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グローバリゼーションの新潮流、求められるリーダーの「決断と実行」

LEADERS' INSIGHT リーダーの皆様のための新たな洞察

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対談の様子
日本を代表するエンターテインメント企業、バンダイナムコグループは「夢・遊び・感動」を世界中の人々に提供しようとグローバルな事業展開を強化している。その中核は面白いコンテンツであり、それを創造する人材である。同グループはどのようにして人材のパワーを最大化し、世界という舞台で存在感を高めようとしているのか。バンダイナムコホールディングス 代表取締役社長の石川祝男氏に、日本IBM 戦略コンサルティンググループ 執行役員 ヴァイスプレジデントの金巻龍一が聞いた。

国によって異なる消費者の好み 世界で通用する日本のコンテンツとは

石川 祝男氏の写真
石川 祝男氏
株式会社バンダイ
ナムコホールディン
グス 代表取締役
社長
金巻 多くの業界の方々から、「消費者がつかみにくくなった」という声を聞きます。ゲームや玩具といったエンターテインメント分野では、消費者はどのように変化しつつあるのでしょうか。

石川 一言でいえば急激に「狭く」「深く」なってきていると言えるでしょう。これに尽きます。特にゲームなどコンテンツ分野では、以前とは違って、次々とミリオンセラーが登場する時代ではなくなりました。広い層に受け入れられる大ヒット商品は生まれにくくなり、特定のファン層が強く支持するゲームや玩具が増えています。特定のファン層は数十万人という比較的少ない人数ですが、コンテンツの出口を広げることで市場の裾野は広がります。

金巻 顧客のニーズが多様化するとともに、その要求がますます厳しくなったということでしょうか。

石川 そう思います。ただ、ときには「たまごっち」のような一大ブームが起きることもあります。ある情報をきっかけに、「僕も欲しい」という流れが生まれて爆発する。

金巻 日本と海外の消費者の好みについてはいかがですか。その国の文化によって受け入れられるものは相当違うのでしょうか。

石川 違いは感じます。たとえば、米国でウケるヒーローにはミュータントが多い。スパイダーマンや超人ハルクなど、主人公はカッコいいという感じではなく、一種の怪物ですよね。

金巻 日本のコンテンツが米国市場でヒットするためには、どのような要素が必要でしょうか。

石川 大成功するとすれば、それは日本人の世界観やテイストが伝わったときでしょう。それを具体的に説明するのは難しいですね。逆に、米国や欧州の人たちの嗜好に合わせたコンテンツを日本人が創ろうとしても失敗するのではないかと思います。

金巻 映画の分野では黒澤明がそうかもしれませんね。単に日本を舞台にした特殊性がありつつも、見ている方はそれを超えてある意味普遍的なものを見ている。匠の世界に近い、こだわりのあるいろいろな手法やシーンに、世界のさまざまな映画関係者が影響を受けた。日本の珍しさがウケたわけでなく、その世界観がウケたというような。映画の世界ではそういうことが多いですよね。

優秀なクリエイターとプロデューサーの組み合わせをどれだけつくるかが勝負

金巻 龍一の写真
金巻 龍一
日本IBM GBS事業
戦略コンサルティン
グ 執行役員 ヴァイ
スプレジデント
金巻 消費者の好みが変化する一方で、メディア環境も変わっていますね。

石川 映像やゲームなどの分野では、パッケージ・メディアからネットワーク対応への変化の波が押し寄せています。無料のソーシャル・ゲームも急増しています。このスピードについていくのは大変ですが、その環境の中で育ってきた若い社員もいます。デジタルな世界に慣れた若手の感性をどのように生かすか。当社にとって非常に大きなテーマです。

金巻 感性と技術の双方でスピードが求められている。そういう意味では、若いうちから権限を委譲して、本人が面白いと思うことを自由にやらせる。それがビジネスの成長にもつながるということでしょうか。

