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グローバリゼーションの新潮流、求められるリーダーの「決断と実行」

LEADERS' INSIGHT リーダーの皆様のための新たな洞察

庄司 義人氏の写真
庄司 義人氏
ヤマト運輸株式会社 財務部長
日々、膨大な数の宅急便を取り扱うヤマト運輸では、それを支える経理業務の量も極めて大きい。長年バックオフィスの改革に取り組んできた同社は、さらなる効率化を目指して2009年に日本IBMとのビジネス・トランスフォーメーション・アウトソーシング(BTO)契約を結んだ。これにより、経理6業務を中国・大連にあるIBMグローバル・デリバリー・センターに移管。大連側での処理率は順調に増え続けており、ヤマト運輸は目標どおりのコスト削減を実現している。

事務処理が膨大なバックオフィスさらなる成長を支えるために改革を継続

宅急便というビジネス・モデルを創造し、さまざまな新サービスによって市場を切り開いてきたヤマト運輸。次の飛躍に向けて、同社はさまざまな施策を打ち出している。その第一は、変化する顧客ニーズと社会状況に対応し、お客様の満足を高めることである。その一例が、法人顧客に対する物流ソリューションや個人顧客の利便性を高める会員制サービス「クロネコメンバーズ」であり、「宅配」から「個配」へのサービス内容の高度化である。

また、現地市場を開拓するとともに、ボーダーレス化する物流ニーズに対応するために2010年1月には中国・上海市とシンガポールで宅急便事業を開始した。この2都市を足掛かりに、同社は今後も海外事業を積極的に拡大する方針だ。

こうした取り組みの一方で、成長に伴い増加する事務量に対応し業務品質を向上させるためヤマト運輸は集配や事務処理の改革を継続的に進めてきた。同社財務部長の庄司義人氏はこう説明する。「どのようなオペレーションが最も効率的か、どうすればお客様と当社が共にメリットを享受することができるかを考えながら、集配改革やバックオフィス改革を進めてきました。取り扱う宅急便の個数が多いのでその事務処理業務も膨大。その効率化は、私たちにとって大きなテーマです」

集配に伴う経理業務を3段階のステップで効率化・標準化

2000年以降、ヤマト運輸は3つの段階を経てバックオフィス改革を推進してきた。それは業務の標準化と表裏一体の取り組みだった。

第1ステップは、2002年ごろに実施された事務管理センターへの業務集約である。当時、全国に2,500カ所ほどあった集配拠点を5,000カ所へと倍増する構想が持ち上がり、従来の仕組みの見直しを迫られた。庄司氏は、「それまでは2,500人の経理担当者を、各拠点に配置していました。5,000拠点になったときに同じやり方をしていたのでは、5,000人の担当者が必要になります。それでは非効率ということで、全国に69カ所の事務管理センターを設置して業務を集約しました」と説明する。

同時にIT化推進に伴い、事務処理のプロセスを全量チェックから例外チェックに変更した。具体例を示すと次のような流れになる。

宅急便のセールスドライバー(SD)は個人から引き受けた宅急便の運賃、代金引換の荷物を届けたときの品代金など、日常的に現金を扱っている。一方、現金に関わるデータは、SDの持つポータブルPOS(PP)という端末にも入っている。実際の現金とPPのデータを突き合わせて、一致すれば自動的に次の会計プロセスに進むが、アンマッチの場合は人手による確認が行われる。

あるいは、金融機関を通じて顧客企業から振り込まれる現金のチェック。請求金額と合致していれば自動処理されるが、そうでない場合にはやはり人手による業務プロセスを経なければならない。こうした手間のかかる業務を69の事務管理センターに移管することで、ある程度の業務の標準化が実現した。その標準化レベルをもう1段階引き上げたのが、第2ステップの内部統制対応への取り組みだった。

「A拠点では認められていることが、B拠点では認められないということでは内部統制上、問題があります。共通のルールによって、すべての業務を運営する必要があります。とりわけ、経理関係業務の標準化は非常に重要です」と庄司氏は言う。

そして、このように事務処理の効率化と標準化を進めてきたヤマト運輸がさらなるステップとして決断したのが、日本IBMとのBTO契約に基づく中国へのアウトソーシングである。実際に業務が移管されたのは2009年10月のこと。事務管理センターが担ってきた経理業務の中の6業務を、中国・大連にあるIBMグローバル・デリバリー・センターが担うこととなった。

信頼関係とグローバルなサービス提供力で日本IBMをBTOパートナーに選定

実はヤマト運輸では、大連へのアウトソーシング以外の選択肢も検討していた。それは国内で事務管理センターを集約するという案である。ただ、「その場合、人材や設備を自前で用意する必要がある」(庄司氏)などの理由から見送られたという。

大連へのアウトソーシング対象となった業務は、出納管理と未収管理に関する6業務である。その中には、先に説明した入金アンマッチ処理などが含まれる。対象業務の選定は、庄司氏によると「手間がかかる業務で、お客様とのかかわりが直接生じないもの」という基準で行われた。ただ、業務の線引きは簡単ではなかったようだ。

