200年以上の歴史をもつミツカングループは、1996年に早くも情報共有の手段にLotus Notesを選択。進取の社風を持つ同社は、時代ごとの最新機能を取り込みつつ、コミュニケーション系システムとして業務に深く浸透させてきた。そして現在、4つの「C」をキーワードにグループの総合力をLotus Notesで結集させ狙い通りの成果を挙げている。
会社プロフィール
会社名: ミツカングループ
設立: 1804年
代表者: 中埜 又左エ門 和英
従業員数: 2,420名
事業内容: 調味料および加工食品、チルド食品などの製造販売
活用事例
【導入製品】
製品名/バージョン: Lotus Notes 6.5 / Lotus Domino 6.0
新規導入もしくはバージョンアップ: バージョンアップ
導入台数/ライセンス: Lotus Notes/Domino/2,500ユーザー
導入時期: Lotus Notes R4.1(1996年)、Lotus Notes R4.6(1998年)、Lotus Notes/Domino 6.5(2003年)
導入の経緯・背景
食の安全と近代化を進めてきたミツカングループ
1804年(文化元年)、酒粕酢醸造に成功した中野又左衛門氏が、当時江戸で流行し始めていた半熟れ(にぎり寿司の元祖)にいち早く注目し、分家独立して酢を造り始めたのがミツカングループ創業のきっかけとなった。
「天下一円にあまねし」という易学の理念を表し、三ツ輪(ミツカン)を登録商標とした同社は、明治、大正、昭和という激動と混乱の時代を乗り越え、酢の全面瓶詰め化推進や純正食品運動で食の安全と近代化を進めてきた。創業から200年を経て、ミツカングループは活躍の場を世界に拡げ、総合食品メーカーへの道を歩んでいる。
始まりはLotus Notes R4.1
ミツカングループとLotus Notesとの出会いは1996年に導入したLotus Notes R4.1に始まる。当初は新規プロジェクトにおいて限られた人数で開始され、その利用価値が認められたことで、メール、フォーラム、掲示板といったグループウェアの基本機能の活用が本格的にスタート。
その後、1998年にはLotus Notes R4.6にバージョンアップ。全国展開したLotus Notesだが、業務に直結したデータベース開発が盛んになるとともに、グループ内の重要なインフラに発展していった。
その後、2003年に基幹系システムの大規模な更改をきっかけに、グループウェアとして「やりつくした」感のあったLotus Notesを、Web対応機能が強化されたLotus Notes/Domino 6.5へバージョンアップ。ポータルやワークフローなどの新機能の追加が進み、Lotus Notesの位置づけも大きく変化した。
現在では、Lotus Sametimeでの在席確認やインスタントメッセージ、モバイルでの社外アクセスやコラボックスを介した外部との業務連携が日常的に行われる一方で、システムの二重化(クラスタリング)や外部データセンターへのサーバー移設など、運用面での強化・安定化が図られている。
巨大化するコミュニケーション系システムへの期待
ミツカングループの情報システム体系は、「基幹系」(生産・販売・受注・出荷)、「情報系」(検索・分析・加工)のほかに、「コミュニケーション系」(伝達・共有・蓄積)を設けた3極体制の独特の構成を持っている。特に、日常業務に深く浸透したLotus Notesを擁するコミュニケーション系システムは、グループ最大の巨大システムとなっており、新たな方向性が必要とされていた。
また、グループの社訓ともいえる、「脚下照顧に基づく現状否認の実行」という原点を踏まえ、現状に甘んじることなく体質を改善しつづけることを使命とする同社は、コミュニケーション系システムにおける変化への期待も大きいものがあった。
ミツカングループの情報システム部 情報企画課 課長 桝田浩司氏は、IT部門としてどのように取り組むべきか検討する中で、「社内ユーザー部門を顧客とみなし、Lotus Notesで顧客満足の最大化を目指すとともに、グループの総合力をLotus Notesで結集できる方法を模索していた」と振り返る。
そこで同社は、システム開発にマーケティング的手法を取り入れ、現状の社内コミュニケーションの範囲と対象、速度と時間、共有度と可視性の3要素をマトリクスにマッピングしたコンセプト、「4C」を考案した。
- Corporate(グループの求心力):
カンパニー制を敷いたことによる分社化が進み、メリットが多い半面、失われつつあった求心力を高める仕組みも必要となっていた。
- Clear(可視化):
暗黙知化している社内の知見を見える化することで組織力向上を目的とする。
- Connectivity(いつでも、どこでも):
つながることで業務改革や効率化を高めようと考えた。
- Collaboration(協業):
Lotus Notesの得意とする協業でその範囲を見直し、再構築していくというもの。
「これら4Cによって、当社のITコミュニケーションの重要な基盤を構築しようとした」(桝田氏)

図1 「4C」の独自コンセプトでコミュニケーション系システムの新たな方向性を模索
オフィシャルな企業情報に特化したグループポータル
この4C実現のため、ミツカングループではグループ全体への情報発信に重きを置いたグループポータルを2003年3月、Lotus Notes/Domino 6.5で構築。個人が利用するメールやスケジューラなどパーソナルな機能を一切排除し、社長や役員のメッセージ、社内規定、最新のお知らせ、TVCM動画など、会社として確実に伝えたい情報に特化しているのが特長となっている。
中でもTVCMの動画がユニークだが、自社のCMをテレビ放送以前に知る機会の少ない生産現場や内務の社員にもあらかじめ知ってもらうため、あえて掲載しているのだという。同様に、当月のグループ総売上といったグループ社員として最低限知っておくべき情報も、ポータル上に表示させてある。
