掲載日 2010年10月18日

一般社団法人
共同通信社日本の主な新聞社と日本放送協会(NHK)が加盟する報道機関である一般社団法人共同通信社(以下、共同通信社)は、1,200人以上の記者が総力を挙げて取材・編集した国内外のニュースを、加盟社ならびに民間放送各社、各種メディアに対して、いち早く正確に配信することを使命としています。
衆議院議員や参議院議員を選ぶ国政選挙報道は、そうしたニュース配信業務の中でも最もパワーを要求されるイベントの一つであり、ITシステム基盤をいかに効果的に活用するかが重要な鍵を握ります。
共同通信社では、各投票所における期日前ならびに選挙当日の出口調査の結果を素早く集計し、加盟社と一部契約社、社内などに提供する調査集計システムを2010年4月に刷新。同年7月11日に行われた第22回参議院議員選挙に適用し、高信頼なIT基盤のもとで、よりスピーディーかつ正確な情報提供を実現しました。
目次
お客様ニーズ
選挙における
世論調査・
出口調査のた
めのシステム
一発勝負となる選挙の出口調査においてシステムの安定性向上が急務
衆議院議員や参議院議員を選ぶ国政選挙において午後8時に投票が締め切られると、新聞各紙やテレビ各局は一斉に当選確実や各政党の勢力図などの速報を報じ始めます。
開票作業も始まっていないにもかかわらずそれが可能なのは、投票所の出口に待機した調査員が、有権者に直接「誰に投票したのか」を尋ねた結果を集計し、実際の得票数を推定する、いわゆる出口調査が大きな役割を果たしています。共同通信社もこうした出口調査に総力を挙げて取り組んでおり、その業務を支える調査集計システムを構築・運用してきました。
しかしながら、開票報道にさらなるスピードアップや正確性の向上が求められる中で、「既存システムに対する多くの課題が浮上してきました」と、同社編集局 総合選挙センターの中村功氏は話します。
中村氏は既存システムの課題を次のように説明します。「選挙の調査は常に一発勝負。各投票所の調査員から携帯電話のWeb機能やアプリケーション、一般電話などを介して随時送られてくるデータを遅滞なく集め、約束の時間までに集計結果を加盟・契約社に提供しなければ、膨大な費用をかけた調査が無駄になってしまいます。したがって調査集計システムでは、安定性の向上が最大の要件となります」
こうした安定性と並び、当然のことながら性能面の向上も重要な要件となります。
「既存システムの負荷増加にあわせて、適宜、サーバーを入れ替えるなどの対策を施してきましたが、調査データの入力負荷に耐えられるギリギリの状態でした。このため一部機能の運用を制限せざるを得ず、常に不安を抱えながらの運用を強いられていました。もちろん、入力性能だけでなく集計性能の向上も求められます。特に出口調査のような業務は一分一秒を争う時間との戦いとなるだけに、集計時間の短縮によってもたらされる恩恵の大きさには、計り知れないものがあるのです」と話すのは、同社システム局 システム開発部の主査を務める藤原明紀氏です。
また、システムの機能面について、同社システム局 システム企画室の委員を務める大杉秀邦氏がこのように話します。
「選挙報道に際しては、選挙当日の出口調査のみならず期日前の出口調査、世論調査などのデータを複合的に組み合わせて分析することになります。選挙日程や準備作業に要する時間を考慮すると、これらの調査を並行して進めていく必要があり、各種のアプリケーションを同時稼働できることが、業務現場から強く求められていました」
こうしたことから共同通信社は2009年1月、調査集計システムの刷新に向けた取り組みを開始しました。
ソリューション
過剰投資を防ぎつつ、システム全体のライフサイクルに着目した構成を提案
新調査集計システムの検討を終えた共同通信社は、ベンダー数社に対して要求仕様書を公開し、ソリューションを募りました。そうした中から選ばれたのが株式会社ライトウェル(以下、ライトウェル)の提案です。
「もともと旧調査集計システムの基盤保守やミドルウェア関係を担当していただいていた経緯から、ライトウェルの技術力の高さは以前から認識していました。今回、私たちが提示した要求仕様書に対するライトウェルの提案は、その課題に正面から応えるものであり、実現性の高さを感じました。また、営業や開発部隊、幹部とも対応に誠実さが見られ、実現に向けた熱心さが伝わってきました。時期はすでに2009年の夏に差し掛かり、参院選までに残された時間は一年を切っており、発注から本番運用までの開発期間にはまったくゆとりがありませんでした。また、弊社側のメンバーも限られており、他の業務を兼任する者も多いことから、効率的に開発作業を進めていくことが求められました。そうした厳しい条件下でプロジェクトを任せられるパートナーは、ライトウェルの他にないと判断したのです」と大杉氏は話します。