石川 そのとおりです。「どうしてもこれをやりたい」と言う人間の周囲に、それに賛同する人間が集まって一つのものを創りあげる。そんな個性的な人間が集まったチームの集合体がバンダイナムコグループです。これは、先ほど指摘した市場の流れにも対応しています。大規模なチームで万人に受け入れられるものを創るのではなく、小さな集団がそれぞれ「これだ」というものを追求するのです。

金巻 日本が強みを持つモノづくりの分野では、業務を標準化して普通の人でもベテラン並みの仕事ができるようにするアプローチが一般的です。このような工業的な発想とはまったく違うやり方ですね。

石川 私たちが創るのは必需品ではなく、「なくても困らないもの」です。「あれば楽しいもの」、「欲しくなるもの」を創らなければなりません。電機メーカーや自動車メーカーとはかなり違うでしょうね。

金巻 そのコンテンツを創造するのは感性を持った人間。そのタレントをいかに見極めて磨くかが重要だと思います。そのタレントを教育で育てるのは難しい。先輩たちの経験を体系化して伝えようとしても、伝え切れない部分が残るでしょう。まったく新しい人事モデルを創造する必要がありそうですね。

石川 私たちのビジネスの中核はクリエイターです。良いコンテンツがなければ、その先の展開も期待できないでしょう。ただ、クリエイターだけでは不十分で、商売のセンスを持ったプロデューサーが欠かせません。優秀なクリエイターとプロデューサーの組み合わせをどれだけつくれるかが勝負です。

金巻 どんな顧客層に向けてコンテンツを届けるか。それを判断するプロデューサーの役割も大きいですね。

石川 私たちは出口戦略と言っているのですが、一つのコンテンツを多様な商品に展開して、できるだけ多くの顧客層に届けようとしています。コンテンツの出口はゲームや玩具、映像ソフトなどさまざまです。こうしたビジネス展開では、プロデューサーの力量がモノを言います。

バンダイナムコグループにおけるダイバーシティー・マネージメント

金巻 光るものを持った人材を採用する上で、何か工夫をしている点はありますか。

石川 最近は就職人気企業の調査でも上位にランクされ、多くの優秀な若者が当社の門を叩いてくれます。ただ、「このままでいいのか」とも感じていました。突き抜けた発想ができる人には、一般的な感覚から見ると変わり者と言われる人も多いものです。そこで、新卒採用の中で特別な枠を設けて、通常の入社試験ではパスしないけれど「何かやりそうな人」を採用しています。

金巻 朝顔は夏の花ですが、その種の発芽期は4月から11月くらいまでで、それは大きな季節変動に対応できるように、だと聞いたことがあります。昨今、ダイバーシティー・マネージメントがこれだけ重視されるようになった背景には、先が読めない時代のリスク管理という考え方があると思います。ただ石川さんの場合には、求められる多様性の幅も深さも、一般企業のそれとは比較にならないほど大きいということですね。

石川 才能のある人は、入社してすぐに「面白そうなヤツだ」と評判になります。ただ、そういう人を面接で発掘できるかというと、これが難しい。そういうクリエイターがヒットを飛ばせるかどうかはタイミングにもよります。同じようなことをやっていても、火がつくときとつかないときがありますから。

金巻 いわば、「偶然をマネージメントする」ということですね。試行錯誤の中から大型商品を生み出すという側面もあるでしょうし、偶然起きたことを見逃さずにヒットにつなげるという側面もある。人事と経営管理の両面で、高度なマネージメントが要求されると思います。ところで、社員の中には外国籍の人たちも多いのでしょうか。

石川 国内拠点では全体の中の比率は低いですが、かなり増えています。海外から日本に留学していた社員もいますし、数年前から海外での採用活動も行っています。社員の国籍はバラエティー豊かになりました。

