掲載日 2011年9月14日

京都大学医学部
附属病院京都大学医学部附属病院(以下、京都大学病院)では、京大病院総合病院情報システム(Kyoto university hospital INformation Galaxy:以下、KING)のバージョンアップを機に、デスクトップ・クラウドを採用。電子カルテ・システムをはじめとした各種医療システムをサーバー側に集約し、研究室の端末からも、病院情報システムとほぼ同等のスペックの電子カルテ・システムを利用できる環境を構築しました。利便性向上とともに、データをすべてサーバー側で管理することにより、セキュリティーを強化。またシステムのパフォーマンス向上や端末管理コスト削減も実現しています。
目次
お客様ニーズ

国立大学法人
京都大学 講師
博士(保健学)
竹 村 匡 正 氏
診療とのバランスを取りながら臨床研究を積極的に推進
1899年7月、京都帝国大学医科大学が設立され、京都大学病院の歴史が始まりました。以来「患者中心の開かれた病院として、安全で質の高い医療を提供する」「新しい医療の開発と実践を通して、社会に貢献する」「専門家としての責任と使命を自覚し、人間性豊かな医療人を育成する」の3本の柱を基本理念に据え、診療、研究、教育を中心として事業を展開しています。2004年度からは国立大学法人となり、さらなる経営の合理化を進めると同時に、地域の医療機関との連携をより一層図っています。
国立大学法人京都大学 講師 博士(保健学) 竹村 匡正 氏は、同病院の大きな特色の1つは臨床研究を重視する姿勢にあると説明します。
「通常の病院では、診療に特化するというスタイルが一般的なのですが、京都大学病院では、臨床研究は診療行為と不可分の関係にあると考えていますので、両者のバランスを取りながら表裏一体となって推進しています」
ソリューション
ITシステムの更改を機に、デスクトップ・クラウドを導入
京都大学病院では、この臨床研究をさまざまな側面からサポートする仕組みを整えていますが、その中の1つがITシステムの活用です。京都大学病院におけるIT導入の歴史は古く、1970年代から始まっています。
「京都大学病院では、1970年に中央医療情報部門が設立されましたが、これは日本の大学病院では初めての取り組みになると思います。以降ITシステムの整備には積極的に取り組み、その核となるシステムとしてKINGが整備されました」(竹村氏)。
KING 3まではオーダーなどの事務系の機能が中心でしたが、2005年に行われたKING 4でのシステム更改を機に、電子カルテ・システム、映像配信システムなど、さまざまな医療系機能の充実が図られるようになりました。電子カルテ・システムはIBM統合医療情報システム(Clinical Information System:以下、CIS)ソリューションを採用。その他、オーダリング・システム、経営支援システム、リスク管理システム、経営支援システムが導入されています。
このようにさまざまなシステムがKING上で稼働するようになりましたが、各システムが個別に導入されたことにより、システム間の連携が課題として浮上してきました。
「CIS内のシステム間であれば問題なく連携できたのですが、異なるベンダーのシステム間の連携は不十分でした。そもそも、事務系のシステムは事務部門が担当し、メール・システムやWebシステムは医療情報部門が担当するなど、システムごとに担当する部門が異なっていましたので、システム間の連携という課題については後回しになって
いたのです」
このシステム間の連携をはじめとして、KINGに寄せられていたさまざまなニーズに応えるため、KINGのバージョンアップの準備が2009年4月より開始されました。そしてKING5の仕様を決めるため、以前よりKINGの構築、運用、管理を請け負っていた日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)に相談。そこで浮上したのが、デスクトップ・クラウドの導入でした。
「電子カルテ・システムのデスクトップ・クラウド化については、鳥取大学医学部附属病院が日本で初めて導入したタイミングでしたので、わたしたちとしても大いに注目していました。そしてセミナーなどにも参加し、電子カルテ・システムのデスクトップ・クラウド化に関する情報を収集していました。そこで分かったことは、セキュリティーは強化されつつ、情報共有などの利便性が向上するということです」
デスクトップ・クラウドの環境下では、電子カルテ・システムのアプリケーションやデータはすべてサーバー側に集約されます。電子カルテ・システムには患者の個人情報などが保存されるので、高度なセキュリティー対策が求められますが、デスクトップ・クラウド化されていれば、そうしたデータがPCなどの端末に保存されることがないため、端末から
