行され保険金を支払う期限に関する規定が新設されました。法対応だけではなく、お客様サービスの向上という観点においても、支払いまでのリードタイムを少しでも短縮できないかという課題もありました。そこでIBMの東京基礎研究所とワトソン研究所で研究されていたプロセス・セマンティック分析という技術を応用することでワークフロー・システムの『見える化』ができるというご提案を受け、今回の共同研究プロジェクトに至りました」
今回の共同研究は、グローバルのIBM基礎研究所で開発された先進技術をお客様の業務課題に適用することで新たなソリューションを作り出す「First-of-a-Kind(FOAK)プログラム」の一環として実施されました。「IBMの基礎研究が具体的に当社の業務や課題にどう適用されていくのか、理屈としては何となく分かっていたのですが、当初は正直漠然としていました。しかし、トライアルのデータ分析を重ねていくなかで、中間レポートをいただいたあたりから、道筋が見えた感触がありました」と廣中氏は振り返ります。
導入効果

保険金部 保険金
企画課 課長
髙橋 聡氏
システム・ログ分析と業務特性のひも付けからプロセス上の課題を可視化し、改善につなげる
プロセス・セマンティック分析ソリューションは、大量の業務システム・ログから事務フローの実態を可視化し、業務の課題となる情報を取り出す分析手法ですが、プロジェクトを進めるにあたり、システム・ログだけでは業務分析に限界があることが分かりました。
この限界を乗り越え、成果をあげるために、業務改善のノウハウを備えた経験豊富なIBMコンサルタントが協力しました。
野々宮氏は「システム・ログから、誰が、いつ、何をしたかということは分かります。しかし、なぜそこにそれだけの時間がかかっているのかを調べるには、ワークフローからのシステム・ログにプラスして、その商品の特性やご契約内容、今回のご請求内容といったさまざまな情報と全部突き合わせて分析していく必要がありました。プロジェクトの中でも、そのひも付けが一番苦労したところです。われわれユーザーで処理するには、あまりにも大変で手に負えないところをIBMのコンサルタントにご協力いただき、バラバラであった各データが見事に関連付けられ統計的な分析結果を得ることができました。基礎研究所の研究員とコンサルタントの方々が、われわれと同じテーブルに着いて、一緒に考えていただいたことを大変ありがたく思っています」と話します。
仮説と分析を繰り返し、時には現場の実務担当者に直接ヒアリングを行うなど、分析の精度を高めていくことで、徐々に成果が現れてきました。髙橋氏は分析結果が業務改善に活かされた一例を次のように説明します。「お客様から提出された診断書などから病名や手術名などを支払いのための専用コードに置き換えるという作業(コード化業務)を関連会社に委託しているのですが、ルールに照らしても分からない、悩んでしまう案件は専用コードへの置き換え作業を保険金部に委ねることとなっています。今回の分析で、そうした案件の発生が全体の25%もあり、しかもそのような案件はその他の案件に比べて3倍の処理時間がかかっているということが数値として明確になりました。さらにその案件の属性毎の傾向も把握できましたので、その部分のルールをもっと精緻化して、コード化業務を効率化するということが必然的に業務改善策となっていきました」
事務処理の委託を受ける第一生命情報システムの事務サービス部担当リーダー 伊藤 加菜子氏は「専用コードに置き換えることができない場合には、工程が1つ多くなるので、処理時間が長くなるということは感覚として分かっていました。しかし、客観的データから3倍の処理時間と聞いて正直驚きました。改善点が明確になりましたので、すぐに検討会を実施し、迅速な対応を取ることができました」と話します。
また新人研修においても、分析の成果が活用されています。「今回Aという商品が比較的処理が早く終わるという分析結果が出ました。そのため、その処理を経験の浅い担当者に集約すれば、全体として支払いまでの時間を短縮できるということが分かりました。しかし、実際には高いスキルを有する担当者も商品Aの処理を行い、逆に、新人研修では、商品Aの習得は後回しにされていました。そこで研修のプログラムを組み替え、今年の新人研修では、その商品の習得から始めています」(伊藤氏)
将来の展望

第一生命情報シス
テム 事務サービ
ス部 担当リーダー
伊藤 加菜子氏
共同研究の成果を通常の業務に実装し業務改善から、よりよい支払いサービスの実現へ
第一生命では、今回のプロセス・セマンティック分析ソリューションの共同研究による分析結果がすでに8項目の業務改善につながり、今後も数項目の業務変更を予定しています。
「今回の共同研究の成果には2つの側面があったと思います。1つはわれわれの経験上、こうだと思っていたものが、より客観的な数値として再確認できたということとと、もう1つは、正しいと思っていたものの中にも実は誤って認識しているものがあったということを確認できたということです。今後の業務改善につながる大変貴重なデータを得ることができました」と髙橋氏。
社内における注目度も高く、「たくさんの人から照会を受けて、説明をしています。やはり見えるものの効率化から、さらに一歩踏み込んだ見えないところの効率化は、どの部門も悩みとして持っているということを実感しています」(野々宮氏)
IBMでは、社内外に存在する膨大な情報をビジネス分析に活用し、より確かな意思決定支援や新たなビジネス、サービスの創造を促進するBAO(ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション)を強化しており、今回のプロジェクトはBAOにおける保険業界初の共同研究プロジェクトとなりました。今回のプロジェクトと今後の展開について廣中氏は「非常に質の高い技術力で対応していただいたIBMには大変感謝しています。第一生命が今後において品質、生産性を共に高めていくための、非常に大きな柱の一つを捉えることができたなと感じています。これまでをフェーズ1とすると、次のフェーズ2ではこの成果を業務の中に実装して、通常業務の中で何がどうなっているのかを計る『客観的モノサシ』として、業務の実態把握、改善と結果のPDCAサイクルを回して、より高いレベルの保険金の支払いサービスを強く追求していきます。IBMには、そうした体制作りにも引き続き協力していただきたいと思います」と期待を語りました。
プロセス・セマンティック分析のソリューション全体像

お客様情報
1902年9月、日本で最初の相互主義による保険会社として創立。2010年4月1日、相互会社から株式会社に変更。従業員数約57,800名。創業以来の経営理念である「お客さま第一主義」を貫き、一生涯にわたってお客さまに安心を提供する「生涯設計」というコンセプトのもと、お客さまの「一生涯のパートナー」となることを目指している。
製品・技術情報
サービス
- BAO(ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション)
BAOが導く新たな知見。膨大な情報を経営に生かす秘訣とは?
参考資料
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お客様導入事例 第一生命保険株式会社
(593KB)
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事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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