「当社内で経理業務はビジネスの根幹を支える業務と考えられていました。その業務を外に出してしまえば『ノウハウがなくなってしまうのではないか』『空洞化が起きるのではないか』と、多くの経営陣が懸念を示していました。また、『私たちの工夫で生産性を向上させることが難しくなる』という意見もありました」と庄司氏は振り返る。

ヤマト運輸内部でアウトソーシングの検討が始まったのは2008年の6月ごろ。その後、庄司氏たちは半年ほどの時間をかけて、経営陣をはじめ、社内関係者と議論を重ねたという。「大連で実行した業務をきちんと当社で確認した上で会計プロセスに回す。また、これ以上生産性向上の余地が少ないと思われる業務を対象とする。そんな方向性を示しながら社内を説得しました」と庄司氏。もちろん、BTOそのものの利点も訴えた。

「中国への移管によってコストを抑えられるだけでなく、業務の標準化を一層進めることができる。これら2つの観点でBTOには大きなメリットがあると考えました」と庄司氏は語る。

また、社内にはチャイナ・リスクを心配する声もあったようだ。この点について庄司氏は次のような見方を示している。「万一のことがあれば、大連の業務をインドなど別の国に移管する必要があるかもしれません。それができるのもIBMでした」

日本IBMがパートナーに選ばれた大きな理由がここにある。日本IBMにはヤマト運輸の情報系システム構築を支援してきた実績もある。こうして築かれた信頼関係とグローバルなサービス提供力が、BTOパートナーとして日本IBMが選定される決め手になったのである。

【図:ヤマト運輸のバックオフィス改革の概念図】

業務の流れを表した図

500人で行っていた経理6業務を大連チーム250人が担う

ヤマト運輸が日本IBMとBTO契約を結んだのは2009年2月。それから8カ月ほどで大連センターでの業務がスタートした。その準備期間中には、大連から核となる人材が日本の事務管理センターに派遣された。そして業務を習得し、大連のチームにそれを伝授するという形でヤマト運輸のノウハウが移植された。

ただ、それだけでは十分とは言えない。プロジェクト全体の責任者である庄司氏をはじめ、ヤマト運輸の多くの関係者が大連を訪れて指導を行ったという。

「6業務の中には、細かく分けると数百の個別業務があります。そのすべてについて、『こういうことはありますか』とYes/Noを問いながら、最後に『このような場合はこうしなさい』という答えに突き当たるツリー状の表を作成しました。これは、業務プロセスを移管するための工夫の一例です」(庄司氏)

現在、大連では250人ほどのスタッフがヤマト運輸の6業務に携わっている。従来、ヤマト運輸の事務管理センターは69カ所合計で約2,000人を擁しており、そのうち500人が大連に移管した6業務に携わっていた。よって、大連では日本のほぼ半分の人数で同じ業務を処理していることになる。

「アウトソーシングがスタートした当初は多少苦労したこともありましたが、比較的早い段階で期待どおりのレベルのオペレーションが実現しました。業務処理のスピードなどは以前と同等のレベルですが、それを少ない人数で回しているのはさすがだなと感じます」と庄司氏は評価している。

経理6業務の80%超を大連で処理別領域のBTOも視野に入れて検討中

今回のBTOにより、ヤマト運輸は見込みどおりのビジネス効果を上げているようだ。「採用や教育コストなどの面を含めて、人材にかかわる部分で期待どおりの効果を実現できています。また、業務プロセスの標準化を一段と進めることもできました」と庄司氏。ただし、同社は人材解雇によってコスト削減を行ったわけではない。事務管理センターから集配拠点などへの配置転換などにより、フルタイムとパートタイムの従業員500人の人材は活用されている。

「14万人以上が働いている会社なので、毎年3,000人程度の入れ替わりがあります。事務管理センターの500人には人材不足の部門に移ってもらうことで、採用や教育などのコストを削減することができました」と庄司氏。アウトソーシングによるコスト削減に加えて、日本の人材の採用と教育を含めたトータルな最適化が実現されている。大連への業務移管が一段落して、庄司氏はプロジェクトを気に掛けていた社長のもとを訪れた。そして「とても順調です」と報告したという。

経理6業務のうち、大連側で行う作業の比率は着実に高まっている。2010年10月時点では、すでに80%超を大連側で処理している。これを90%程度まで高めるのが当面の目標だ。さらに、ヤマト運輸は6業務以外の経理業務、あるいは人事関連業務などのアウトソーシングも視野に入れて検討を重ねている。

【写真:IBM 大連デリバリー・センター】

ヤマト運輸は、それまで同社の事務管理センターで行っていた業務を「IBM BTO大連デリバリー・センター」にアウトソーシングし、コスト削減と標準化を推進。現在、大連では250人ほどのスタッフがヤマト運輸の6業務に携わっている。

概観とオフィスの写真

お客様情報

ヤマト運輸株式会社

宅配便のトップ企業。1919年(大正8年)、東京・京橋に大和(やまと)運輸として創業。1929年、東京―横浜間で日本初の路線トラック定期便を開始し、関東一円に拡大。1976年には宅急便を開始、以来、「ゴルフ宅急便」「クール宅急便」などの新サービスを次々と開発。2005年、ヤマトホールディングスに商号変更し、現在の持株会社に移行した。2010年1月にはシンガポール、上海に進出。宅急便ビジネス・モデルのアジアでの展開を開始している。

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