の情報漏えいを防止することが可能になります。またすべてのデータをサーバーで管理することから、情報共有の環境も容易に構築することが可能になります。
導入効果

京都大学病院
デスクトップ・
クラウド環境図
臨床研究データの電子化のニーズに応え、利便性向上
こうして電子カルテ・システムなどのデスクトップ・クラウド化についての検討が本格化しましたが、そこで重要視したことは、デスクトップ・クラウド化そのものを目的とはしないことだと竹村氏は言います。
「デスクトップ・クラウド導入のメリットは理解したのですが、デスクトップ・クラウドの導入そのものを主目的としてしまうと、たとえ体感スピードが下がっても、無理やり導入しようということになりかねません。まずは対象システムごとに検証し、どこまでデスクトップ・クラウド化できるのかということを調べました」
こうして、KING 5の構築方針では、十分な端末数を確保しながら、セキュアに電子カルテ以外の情報を共有することも可能にし、業務コラボレーション、チーム医療にも貢献するとともに、多くの仕事を病院情報システム上で行えるようにしました。また、取り込めるデータは取り込み、外部との安全な接続によるサービスの展開も図るようにしました。
その中でもFileMakerの導入は、研究室からの大きなニーズに応えるものでした。
「研究室ではFileMakerを使っていましたが、電子カルテ・システムなどのデータが研究に必要になる場合は、再入力が必要になるのですが、両者が異なる端末に入っているので非常に手間がかかっていました。電子カルテ・システムは外来の端末を見なければなりませんが、FileMakerは研究室用の端末で使われていたのです。こうした事情から、両者を連携させることでこの手間をなくし、効率化したいというニーズは非常に高かったのですが、電子カルテ・システムとFileMakerをデスクトップ・クラウド化すれば、連携も容易にできるようになります」(竹村氏)。
このような検討を経てKING5の仕様が決定。その後行われた入札の結果、日本IBMが構築を請け負うことになりました。
「日本IBMは、以前からKINGを手掛けていたということだけではなく、鳥取大学における電子カルテ・システムのデスクトップ・クラウド化の実績もあります。そうした意味から、入札の結果、日本IBMに決まったことはとても安心しました」(竹村氏)。
デスクトップ・クラウド上で、安全なインターネット閲覧を実現
その後、具体的な設計が始まりましたが、その段階で新たな仕様が追加されました。それはWebブラウザーのデスクトップ・クラウド化です。京都大学病院では、ウイルス感染防止などのセキュリティー上の配慮から、閲覧可能なWebサイトに制限がかけられていました。そこで、Webブラウザーそのものをサーバー側の安全な環境内で稼働させ、その表示結果のみを端末に送るという方式により、あらゆるWebサイトを自由に安全に閲覧することができるようにしました。
「Webサイト閲覧に制限をかけるということは、セキュリティー上やむを得ないことだと認識していましたので、これを改善できるとは考えてもいませんでした。もちろん、当初はWebブラウザーのデスクトップ・クラウド化ということはまったく考えていなかったのですが、さまざまな検討を重ねてきて、ある時ふと気が付いたのです。デスクトップ・クラウド環境を実現するためのメインとなるSBC(Server Based Computing)サーバーはセキュリティー上の配慮からインターネットに接続することはできませんが、これとは別にインターネット閲覧用のSBCサーバーを設置すれば、自由にWebサイトを閲覧する仕組みが実現できるのです」
その後設計のフェーズが完了し、2010年8月から構築が開始。翌年1月にはデスクトップ・クラウドの稼働がスタートしました。
パフォーマンス向上とともに、Mac PC、iPadなどを追加サポート
稼働開始後の最初の感想は、電子カルテ・システムのパフォーマンスが向上したということでした。
「朝、電子カルテ・システムを起動する際は、プロファイルの送信などの処理を行うため、10分前後の時間を要していました。しかし、デスクトップ・クラウド環境では、その処理が必要ないため、すぐに起動します。また画像の転送時間も、SBCサーバーとCISサーバーの間の回線を強化した効果により、以前よりも短縮されました。当初デスクトップ・クラウドの導入を検討した際は、端末のパフォーマンスを落とさないか心配でしたので、逆に速くなったのはうれしい驚きでしたね。ユーザーからの感想も、とにかく速くなったというものばかりでした」(竹村氏)。
またアプリケーション管理の手間がかからなくなったことも大きな成果です。