これらの設計について、桝田氏は、「社員が知りうる情報が一様ではないという危機感を共有したいという思いがあった」と説明する。
ただ、せっかく用意したポータルも利用されなければ意味がない。ノーツコンソーシアム会員企業からも、ポータルがあまり利用されない、利用率が低下している、という声が少なからず聞かれる。
そのため、PCのログイン時ポータルが自動的に立ち上がるようにし、Lotus Notes 6.0から利用可能になったシングルサインオン機能によって、Windowsとポータルとのログイン同期が容易にとれるようにするなど、ユーザーの利便性にも配慮した。
さらに桝田氏は、「ポータル利用率の低下は管理者不在で更新を怠ることに原因がある」として、掲載コンテンツごとに担当責任者を置き、更新の頻度を高めることで、毎日新たな情報や発見が得られるような工夫をしているという。
運用状況・導入効果
独自開発のランダムワークフロー
では、ミツカングループにおけるLotus Notes運用上の効果とはなにか。桝田氏は、先に紹介した4Cの要素ごとに分析を加えている。
まず、『グループの求心力(Corporate)』を高めるという目的においては、「ポータルを構築・運用することで、グループ全体に重要情報が浸透し始めている」(同氏)と評価する。グループ掲示板は、ポータル導入前には1日840回だった閲覧数も5,200回にまで増加し、必見の重要情報にはアクセスログの分析を加えることで、毎月の情報ベスト10ランキングが公表できるようになった。社内イベント「グループプレゼン」の動画再生回数も4,000回に及び、社員一人一回以上は閲覧している計算だという。
次に、『可視化(Clear)』という面では、試行錯誤を繰り返す商品開発ワークフローをLotus Notesで構築し成果を挙げている。食品製造業であるミツカングループは日々多くの新商品を開発しているが、従来の申請・承認・受付・実施といった単発の業務フローを、独自開発のランダムワークフローに変えることで、フロー序列に阻害されず、同時並行で複数のフローを走らせることが可能になったという。今では、ランダムワークフローなしでは商品開発が行き詰まるほどに活用されている。
携帯電話からのLotus Notes利用は社内でも大好評
また、『いつでも、どこでも(Connectivity)』に関して、同社は携帯電話からLotus Notesの利用を可能にする『ポケットステーション』を導入。桝田氏は、「メールや掲示板、スケジュールのほか、日報、勤怠管理などの社内システムも携帯電話から安全・簡単に活用できるようになり、社内ユーザーの評判も極めて高い」と語る。
携帯電話内に情報が残らないセキュリティー上の工夫や、ワンタイムパスワード、シングルサインオンの導入など利便性にも配慮。意志決定のスピード向上、ビジネスチャンスの拡大、出張や移動時間の有効活用といった効果が期待されている。この『ポケットステーション』によるワークスタイルへのインパクトは大きく、現在800名以上が利用し、月間2万3,500アクセスになるなど、利用が拡大しているという。
そして『協業(Collaboration)』。これこそ、Lotus Notesが本領を発揮する場である。ミツカングループでは、Lotus Notes 4.6までは社内向けシステムとしてのみ利用してきたが、本格的なWeb対応ができるようになったLotus Notes 6.5からは、企業間の協業を行うコミュニケーションツールとして『複合型コラボレーションスペース』を用意。取引先や委託先、広告会社、コンサルティング会社などとも、メールのみならずディスカッションや文書共有、進捗管理、スケジュールなどをWebでシームレスにつながるようになった。
情報共有や履歴機能を取り入れ、透明性を高めることで経緯や進捗が辿りやすくなり、間違いやミスを抑制。また、さまざまな企業、業態と同時に業務が進められやすくなる一方で、細かいアクセス権管理や情報漏えいを防止する仕組みを組込み、セキュリティーにも配慮している。

図2 「4C」実行後のコミュニケーション基盤
一極集中の開発体制で標準化を堅持
なお、ミツカングループでは実質3.5人でLotus Notesを運用し、一極集中の開発体制を堅持して、現場ではEUC(End User Computing)を一切認めてはいない。そのため、社内に存在するデータベースも1,000個程度とさほど多くはない。また、開発も出来る限り、あらかじめ用意したテンプレートを活用し、課員が5分程度で開発できる変更に留めることで標準化を守っている。
今後の予定
長年受け継がれてきた技術や知識の伝承をLotus Notesで実現
ミツカングループでも、今後のLotus Notes運用における課題はいくつか存在する。中でも最も重要なのはLotus Notes安定稼働だ。
「今や、Lotus Notesは基幹系にも劣らないほどの重要システムとなっている。そのため、クラスタのリアルタイムバックアップシステムでインフラを強化し、外部のデータセンターの活用なども併用することで、稼働率99%以上を実現している」という桝田氏だが、安定性をさらに高める工夫が必要と感じているという。そのため、今後予定しているバージョンアップを行う際にはその点を重視していく考えだ。
また、Lotus Notesの検索機能の強化によって、蓄積された情報の有効活用と社内システムとの連携も高めていくという。「文書化や機械化されていない社内の暗黙知化している知見をどのように後進に伝えるかが課題」という桝田氏は、「ワークフローや文書管理システムなどを用いることで、長年受け継がれてきた技術や知識の伝承を行っていくことも目下のテーマ」と打ち明ける。
200年もの歴史を持つ老舗企業のミツカングループは、先進的な技術を取り入れる社風とともに、隠し事をしないという情報共有に積極的な企業文化を醸成し続けてきた。早期にLotus Notesの可能性に着目したのも同社ならではの先見性といえる。今後、総合食品企業としてグローバル展開を目指す同社の、飽くなき挑戦を支え続けていくものまたLotus Notesなのだろう。