具体的に共同通信社がライトウェルを最も高く評価したポイントの一つが、インフラを構成するハードウェア製品のみならず、データベースのDB2やWebアプリケーション・サーバーのWebSphere、負荷テスト自動化ツールのRational Performance Tester、重要データをバックアップして保護するTivoli Storage Managerなど、IBMの幅広いソフトウェア製品に精通し、最適に使いこなすことができる総合力です。
「弊社内では調査集計システムに限らず、さまざまな業務システムの幹を構成する要所にIBM製品を導入しています。その運用ノウハウや既存資産を活用する意味からも、今回の新調査集計システムではIBM製品を使いたいという要望を持っていました」と大杉氏。このニーズに応えるべく提案にあたったライトウェル 第2ソリューション事業部 技術開発部 グループ・リーダーの新里豊彦氏は、次のように話します。
「もともと既存の調査集計システムでもDB2やWebSphereが使われており、そのライセンスを継承して活用していくことを新システムの柱としました。また、それらのソフトウェア環境を安定稼働させる一方、決して過剰投資に陥ることがないように可能な限りサーバー台数を集約するなど、ハードウェア構成のライトサイジングを心がけました」
単に機能面や性能面の要求に応えるだけでなく、システム開発から運用、保守までのライフサイクル全般に着目。その結果として
TCOを削減していくというライトウェルの細部にわたる配慮が、共同通信社に受け入れられたのです。
導入効果
新調査集計
システム構成
Rational Performance Testerを用いた効率的な負荷テストにより安定稼働を確立
もっとも、システム開発の過程ではさまざまな苦労に直面しました。先に述べたように調査集計システムの目標は、集計結果を契約・加盟社へ遅滞なく提供することにあります。膨大な費用をかけた出口調査の結果が開票までに間に合わないという事態は、何としても避けなければならないことでした。
開発作業は、2010年7月の参院選での本番運用開始を目標に進められたのですが、その途中の2009年8月に衆議院の解散にともなう総選挙が行われました。共同通信社側のプロジェクト・メンバー全員がその本番対応に時間を割かれることになり、新調査集計システムの開発作業は約1カ月にわたって中断してしまったのです。また、調査集計システムの刷新を機に、新たに自社開発のプログラムを組み込みたいという要望も持ち上がってきました。「これは共同通信社の独自ノウハウを集約したものであり、今後の選挙報道を目的とした各種調査の業務改善や高度化を進めていくためにも、どうしても実現したい事項でした」と藤原氏は話します。
こうした理由から、新調査集計システムの開発スケジュールは、想定していた以上に厳しいものとなりました。
そこでライトウェルが実践したのが、Rational Performance Testerを用いることで効率的に負荷テストを繰り返し、新調査集計システムの大前提として要求される安定性を短期間で担保するという取り組みです。
「Rational Performance Testerの確かな実績については知っていましたが、単にツールを導入すれば効果的な負荷テストを行えるわけではありません。いかなる“シナリオ”のもとで負荷テストを実施するのかという戦略性が肝となります。また、そのシミュレーション結果からシステムのボトルネックを発見し、対策としてデータベースやWebアプリケーション・サーバーの最適なパラメーターを設定するといったチューニングを施していく技術力が求められます。Rational Performance Testerに対する豊富な経験と卓越したノウハウを持つライトウェルだからこそ、私たちの無理な要求にも応えることができたと考えています」と藤原氏は高く評価しています。
こうして2010年3月、新調査集計システムはほぼ予定どおりのスケジュールで、なおかつ機能面についても一切妥協することなく、無事に運用テスト(共同通信社側での検証テスト)を完了。翌4月には、予行演習を兼ねて京都府知事選の出口調査に適用され、その安定性を実証しました。
そして、満を持して7月11日に新調査集計システムは、本番となる参議院議員選挙の当日を迎えました。
「新調査集計システムの稼働により、調査データの集計や加盟社に提供する帳票の作成時間が大幅に短縮されたおかげで、出口調査の調査時間を従来よりも延長することが可能となりました。これにより、開票速報の正確性の向上にも大きく貢献できたと自負しています。もちろん、システムの安定性にも十分な手ごたえをつかんでおり、ここまで安心して国政選挙の本番に臨めたのは、私たちにとって初めての経験でした。また、これまでは本番対応のために多数のスタッフが待機せざるを得なかったことにより発生していたSE費用を、今回は大幅に削減できたことも重要な成果です」と中村氏は話します。
将来の展望
今後の衆議院議員選挙を見据えてさらなるシステム拡張と改善にチャレンジ
