真に統合されたグローバル企業:GIE
IBMでは、IT技術の進化や、地球のフラット化・スモール化により、21世紀の目指すべき企業像を、事業や地域を横断して経営資源を統合・最適化する「真に統合されたグローバル企業(GIE:Globally Integrated Enterprise)」と定義しました。GIEとなるためには、人、プロセス、システムといった経営資源を明確なガバナンスの下で統合・最適化し、地球規模で需要予測、供給管理、最適生産などを実現することが求められています。IBMでは、自らがGIEを目指して企業変革を続けており、現在も業務改革に取り組んでいます。ここでは、その取り組みの中から特にIT分野のイノベーションについてご紹介します。
IT投資ポートフォリオの組み換えがGIE化へのエンジン
世界中で一番ふさわしい場所にそれぞれの機能を分散し、「適正な場所で、適正な時期に、適正な価格で」経営資源の最適化を目指すGIEでは、その活動基盤をグローバルで支えるITシステムの統合と標準化が不可欠です。
IBMでは、これまで各々の国や地域でバラバラに開発・活用されてきたITシステムの見直しを行い、オペレーションやシステムの重複を整理し、統合を進めた結果、それまで使用していた155カ所のデータセンターを6カ所に集約することができました。また、APM(Application Portfolio Manager)手法の活用により、16,000のアプリケーションを4,000にまで削減しています。さらに、継続利用するシステムにおいても、その重要度に応じたプライオリティーを明確にすることで、維持・管理コストの適正化が図られています。一方で、めまぐるしく変化するビジネス環境に対応し、競争力を維持・強化していくためには、新たなテクノロジーへの投資も欠かせません。IBMでは継続的にIT投資の枠組みを見直すことで、2003年から2009年にかけて、既存ITシステムの維持・管理コストを年率7%削減する反面、新規投資はIT投資全体の24%から38%に上昇し、トータルで年率5.5%ずつ削減させてきました。
世界中に展開する活動拠点を統合し、あたかも1つの会社と見なすGIEでは、システムも1つになることが求められています。既存システムの徹底した見直しを行い、整理・統合を進め、トータルコストを削減すると同時に、強みを生かすための新規投資を強化するという、IT投資に関するポートフォリオの組み換えがGIE化への重要なエンジンのひとつと言えます。
ボーダーを越えたプロセス・マネジメントの変革
IBMでは、ITポートフォリオを組み換え、投資の優先順位を明らかにするために、まずプロセス・マネジメントの在り方を見直しました。IBMには、大きく分けて「ハードウェア」「ソフトウェア」「サービス」という3つの事業部門があり、それぞれの部門を事業部門責任者(ビジネス・ユニット・エグゼクティブ)が統括しています。またそれぞれの事業部門ごとに製造およびサプライチェーン、マーケティング、営業、人事・財務、法務といった業務プロセスが組み込まれており、それらがさらに北米、欧州、日本といった地域ごとに細分化されていました。
しかし、地球規模で経営資源の最適配置を考えるGIEへの取り組みでは、ボーダーを越えた業務の標準化・集約化が求められています。そこでIBMでは、事業部門や地域を越えて横断的に業務プロセスを統括する業務改革責任者(トラスフォーメーション・エグゼクティブ)をIT組織に創設し、プロセス・マネジメントの変革に取り組んでいます。(図)
これは、部門や地域で重複しているプロセスを整理・統合し、オペレーション・コストの削減はもちろん、サプライチェーンや財務窓口の一本化や契約プロセスの統一など、お客様、ビジネス・パートナー様へのサービス・レベル向上を目指しています。また、プロセスの標準化により、グローバルで1つのシステムで管理することも視野に入れています。この取組みをIBMでは「Blue Harmony」と呼んでいます。Blue Harmonyは、SAPをベースに業務プロセスをグローバルに統合するシステムで、受発注、会計、人事などの業務領域を改革するためのシステムです。
【図:業務プロセスの横断的管理】

1人のCIOにITガバナンスを集約
重要な業務改革を最優先しながら、IT投資のポートフォリオを組み換えていくためには、強固なガバナンスと明確な戦略が必要です。IBMでは、その権限をたった1人のCIOに集約しました。かつてグローバルに128人いたCIOは、1人になり、そのCIOがすべてのIT予算を一括管理しています。その結果、地域間の重複投資や一部の地域のみに閉じた標準化などが整理され、グローバルでのITアーキテクチャーが統一されたことで、IT投資の優先順位が明確になりました。
また今日の企業活動において、セキュリティーは最重要課題のひとつです。しかし、国や地域ごとに対応がバラバラでは十分に機能しません。IBMでは、セキュリティー・ポリシーやガイド・ラインなどの管理も1人のCIOに集約することで、その運用レベルを的確に維持しています。
日々刻々と変化するマーケット・ニーズに対応し、強固なガバナンスに基づいた迅速な意思決定、業務遂行を追及しているといえます。
IT人材のグローバル最適化が競争力を生む
従来の多国籍型企業では、より成長が見込める市場に進出し、その市場に生産拠点も設けました。しかし、地球規模で生産や販売の最適化を図るGIEでは、個別の市場にとらわれず、最も効率的に生産ができ、最も効率的に世界の市場へ届けられる場所はどこか、という視点から立地が検討されます。
IBMでは世界各地にアプリケーション開発拠点を保有し、特に日本IBMではインドと中国をその最重要拠点として位置付けています。日本IBMのアプリケーション開発・保守のオフショア活用率は、1998年の1.6%から2009年には70.6%と飛躍的に増大しています。もちろんその背景には、開発手法やプロジェクト管理手法のグローバル標準化が大きく寄与しており、さらに日本IBMから経験豊富なIT技術者やプロジェクト・マネージャーを送り、現地のIT人材教育に力を注いできました。
かつては、技術移転をした相手が力を付けて、後に強力な競争相手になってしまうというジレンマがありましたが、企業が国や地域というボーダーを越えて効率的な生産拠点を手に入れ、それを社内の生産体制に組み込んでしまえば自社の競争力に転化できるというのがGIEの発想であり、すでにそのような競争が地球規模で始まっています。
IBMでは、自らがGIEを目指して取り組んでいる、こうしたITイノベーションの成果や知見をお客様の業務改革に生かすことで、より効率的にGIEへの道が切り開かれると確信しています。
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