掲載日 2011年7月1日
株式会社ユタカ技研(以下、ユタカ技研)は、本田技研工業グループの一員として、高い生産技術で環境に優しい駆動系・排気系・制動系の部品を製造する自動車部品メーカーです。近い将来に発生が予想される東海地域の地震に備え、生産活動の要となるITシステムを本社のある東海地区から栃木にある開発センターにいったん移管し、その後外部のデータセンターへと移管するプロジェクトを実施していました。ところが2011年3月11日に東日本大震災が発生したことから、急遽外部のデータセンターへの移管を前倒しで実行することとなりました。日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)の統括コーディネイトの下、同社では震災発生からわずか1カ月でITシステムの移管を完了しています。
目次
お客様ニーズ

株式会社ユタカ技研
システム部部長
山戸 福造氏
震災対策プロジェクト実施中に東日本大震災を経験。急務となった事業継続対策
浜松に本社を構えるユタカ技研では、近い将来に高い確率で発生するといわれている東海地域の地震からITシステムを守るため、浜松からのITシステムの移管プロジェクトを計画していました。その最初のステップとして、2010年8月ITシステムを開発拠点のある栃木へと移管し、時機を見て外部のデータセンターへと移管する2ステップでの移管プロジェクトを計画していました。このシステム移管について、システム部で部長を務める山戸 福造氏は次のように説明します。
「将来的にはシステム全般を災害リスクの低いデータセンターでの運用に切り替える必要があると考えていましたが、基幹システムであるAS/400は社内に残す予定でした。ハウジング・コストの問題が一番ですが、運用面についても課題がありました。外部データセンターに移したときにリモートでオペレーションできるのか不安でした。そこで、システム全般をいったん栃木の開発センターに移し、その後Web化を進めてAS/400を除き、外部データセンターに移すことにしました」(山戸氏)。
この移管計画には、もう1つサーバーおよびディスクの集約化という別の目的もありました。運用効率の向上、バックアップ機の確保とメンテナンス・コスト削減を目指し、既存10ラックから8ラックへの集約化を実現しました。また、ディスクの増強と集約により、24時間以内のバックアップも実現しました。さらに、CO2の排出量を60%程度削減することにも成功しています。
栃木開発センターへのシステム移管は2010年8月に完了しましたが、2011年3月11日、東日本大震災が発生し、栃木開発センターも被災してしまいました。幸いITシステムの機材に大きな被害はありませんでしたが、震災直後から発生した停電とその後の計画停電がシステムの運用に大きく影響しました。こうした事態を受け、同社では震災の翌日である3月12日にはシステム移管の検討を始め、3月19日には移管への方向性を決定しています。また、「可及的速やかに」移管することから、ゴールデンウィーク前に移管が完了していることと、移管のためのシステム停止期間を最小限に抑える(週末+2日間以内である)ことを目標に、移管計画を策定しました。
ソリューション
高速・高品質なネットワークと耐震性に優れたデータセンターへの迅速な移管
ユタカ技研では移管先のデータセンター選択にあたり、1.電力供給に懸念のある関東地方ではないこと、2.東海沖地震の可能性を考慮して中部地方ではないこと、3.高速で高品質なネットワークが3週間以内に敷設可能であることという3つの要件を提示し、IBMをはじめとするいくつかの協力会社に相談を持ちかけています。IBMではユタカ技研から提示された要件を考慮し、神戸市中央区のデータセンターへの移管を同社に提案しました。
「震災2日後の3月13日にIBMに相談したところ、3月15日には神戸のデータセンターが利用できる旨を説明され、資料も提示されました。今回の外部データセンターへの移管では、何よりスピードと確実な稼働を一番に考えました。IBM以外にもいくつかの会社を候補に挙げていたのですが、提案内容を含め最初の計画段階から実際の移管、さらには移管後の最終的な確認まで一気通貫でサポートできる力はIBMが一番だと判断しました」(山戸氏)。
神戸へ移管する方針を決定した同社は、移管プロジェクトを4月1日にキックオフ。さらに詳細実行計画を8日までに立案し、経営会議の了承を得た上で、16日・17日の週末2日間でシステムの移管を完了しました。つまり、実質1カ月という短期間で、ITシステムの拠点を移管したことになります。また、AS/400は外部のデータセンターには出さず栃木に残すことが当初の予定でしたが、震災後の状況から栃木に残すことはできないと判断し、AS/400も含むすべてのITシステムが外部データセンターへの移管対象となりました(表1)。
「今回はとにかくスピードと確実性を重視していましたので、栃木にある機材をそのまま移管させて稼働させることを優先しました。AS/400がたまたまリース更新の時期を迎えていたため、新旧のマシンが同時に存在していたことも幸いしました。新しいマシンを先に神戸データセンターへ設置できたことは、スムーズな移管に大きく寄与したと思います。今回は決算期とも重なり、ミニマムの業務停止が至上命令でしたが、週末2日間の停止で乗り切ることができました」(山戸氏)。
