
学校法人早稲田大学 理工学術院(以下、早稲田大学)では、IBMアカデミック・イニシアティブの教材「DB2®実践講座」を学生の手で翻訳。そのテキストを使って、2009年9月より、日本IBMの技術者が講師となり、「DB2実践講座」の講義をスタートさせました。
目次
企業で即戦力となる人材をいかに育成するか

早稲田大学
理工学術院 教授
村岡 洋一 氏
早稲田大学 理工学術院 教授の村岡洋一氏は、「企業から“大学を卒業した学生は即戦力にならない。もっと役に立つ人材を育成してほしい”という声をよく耳にします。しかし、大学ではIT分野に関する理論を教えることはできますが、就職してすぐに役立つ実践的なスキルを教えることが困難な状況です」と話します。
こうした状況が、企業が求める人材と大学が育てる人材におけるギャップを生み出す背景となっています。その一方で村岡氏は、「大学を卒業した人材が使えないというのであれば、企業が人材育成の指針を示してほしいという持論もあります。子供を育てる場合に親が手本を見せることと同じです」と語ります。
こうした大学が抱える人材育成の課題を解決するために産学連携の取り組みを模索していた早稲田大学では、IBMアカデミック・イニシアティブを活用することを日本IBMから提案されます。「よいものはどんどん取り入れていくというポリシー」である村岡氏は、すぐにIBMアカデミック・イニシアティブを活用した新しい講座を開発することを決定します。
学生と日本IBMの技術者が協力してDB2実践講座を開発

IBMアカデミック・イニシアティブは、200種類以上の教材で構成される学生向けのITスキル向上支援プログラムです。学校法人の教員であれば、誰でも専用のウェブサイトから登録することが可能。各種IBMソフトウェアやツール、チュートリアル、技術サポート、コミュニティ資料などを無料でダウンロードして利用できます。
村岡氏は、「IBMアカデミック・イニシアティブは、非常にすばらしい教材集です。しかし適応範囲が非常に広く、すべての教材を採用することは残念ながらできません。そこで、まずは学内でも注目度の高い分野のひとつであるデータベースから利用を開始することにしました」と話します。
早稲田大学では、ベースとなる講義用教材とDB2ソフトウェアを日本IBMから入手しますが、IBMアカデミック・イニシアティブで提供される教材は英語で書かれており、まずは日本語に翻訳することが必要でした。
入手した教材は、講師用のナレーションを含む「講師用プレゼン資料」、実習用の「ラボ・プログラム」、および学生用の副読本である「DB2 Express-C入門」の3つで構成されています。
具体的な作業として早稲田大学では、5〜6名の学生により講師用プレゼン資料を日本語に翻訳し、DB2ソフトウェアを使ってラボ・プログラムを検証しました。一方、日本IBMでは、DB2 Express-C入門の翻訳や学生が翻訳した教材のレビュー、ラボ・プログラム検証に必要なDB2に関する実践的な情報やノウハウの提供など担当しました。
DB2実践講座の開発は、2008年夏ごろから構想がスタートし、教材の翻訳を開始したのが秋ごろ。その後、3カ月間の開発期間を経て、日本IBMのレビューが終了したのが2009年3月でした。レビューが終了した後も教材とテキストの関連性のチェックなど、細かな調整を行いました。
土曜日の講座にもかかわらず、30名以上の学生が受講
DB2実践講座は、2009年10月3日より授業がスタート。初年度のDB2実践講座は、1日2コマ、トータル15コマの講義が毎週土曜日、朝9時〜12時で8週にわたり開催されます。
「一般的な講座は毎週1回1コマずつ実施しますが、日本IBMの技術者に講座を担当してもらうため、土曜日に1回2コマずつ実施してもらうことにしました」と村岡氏。
本来であれば、土曜日の午前中に授業は、学生にとってはあまりありがたくないことですが、約30名の学生がDB2実践講座に登録。出席率も非常に高いということです。
村岡氏は、「教材の質の良さはもちろん、日本IBMの技術者の教え方がすばらしいことが参加者の多い要因でしょう。学生の評価も非常に高く、想像した以上の効果を学生たちにもたらしています」と話します。
またDB2実践講座は、1年目は日本IBMの技術者が講師として授業を担当していますが、2年目より大学の教員が講座を自主運営することができるように、同時にスキルトランスファーも実施しています。
村岡氏は、「毎週、講師以外にアシスタントの方が参加してくれて、実習も含めて理解するまで学生をフォローしてくれます」と話しています。
さらに翻訳作業やラボ検証を担当した学生たちが、作業を通じてDB2のスキルを習得できたことも大きな効果のひとつでした。今回、日本IBMでは、教材の翻訳を実施するにあたり、単に翻訳するのではなく、データベースの技術を身につけながら作業ができる工夫をしています。
例えば、用語を統一してもらうために用語集を提供したり、DB2を実際に使いながら翻訳を進めてもらったりしています。また教材の画面イメージは英語版のDB2のものなので、日本語版のDB2を実際に使いながら画面イメージをキャプチャする作業なども学生が行いました。
村岡氏は、「学生は英語を読むことはできますが、翻訳しそれを多くの人が理解できる文書にするという経験は初めてです。その意味では、複数の学生が用語集を使い、統一された用字用語で教材を作っていくというのは非常によい経験になったと思います。卒業して社会人になったときにこの経験は生きてくるでしょう」と話しています。
今回のDB2実践講座は、「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム (IBM外のWebサイトへ) 」の対象講座にも指定されています。1年目は早稲田大学で優先して使用されますが、2年目以降は無償のIBM資料として、学生や企業など向けに、IBMのウェブサイトで公開されます。また、希望するほかの大学や専門学校などの教育機関、企業内の研修など、広く一般にもDB2実践講座を展開していく計画です。
今後の展望について村岡氏は、「IBMアカデミック・イニシアティブの他の教材に関しても活用していきたいです。また、翻訳も早稲田だけでは十分ではないので、ほかの大学とも協力しながら教材作りができればと思っています」と話します。
学校情報
早稲田大学 理工学術院は2007年4月より、理工系の先進性とスケールメリットを生かしながら、常に変化する社会や産業界のニーズに即応できる機動性と展開性を発揮することを目的に「先進理工学部」「創造理工学部」「基幹理工学部」の3つの学部・研究科として新たにスタートしました。従来の学部、大学院の概念を超えた「総合理工系大学」として、学界、産業界、社会との連携、融合を可能とする新しい都市型教育研究拠点を目指しています。2007年10月21日に創立125周年を迎えた早稲田大学では、次の125年に向け、今後10年以内に日本の「早稲田」から世界で存在感を顕示できるグローバルユニバーシティの「WASEDA」へと進化を続けています。
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