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コンサルタントとして思うこと
コンサルティング・ビジネスとは、絶対に押し売りが通じない世界です。お客様が納得されなければコンサルティング・プロジェクトは成立しません。お客様の求められている経営課題とコンサルタントの提供スキルが合致した時に、初めてプロジェクトは成立し、かつ満足いただける成果が生み出せるものです。
私どものお客様にとって、ビジネスがグローバル化すればするほど、自社の得意分野を絞り込んで、その分野に特化していくことが重要となります。同様に、私どもも常にユニークなバリューの提供、つまり、「自分にしかできないことは何だろうか」、を考えることが必須となります。コンサルティングのテーマがコモディティー化したら、高いお金を払ってコンサルタントを雇う理由はなくなります。
私は20年近く日系大手企業にいたのですが、コンサルティング会社と一般事業会社の企画部門には一定の類似点があります。事業会社の企画部門の役割は、非日常業務によって社内ユーザーに価値を提供するという点で、コンサルティング会社の役割と似ています。大きく異なるのは、コンサルティング会社はひとつひとつのサービスに対して対価をいただくことで、サービスの良し悪しが厳しく問われることです。また、コンサルティングを専業としていることから、ベストプラクティス情報や方法論等のアセットの蓄積が可能であることも異なる点のひとつです。
鈴木健二さんの書かれた「気配りのすすめ」という本がベストセラーだったころ、「気配り」という言葉が嫌いでした。しかし、コンサルタントになってから、「気配り」の価値がよくわかりました。例えば、最終成果物を作成する際、お客様が役員会等で説明しやすいように、専門用語を多用することを避けたりするだけで、とても喜んでいただけることがあります。お客様のニーズを理解し、ちょっとした労力をかけるだけで、それが評価につながることがあるわけです。これが「気配り」であるならば、「気配り」も立派なバリューの源泉になり得ると思います。もっとも、内容にバリューがなければ元も子もありませんが。
最近のメモリアルプロジェクト
アジアに進出している国際的な企業が、他の企業のある部門を買収し、買収の結果、複数並存してしまったシステムを統合するための戦略策定を求められたケースが印象的でした。
アジアの複数の拠点にわたるシステム統合なのですが、もともと文化もビジネスモデルも異なる企業同士が統合されたわけですから、お客様のプロジェクト・メンバー同士のコミュニケーションが不十分な状況の中に我々は飛び込んだわけです。
本国の経営層やアジアの国々の責任者が、システム統合についての議論を始めたわけですが、当初はお互い疑心暗鬼で、事実を共通認識することも難しい状況でした。
我々コンサルタントは、そうした中、アプローチの設計、ビジネスモデルの比較分析、システムの評価基準の決定等を行うことを通じて、極力事実に基づく分析を行い戦略を決定することを提唱し、実践しました。その結果、出身母体が異なる顧客プロジェクト・メンバー間で合理的な議論が始まり、最終的に皆が納得する結論を得るに至りました。象徴的であったのは、最終報告を本国の経営層にしたところ、その報告会の最後に「この方針で明日からシステム統合を実施したい。そのためのタスクフォースを今日結成する」という判断がされたことです。意思決定に結びついて初めてコンサルティングはバリューを発揮するわけですので、この決定を聞いて非常に喜んだ記憶があります。
グローバルなコンサルティング会社の強みのひとつが、グローバルなアセットや人材の活用です。グローバル・アセットや人材は、海外展開を強化したい日本企業にとってはもちろんのこと、海外企業と競合状態にある日本企業や、日本市場で成功をおさめたい海外企業にとっても非常に有効です。特に、金融や製薬、航空業界など、海外が先行している分野において日本企業をご支援する際、グローバル・アセットや人材は強力な武器となります。私のチームが今取り組んでいるもののひとつが、国際問題化している「マネーロンダリング」対策です。この分野では、欧米に一日の長がありますので、コンサルティング・チームに米国の経験者に加わってもらっています。彼は、この分野で5年以上の経験を有するシニアなコンサルタントなので、我々のバリューは十分ユニークなものになっていると思います。
先日、金融機関のある業務に使用するパッケージ・ソフトの選定プロジェクトを実施していた時、同様のパッケージ・ソフトの導入経験者がインドIBMにいることがわかりました。インドに連絡をとったところ、導入経験のあるインド人コンサルタントが参加してくれることになり、来日のはこびとなりました。これもIBMグループならではのグローバル・リソース活用の典型例と言えるでしょう。ベストプラクティスの活用にあたり、単にドキュメントのみならず、それを担当していた人的リソースを活用できることがポイントです。
海外の人的リソースの活用についてお話しすると、しばしば「外国人は日本人と異なる考え方をするので、一緒に働くのは難しいのではないか」ということを言われます。外国人が日本人と異なる考え方をすることがある、というのは十分にありえる話です。しかし、これはむしろ当たり前のことで、グローバルなビジネスを展開しようと思うのであれば、他人の考え方は自分とは違うかもしれない、ということを理解することが大切です。相手との考え方の相違を理解していれば、後になって裏切られたと思うことも少なくなります。もっとも、私はこれまでの経験から、共通点の方が相違点よりずっと多いと感じていますが。
専門分野
フィナンシャル・マーケット・インダストリー(証券、メガバンク、信託銀行、アセットマネジメント、証券取引所等)を対象とする幅広いコンサルティングを実施。特に、グローバル・ベストプラクティスを活用した国内外の成長戦略を得意とする。具体例としては、グローバルCRM戦略策定、グローバルMIS戦略策定、グローバル・マネーロンダリング対応、ポスト・グローバルM&Aのビジネス・システム統合化戦略策定、グローバル・フロント基幹パッケージ・ソフトウェア選定等。
担当している業界・業種
フィナンシャル・マーケット(ホールセール金融機関、具体的には証券会社、ホールセールバンク、信託銀行、アセットマネジメント、証券取引所等)
経歴
高橋 甲 (たかはし こう)
金融事業本部フィナンシャル・マーケッツ・チームリーダー、戦略コンサルティングサービス パートナー。
日系大手製造業、システム・インテグレーターにおいて、財務企画・新規事業企画・金融機関向けリスク・コンサルティングを担当した後、2000年PwC コンサルタント株式会社に入社。IBMとの事業統合を経て現職。
フィナンシャル・マーケット(証券会社、ホールセール金融機関等)の国内外お客様に対し、戦略コンサルティングをはじめとするさまざまなコンサルティングを実施。特に、グローバル案件(海外展開戦略、海外先進事例活用戦略等)を得意とする。米国ペンシルバニア大学ウォートンスクール卒(MBA)、日本証券アナリスト協会検定委員、日本原価計算研究学会会員。