金巻 グローバルな事業展開を一段と進める上で、そういう人たちの能力を生かす機会も増えそうですね。

モノづくりとコトづくりの強み、成熟文化の強みをいかに生かすか

金巻 日本の強みを生かしたグローバル化が盛んに議論されています。一般的にはネガティブな意味にとられることが多い「成熟化」ですが、石川さんのお話では、それこそが日本の武器になるということですね。人は工業製品の機能を買うだけでなく、サービスや味を求めてくる。日本食の微妙な味付けが海外でウケたり、白物家電にイノベーションを起こしたりなど、モノづくり大国といわれた裏にはすぐれた感性に裏打ちされたいわば「コトづくり」があったように思えます。

石川 そうですね。我々のビジネスは「夢や感動」という無形のものを売ることです。世界でいち早く成熟化を迎えた日本における日本人のそのテイスト。これが、今後、成熟化に向かうさまざまな国において認められるようになってくることを期待しています。日本のテイストを世界に訴える努力はこれからますます積極的に推進するつもりです。ただ、その一方で文化的な違いを無視することはできません。たとえば、格闘もののゲームなどでは、現地の人たちの好みに合わせて色やセリフをローカライズしています。場合によっては、信頼できるパートナーと手を組む必要もあるでしょう。2010年にアドバイザリー契約を結んだアヴィ・アラッド氏は「スパイダーマン」や「ハルク」といった大ヒット映画をプロデューサーとして手掛けた人物です。彼のような海外のプロフェッショナルとも協力しながら、新しい価値を創造していきたいと考えています。

通常のマーケティングではなく、顧客の今後の欲求を洞察する

金巻 先ほど「必需品ではない」というお話がありましたが、そこがゲームや玩具などのビジネスの面白いところでもあり、怖いところでもあるのでしょう。「こういうゲームを創って私を驚かせてください」と言う消費者はいません。通常のマーケティングは通用しませんね。

石川 確かに、大ブームの発想はマーケティング・リサーチからは生まれません。

金巻 世界中の消費者を調査しセグメンテーションして、「この市場のこの顧客層には、こんなコンテンツがウケるはず」といったアプローチではないわけですね。膨大な情報の中から顧客のニーズを汲み取るというよりは、顧客の今後の欲求を洞察する力が求められているのかもしれません。そんな能力を持った人はひと握りでしょう。やはり、最後は人ですね。

石川 そうです。個々の社員一人一人の感性を磨きつつも、少ない機会を確実に享受しながら脅威を排除するための企業としての仕組み、そしてその展開。冷静にグローバル戦略を描く必要があると感じています。世界のエンターテインメント産業を見渡せば、ハリウッドのような巨大なプレイヤーがいますし、アジア諸国は急速に力をつけています。特に、韓国や中国の技術的なレベルアップには目を見張るものがあります。

金巻 バンダイナムコグループはこれまで、30周年を迎えた「パックマン」のような世界に通じるコンテンツをヒットさせてきました。これからも、日本発のアイデアが世界中の人たちを楽しませる機会が増えることを祈っています。ハリウッドとは一味違った経営モデルが生まれつつあるようにも思います。今後のビジネス展開を興味深く拝見させていただきます。

お客様情報

株式会社バンダイナムコホールディングス

バンダイナムコグループを統括する持株会社。2005年9月のバンダイとナムコの経営統合に伴い設立。グループでは、玩具・プラモデルなどのトイホビー事業、家庭用ゲームソフト・業務用ゲーム機・映像ソフトなどのコンテンツ事業、アミューズメント施設やテーマパークの運営を行うアミューズメント施設事業を国内外で展開している。2010年からは、中期経営計画に加え、スピーディーかつ柔軟に変化に対応できるグループへの変革と、収益力向上・財務体質の強化を図る「リスタートプラン」に着手。「世界で存在感のあるエンターテインメント企業」を目指している。

いま経営のグローバル化は次の段階へ

世界規模での標準・統合化とグローバル最適で、新たな成長戦略を描く