
情報を提供する側とされる側の間に、境界線が引かれていたインターネットの世界が大きく変わり始めました。変化の一つは、ブログやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)など、コンテンツの開発にユーザー自身が関わることによって成立するConsumer Generated Media(CGM)と呼ばれるタイプのサービスの急増です。SNSと同様、ユーザー自身が発信するレビューや評価によってコンテンツを構築し、第三者が必要な製品の評判を知ることができるサービスは、参加するユーザー数の増加によって価値が高まる「ネットワーク効果」を持つことも特徴です。そして、これらの新技術を活用した新しいインターネット・ビジネスを展開する新興企業が続々誕生してきました。
このような新技術は、「Web 2.0」と呼ばれることもありますが、共通しているのは、ユーザーが提供した情報が蓄積され、全体として巨大な「集合知」が構成されている点です。ユーザーの動きによってサービスの内容が左右される、最新ネット・ビジネスの世界に求められる機能は、凄まじいサイクルで変化しています。この新しい世界で、蓄積され続ける集合知を柔軟に活用したNo.1企業となるためには、一番求められているのは何でしょうか。
CGMのような新時代のサービスは、情報提供のスタイルが変化しているだけではありません。技術的な大きな変化が中核になっているのです。その一つが、「XML」というデータ形式・規格の急速な普及なのです。ブログで使用されている技術(トラックバック、RSSフィードなど)やWebサービスではXMLが一般的な言語です。従来のインターネットのサイトは、レイアウト記述を中心とするHTMLという言語で記述されていましたから、「ホームページ」という名のとおり、データはページ単位でした。しかし、XMLの時代に入った現在は、テキストや画像、音声、プログラムなどのデジタル・データに加え、データについてのデータである「メタデータ」などに意味を加えることで、一個人でも「部品」として自由に利用できるようになっているのです。
図1 DB2® 9のXMLデータ保管イメージ
ユーザーによる商品レビューの口コミサイトとして高い人気のあるサイトのひとつが、2006年末に開設された「モノペディア(http://monopedia.net)」です。PCや家電から化粧品や生活雑貨まで、さまざまな商品やサービスに寄せられたユーザーのレビューや意見、体験談などが集約されているので、商品購入時の不安を和らげてくれるサイトです。新製品のレビューをユーザーに寄せてもらうためには、運営側が当該商品掲載ページ上に詳細な商品スペックを表示するシステムを構築する必要があります。PCと化粧品では、スペックを表示するための属性は全く異なっている上に非定型のデータです。どのような形で属性が追加されるかの予測も難しい上、データの追加や変更への急な要望に柔軟に対応するには、厳密な構造を前提にデータを格納していかなければならないリレーショナル・データベース(RDB)だけでは問題が多かったのです。
モノペディアを運営している株式会社ネットプライスインキュベーションは、タグを使ってデータを格納する、つまり半構造化データであるXMLの構造を、RDBのテーブル列の代わりに利用することで、この問題を解消しただけでなく、使いやすくメンテナンスが容易な集合知のシステムを構築することができました。もちろん、トランザクションの信頼性やパフォーマンスの高さ、厳しいセキュリティなど、RDBのメリットを活かすためには、RDBのデータもXMLも使用できるハイブリッドなデータベースが必要だったのです。そこでモノペディアは、商品や会員に関するさまざまな属性のデータをXMLデータに変換し、他のマスタデータとともに「DB2 9」の特徴の一つであるXMLデータを最適に格納・処理する機能――「pureXML™」機能を使って管理しているのです。
一般的なRDBは、運用中に一回作成したデータ構造を変更することが困難です。しかし、DB2 9のpureXMLは、スキーマ(データベースの構造)が必須ではなく非定型のデータでも扱えるため、XMLデータベースに格納されているデータの構造変更を簡単に行えるのです。DB2 9は、RDBデータとXMLの両方のデータを使用できるという高い柔軟性を持つことが特徴です。モノペディアは、この機能を利用して、仕様の最終決定段階以前に開発を進めることや、途中でデータ構造が変化したとしてもチューニングの必要ないシステムを容易に構築できたのです。DB2 9の採用決定から運用開始までは、わずか3週間という短期間でした。株式会社ネットプライスインキュベーションmonopedia事業部の今井剛氏は「あくまで感覚的な数字ですが、作成したテーブル数は想定の1/4ですみましたし、テーブル設計にかかった工数も全体の開発工数も半分程度でした」と語っています。
図2 DB2 9による開発工数削減イメージ
Google Mapなどの地図データと郵便番号データを対応させるサイトや、特定のキーワードに関するブログとオンライン・ショッピングモール上の製品を同時に表示させるサイトなど、複数の異なる提供元が公開しているアプリケーションやコンテンツを複合させて新しいサービスを形作る「マッシュアップ」と呼ばれるWebサービスも急速に発展してきました。マッシュアップのためのアプリケーション・プログラム・インターフェス(API)を公開する企業も増えてきています。そして、マッシュアップのサイト開発者に大きな注目を集めているのもハイブリッド・データベースなのです。
開発者達からXMLも扱えるハイブリッド・データベースが注目されているのは、WebサービスやWeb APIで公開・提供されているデータの大半はXMLだからです。格納するデータ形式も同じXMLであった方が、はるかにデータを柔軟に扱え、開発を迅速に進められるのは自明です。また、RDBよりもpureXMLの方が、パフォーマンスが高いことも注目される理由のひとつです。例えば、RDBで複数のテーブルを連結するケースなどは、1つのXMLカラム(列)にまとめた方がパフォーマンスもスケーラビリティも大幅に向上しますから、プログラマーは短期間に容易にアプリケーションを構築(アプリケーション・アセンブリ)できるのです。あくまでシステムの設計が主体で、データベースは、そのコンセプトにあわせて開発していくというスタイルから、データベース開発者自身が自分のアイデアを活かして、迅速にデータベースの開発を行えることがハイブリッド・データベースの最大の特徴なのです。


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