2010年7月の参議院議員選挙において新調査集計システムは、期待どおりの役割を果たすことができたと言えます。しかしながら、衆議院議員選挙となると今回の参議院議員選挙を上回る大きな負荷が新調査集計システムに加わることになります。
「衆議院の解散のタイミングによって、次回は衆参同日選挙となることも十分に予想され、その場合のシステムの負荷はさらに大きなものとなります。一方では選挙制度の改正なども見込まれており、選挙調査業務で新たなニーズが発生しつつあります。また、現在、調査員からのデータ収集の主な手段として使っている携帯電話の進化に合わせ、Webサイトやアプリケーションの改善を図っていく必要があります。こうした変化に対応し、より効率良くパフォーマンスを増強したり、容易にアプリケーションの追加開発を行ったりできる環境づくりを進めていきたいと考えています。将来的な構想としては、プライベート・クラウド化や、一部でパブリック・クラウドを活用するハイブリッド・クラウドによるさらなるコスト削減も視野に入れています」と大杉氏は今後を見据えています。そうした中で、ライトウェルやIBMに対する期待もますます高まっています。
「今回の新調査集計システム開発にあたり、ライトウェルにはトラブルやプログラム修正などの問題にも素早く的確に対応していただき、とても感謝しています。とはいえ、新調査集計システムはまだ参議院議員選挙を1回経験しただけであり、本当の意味での価値を発揮するのは、これからということになります。ライトウェルには、今後もSIのプロフェッショナルならではの奥の深い問題の解決方法や、手抜かりのないシステム保守を提供していただけたら望みます。また、今後新たなお願いをする機会があった場合にも、ライトウェルとIBMの両社がベスト・チームを組み、最大限のコスト・パフォーマンスを私たちに提供してくれることを期待しています」と大杉氏は話します。
この言葉を受けて新里氏は、「それはライトウェルとしても望むところ。どうか安心して私たちにお任せください」と意気込みを新たに答えます。
共同通信社とライトウェル、そしてIBMの緊密な連携によって、新調査集計システムは絶え間ない拡張を続け、今後の選挙報道に革新をもたらしていきます。
お客様情報
お客様名:
一般社団法人共同通信社
所在地:
〒105-7201東京都港区東新橋1-7-1汐留メディアタワー
URL:
1945年、正確公平な内外ニュースを広く提供し、国民の知る権利に応えるとともに国際相互理解の増進に貢献することを目的に、全国の新聞社、NHKが組織する社団法人として設立。その後、国内外のニュースを取材・編集して新聞社をはじめ、民間放送局や海外メディアに記事、映像を配信している。2010年4月1日に法人格が社団法人から一般社団法人に移行し、さらに発展性のあるニュース活動が可能になったほか、株式会社 毎日新聞社が52年ぶりに共同通信社に再加盟した。なお、関連会社が運営する47NEWSWebサイトのページビューは、月間で1億1000万PV(ページビュー)を超えるまでになっている。
ビジネス・パートナー
企業名:
株式会社ライトウェル
所在地:
〒111-0041東京都台東区元浅草3-18-10上野NSビル
URL:
住友重機械工業の情報システム会社として1986年に設立。グループ内のIT化を サポートする中で培ったノウハウを基盤として、機械・重工から電気・電子、その他の製造業、金融業、情報通信、流通、公共などにビジネスを拡大してきた。コスト削減を実現するサーバーの仮想化・統合化技術を用いたシステム構築、業務変 革を目的としたグループウェア・ソリューションの見える化、難しい局面で経営判断を下す際にサポートを行う意思決定支援システム、システム開発をより効率的かつ高い品質で行うための開発環境技術など、広範囲なソリューションを展開 している。また、今後さらなる発展が見込めるモバイル端末に関しても高い技術力を有している。
製品・技術情報
ハードウェア
ソフトウェア
参考資料
- お客様導入事例 一般社団法人共同通信社(1.01MB)この事例のPDFがダウンロードできます。
- 事例:一般社団法人共同通信社 株式会社ライトウェル様のWebサイトの事例ページです。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
IBM、IBMロゴ、ibm.com、DB2、Rational、System Storage、TivoliおよびWebSphereは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corporationの商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点でのIBMの商標リストについては、www.ibm.com/legal/copytrade.shtml(US)をご覧ください。
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