「以前はアプリケーションのメンテナンスを行う場合、端末ごとに対応しなければならなかったのですが、デスクトップ・クラウド環境では、サーバー側に集約されていますので、一括で管理できるようになりました。これは管理する側としてはメリットが非常に大きなポイントといえます」(竹村氏)。
さらにApple Macintosh(以下、Mac PC)からも各種システムを使えるようになったことも大きなメリットとなっています。
「医療システムでは、Mac PC専門に作られているものもあり、病院においては、Mac PCにも高いニーズがあります。しかし、電子カルテ・システムなどをクライアント・サーバー型で構築する場合は、Windows PCに限定されているケースがほとんどですので、Mac PCを使うことはできません。今回構築したデスクトップ・クラウド環境は、Mac PCにも対応していますので、Mac PCの端末を今まで以上に有効に活用できるようになりました。
今ではどの端末からでもさまざまなシステムにアクセスできるようになりましたので、場所移動の手間も省け、利便性は飛躍的に向上しました。今後もさらに多様な端末に対応させていきたいと考えていますが、2011年8月にはiPadへの対応が開始される予定になっています」(竹村氏)。
- 端末のセキュリティー管理やアプリケーションのメンテナンスなど運用管理コストの削減が実現。
- 研究室の端末からでも病院情報システムと同じ電子カルテ・システムを活用できるようになり、データの二次利用など利便性が向上。
- 電子カルテ・システムのパフォーマンスが向上。
- インターネットの安全で自由な閲覧が可能。
- Windows PC以外の端末も利用可能。
将来の展望
電子カルテ・システム内のデータ二次利用を促進
今後の展望としては、電子カルテ・システム内のデータ二次利用の可能性をさらに追求していきたいと竹村氏は言います。
「今回FileMakerをデスクトップ・クラウド化したのですが、電子カルテ・システムとの連携については、現在、多くの診療科との話し合いを進めているところです。この連携について、日本IBMなどのベンダーに発注すれば、簡単に実現できるのかもしれませんが、電子カルテ・システム内のどのデータをどのように活用させるのかということにはさまざまな可能性があり、またセキュリティーの観点からどこまでを実現させるべきかという判断も必要になってきます。こうしたことは、病院内で判断するべきことだと思いますし、連携の方法についてもいろいろと試行錯誤を繰り返す必要があります。従って、連携の仕組みを作る作業も、病院内のスタッフが自ら行っていくという姿勢が大切であり、今後時間をかけてそれを実現させていきたいと考えています」
医療情報の二次利用については、FileMakerとの連携だけではなく、さまざまな形で活用できることが考慮され、今回のKING5へのバージョンアップ作業において、IBM WebSphereが導入されています。WebSphereを活用することにより、多様なWebサービスを構築し、さらに地図情報をはじめとした外部システムとマッシュアップした活用方法も可能になっています。こうしたWebサービスの実際の活用方法については、その是非も含め、今後、慎重に検討されていく予定になっています。
最後に竹村氏は、地域医療連携への展望について語ります。
「地域医療連携を促進するためには、情報の連携が重要になります。京都大学病院では、以前から情報提供の仕組みは整えていましたが、電子カルテ・システムの情報がサーバーに集約されたことにより、さらに速やかな提供が可能になります。こうした連携が促進されていけば、患者様の診療に大きな貢献をもたらしますので、さらにその取り組みを推進していきたいと思っています」
京都大学病院は、今後も最先端の仕組みを整備し、地域医療への貢献を継続していくでしょう。
お客様情報
お客様名:
京都大学医学部附属病院
所在地:
〒606-8507京都府京都市左京区聖護院川原町54
URL:
京都大学病院は、京都帝国大学医科大学として1899年7月に設立。以来「患者中心の開かれた病院として、安全で質の高い医療を提供する」「新しい医療の開発と実践を通して、社会に貢献する」「専門家としての責任と使命を自覚し、人間性豊かな医療人を育成する」の3本の柱を基本理念に据え、診療、研究、教育を中心として事業を展開しています。
製品・技術情報
サービス
- Smart Business DesktopIBMのデスクトップ・クラウドについての詳細情報は上記のWebサイトでご覧ください。
参考資料
- お客様導入事例 京都大学医学部附属病院(705KB)この事例のPDFがダウンロードできます。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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