掲載日 2012年2月8日

カブドットコム証券
株式会社カブドットコム証券株式会社(以下、カブドットコム証券)では、Twitterやmixiなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service:以下、SNS)から収集した膨大な情報を収集・分析するシステムを開発。その結果について株価の動向との関連を検証する取り組みを推進しています。収集・分析する情報は膨大な量に及び、しかも日々更新される情報を遅れなく処理する必要があることから、IBM InfoSphere BigInsights(以下、InfoSphere BigInsights)を導入し、分散処理による高速な収集・分析を実現しています。
目次
お客様ニーズ
お客様の投資成績向上を重視してさまざまなサービスを提供
カブドットコム証券は、1999年に設立(当時、日本オンライン証券株式会社:以下、日本オンライン証券)。その後2001年に旧株式会社三和銀行系列のイー・ウイング証券株式会社と合併したことを機に、カブドットコム証券に社名変更しました。以来、インターネット取引を専業とする証券会社として、「顧客投資成績重視の経営」の基本理念の下、個人投資家へ「リスク管理追求型」というコンセプトを掲げ、利便性と安定性を徹底的に追求した独自サービスと「新しい投資スタイル」を提供しています。
カブドットコム証券の経営基本方針について、同社 社長付 IT戦略担当 谷口 有近氏は以下のように説明します。
「証券取引において一番重要なことは、『損をしない』ことです。そして『損をしない』ということを真剣に考え、そのためにITをどのように活用するのかということに真摯に取り組んできた結果が、現在のカブドットコム証券の在り方につながっています。実際に証券取引で利益を出されているお客様の手法にはさまざまなものがあります。従って一概に『利益を上げる手法はこれだ』と言えないのですが、損をするケースはある程度パターン化されているということは事実です。そこでカブドットコム証券では、逆指値などのサービスを提供することにより、お客様が『損をしない』ためのサポートを推進しています」
ソリューション

社長付
IT戦略担当
谷口 有近氏
「ソーシャルメディア・センサー」によりインターネット上のSNSの情報を分析し、株価の動向との関連性を調査
さまざまなサービスを提供しているカブドットコム証券ですが、新たなサービス開発のために着目したのが、SNSの分析とその活用です。
「株価の変動というものは非常に面白いもので、さまざまな人たちがいろいろな方法で予測しているのですが、それでも確実な方法はありません。初心者の方には分かりづらいですし、専門家であっても大損をするということもあります。これは証券取引の最大の特徴といえるでしょう。そうした特徴を前提として『皆が言うことはおおむね正しい』という法則をサービスに活用できないかと常々思っていたのですが、そこで目を付けたのがSNSで書かれたことの影響力です」(谷口氏)。
SNSに着目したカブドットコム証券は、「ソーシャルメディア・センサー」の開発に向けて、SNSを分析するための具体的な方法の検討に入りました。そこで相談したのが日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)でした。
「当初は幾つかのベンダーの方に相談したのですが、SNSを分析して結果を数値化するための具体的な方法を提示していただいたのは日本IBMだけでした。そのための製品があるということももちろんですが、テキストマイニングや膨大なデータ処理などの実績を数多く積み重ねているからこそ、実現可能な提案をいただけたのだと思います。また、相談を受けていただいたIBMの方々は、豊富な経験をお持ちで、わたしたちが何をしたいのかということを的確にとらえたアイデアを提示していただけました。社内でシステムを作るという選択肢もあったのですが、統計や分析といった分野は専門の知識を必要としますので、要員を新たに育成するよりは、日本IBMにお願いする方が効率的でよりクオリティーの高い成果が得られると考えました」(谷口氏)。
SNS情報
分析システム
の概要
こうしてSNSの分析方法について相談を進め、テキストマイニングのツールとしては、IBM Content Analytics(以下、ICA)を活用することになりました。ICAはインターネット上の書き込みや文書などの非構造化情報から必要な情報を収集し、分類、分析までを一貫して行うことのできるツールです。大容量のデータであっても一括して分析を行うことができ、高度な構文解析機能により、高い精度の言語処理を実現して、情報活用を総合的に支援します。
また収集可能なSNSのデータは膨大な量に及ぶことから、InfoSphere BigInsightsを活用。InfoSphere BigInsightsはApache Hadoopに基づくフレームワーク上で、DWH(データ・ウェアハウス)並みの利便性を実現させたソリューションです。JavaベースのオープンなフレームワークApache Hadoopは、大容量データの効率的な分散処理、管理を実現します。
そして、SNS情報の収集および分析については、IBMのセキュアで信頼性の高いエンタープライズ・クラウド環境であるIBM Smart Business Cloud - Enterpriseを利用して行うことにしました。
「限られた予算の中で分析システムを開発しなければならず、自前で開発用のマシンを用意することは難しかったので、クラウド・コンピューティング環境を活用するということは、ごく自然の発想でした。ただし、将来的なシステムの在り方を考えると、すべてをクラウド上に構築することは難しいと思っています。日本IBMのクラウド・コンピューティング環境は、高いセキュリティーレベルにありますので、安全性という意味では心配していませんが、お客様情報などセキュアな情報を処理する部分については、社内のシステムに構築するつもりです」(谷口氏)。
こうした判断から、システムの役割分担としては、SNS情報の収集、分類、分析などの処理については、日本IBMのクラウド・コンピューティングで行い、その結果をカブドットコム証券内のシステムに受け渡し、その後社内システム上で株価変動との照合やお客様の行動分析とひも付けるといった処理を行うということになりました。
導入効果
46銘柄、約43,000のキーワードを設定し、収集精度を上げるための検証分析を実施