さらに、今回の迅速な移管を成功に導いた要因を山戸氏は次のように分析しています。
「1つは、以前から災害対策や事業継続対策を準備し、さらに状況に応じて順次見直しを続けてきたことだと思います。国内ネットワークの切り替えやIPアドレスの事前設定等事前の準備がなければ、これほど短期間で意思決定し、実行に移すということはできなかったと思います。もう1つの要因は、栃木開発センターへの移管の際、実はコーディネーターが不在で、パートナーが並列になり苦労した経験が大きかったと思います。前回の反省を生かし、今回はIBMに全体を統括するコーディネイトをお願いし、スムーズな移管につながりました」(山戸氏)。
導入効果
事業継続性の担保とコスト削減の両立に成功
ユタカ技研では、東日本大震災によって計画が大きく前倒となったものの、ITシステムを外部のデータセンターに移管したことにより、災害時にも高い事業継続性を担保しました。また、移管に伴うシステム構成の見直しにより、維持・管理コストの削減や電力消費の抑制によるCO2削減にも成功しています。
また、当初は運用面での不安から栃木に残す計画であったAS/400も、更新によってシンプルな構成となり、オペレーションに伴う不安が大幅に軽減されたことから同時に外部データセンターへの移管が実現し、順調な稼働を続けています(図1)。
将来の展望

株式会社ユタカ技研
取締役
事業管理本部 兼
人事・総務部長
一柳 忠司氏
データセンター移管を機に、高い事業継続性の実現とグローバルでのシステム一元化を加速させる
データセンターにITシステムの拠点を移管したユタカ技研では、次なるステップとしてデータセンターという環境を生かし、IT戦略である「グローバルIT基盤の構築」を加速させ、世界中どこからでも同じように利用できるようにしたいと考えています。また、同社では海外に展開する生産拠点とのITシステムの統合を図り、グローバル・ガバナンスの発揮も加速させたいと考えています。
「今回、AS/400も含むシステム全般のデータセンター移管が完了し、災害リスク対策という意味では、打つべき手は打てたのではないかと思っています。次はこの環境をいかに早く使い切るかということが求められます。今後のクラウド化も視野に入れながら、この環境を有効に活用しIT戦略を加速していきたいと思っています」(山戸氏)。
そのIT戦略の1つは、本社と海外に展開する生産拠点とのシステム統合を目指しています。取締役 事業管理本部長 兼 人事・総務部長 一柳 忠司氏は、今後のシステム統合について次のように説明しています。
「現在、海外の拠点では個別のシステムが稼働していますが、やはりそれらが一元化さなければならないと思っています。例えば今米国の工場でどんな部品が幾つ足りないのかという情報が入った場合、それに対して中国で生産されている部品の在庫が幾つあり、いつまでもつのか、生産計画はどうなっているのかといった情報が連携され、瞬時に『見える化』できるようなシステムの統合と活用を図ることが、これからのグローバル・ビジネスに求められると考えます」(一柳氏)。
ユタカ技研では、海外に展開する拠点のシステム統合を図り、その有効活用により本社機能としてのグローバル・ガバナンスを発揮したいと考えています。
「われわれのビジネスの主体は、すでに日本ではありません。そうした状況において、ビジネスの方法もそれぞれの国や地域に適したやり方に合わせる必要があると共に、グローバルでの情報の一元化も必要です。こうしたローカルのビジネス慣習とグローバル管理との融合にITシステムを欠かすことはできません。われわれは今回のシステムのデータセンター移管で真のグローバル・カンパニーを目指すことの加速を図りたいと思っています。世界中で起こっていることを瞬時に正確に把握し、的確なレスポンスをすることは、グローバル・ビジネスの基本であるとともに、リスク対策にとっても最も重要なことだと思います。その上で互いが互いを補完しあえる環境を構築することが、結局は優れた事業継続対策につながっていくのではないでしょうか」(一柳氏)(図2)。
震災に背中を押されるような形で一気に進んだ今回のデータセンターへのシステム移管ですが、ユタカ技研ではこの環境の変化を次なるステップの好機ととらえ、真のグローバル・カンパニーへの道を加速します。
お客様の声
株式会社ユタカ技研 システム部 部長 山戸 福造氏
「提案内容を含めた最初の計画段階から実際の移管、さらには移管後の最終的な確認まで一気通貫でサポートできる力はIBMが一番だと判断しました」
株式会社ユタカ技研 取締役 事業管理本部長 兼 人事・総務部長 一柳 忠司氏
「ローカルのビジネス慣習とグローバル管理との融合にITシステムを欠かすことはできません。われわれは今回のシステムのデータセンター移管で真のグローバル・カンパニーを目指すことを加速したいと思っています」
お客様情報
お客様名:
株式会社ユタカ技研
所在地:
〒431-3194 静岡県浜松市東区豊町508番地の1
URL:
ユタカ技研は“Clean for the Future”のブランドスローガンの下、地球に優しい、環境に優しいモノづくり企業として、夢、創造、チャレンジ、感動をキーワードに次の飛躍に向けて果敢に取り組んでいます。
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