その後SNS情報分析の取り組みについて社内で承認され、2011年9月から検証分析が開始されました。システムはInfoSphere BigInsightsとICAを活用する以外に、データ収集の部分などについて若干の追加開発を行い、検証のための環境が整いました。
検証の方法としては、収集対象となる銘柄を46社、その銘柄に関連するキーワードを約43,000に絞り込んで収集データの精度を上げていく試みから始めました。キーワードが記述されているTwitterの情報を収集して相関分析を行い、間違いなくその銘柄に関する記述がなされているのか、すなわち「真水度」を判別します。
検証の初期は、相関分析結果について人が確認(目検)し、真水度が低ければ、分析に使う辞書をカスタマイズすることで真水度を上げていく調整が行われました。こうした調整を繰り返しながら、情報をさらに収集し続け、銘柄別の相関値を計算します。このデータを一定期間蓄積すれば、Twitterでつぶやかれているキーワードと株価の変動と照らし合わせることが可能となり、両者の関連を調べるなどの検証を行うことができます。
「現在の検証の進ちょくとしては、キーワードに基づいたTwitterの情報を収集できるようになった段階にあります。ここまで検証してきた結果、Twitterの話題に上がりやすい銘柄となかなか取り上げられない銘柄があるということが分かりました。これから株価の動向との関連について検証を進める中でさらに新しい発見があるかもしれませんが、現時点で集められたデータを見るだけでも、分析結果をどのような見せ方をすればお客様に喜んでいただけるかということを検討することができます」(谷口氏)。
将来の展望
大規模データの分析手法に習熟し、さらに広い分野での活用を検討
今回の検証分析は、46銘柄に絞り込んで実施しましたが、それでも日々収集される情報量は膨大で、4台のサーバーをフル稼働させて分散処理を行っています。今後本番稼働を迎えるに当たっては、最大で約3,600銘柄を収集・分析することも考えられます。また収集対象としているTwitterは、現時点では1日約900万行ですが、これを約3,400万行まで拡大することが可能です。これらすべてを分析すると単純計算で1,200台程度のサーバーが必要になります。実際にはこれからの検証結果によって、有効性が高いサービス提供につながる手法を見極め、そのために必要となる規模で行うことになりますが、いずれにしてもより大規模なデータを扱うことになります。こうした大容量のデータ処理であっても、高い拡張性を持つ InfoSphere BigInsightsを活用しているので、マシンを追加するだけで、柔軟に対応することが可能です。
「このように超大量といえるデータを扱う経験はなく、社内での認識も浸透していませんので、この取り組みを社内で説明するのに苦労しました。これまでのデータ・ウェアハウスやBI(Business Intelligence)といった手法はありましたが、これらは使い手に高いリテラシーが要求されるものでした。カブドットコム証券では、事務職も含めたほぼ全社員が情報処理技術者資格を取得しているほど、社員のITスキルの向上に努めていますが、それでもこの分野のノウハウには通じている社員は少数です。こうした大容量の情報から何を得ることができ、それをどのようなサービスに生かしていけるのかということを発想するためには、この分野の技術を把握している必要があります。そして今回InfoSphere BigInsightsを活用した環境が整ったことは、そうした知見を社内に広めるためにも効果的なことだと思います」(谷口氏)。
お客様の声
モバイル・デバイスでも分かりやすいように表現方法を工夫してサービスを提供
今後はさまざまな検証を続けながら、SNSの分析結果を活用したサービスの具体化を検討することになりますが、サービス検討に当たって重要なポイントを谷口氏は以下のように指摘します。
「こうした分析結果をどのようなサービスとして提供するにしても、お客様にとって便利でかつ目を奪うような新しい体験として提示することが重要になります。現在ではスマートフォンなどのモバイル・デバイスでサービスを活用できるようにすることが求められますので、大量の統計データをこの小さな画面の中でどのように表現するのかというアイデアが必要になります。すでに各種サービスをモバイル端末で活用できるように提供していますので、SNS関連の情報についても同様に工夫していきたいと思っています」
最後に谷口氏は、こうしたサービスの提供が新たな顧客創出につながるのではないかという期待を述べます。
「株の取引は専門的な知識が必要など、一般の方には高い垣根があると思われがちです。そこで、リスク管理をはじめとした金融の仕組みを容易に理解できるサービスを提供すれば、株取引に対して感じていた垣根を下げることにもなり、安心して始めていただけるようになると考えています。そしてユーザーの裾野が広がってくれば、証券業界の活性化にもつながりますし、さらには日本経済の発展にも貢献できるのではないでしょうか」
今回のSNSを活用した新サービス開発は大きな成果を生み出すと期待されます。今後もさらなる検証とサービス化の取り組みが継続され、2012年には具体的なサービスの提供につなげる予定になっています。カブドットコム証券は、SNSに限らず、さまざまな情報の新しい活用を開発し、さらなる成長を続けていくでしょう。
お客様情報
お客様名:
カブドットコム証券株式会社
所在地:
〒100-0004東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館6F
URL:
1999年に設立されたカブドットコム証券株式会社は、2001年にイー・ウイング証券株式会社と合併。以来、インターネット取引を専業とする証券会社として、「顧客投資成績重視の経営」の基本理念の下、個人投資家へ「リスク管理追求型」というコンセプトを掲げ、利便性と安定性を徹底的に追求した独自サービスと「新しい投資スタイル」を提供しています。
製品・技術情報
ソフトウェア
サービス
- BAO(ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション)散在する膨大な情報の分析と将来予測でビジネスを最適化
参考資料
- お客様導入事例 カブドットコム証券株式会社(668KB)この事例のPDFがダウンロードできます。
事例は特定のお客様での事例であり、すべてのお客様について同様の効果を実現することが可能なわけではありません。
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