本文へジャンプ

IBM i の仮想化機能をフル活用!IBM i クライアント区画の構成方法

仮想化環境の選択肢

IBM Power Systems™ ではPowerVM™ テクノロジーを活用して、複数のIBM i(旧称OS/400®, i5/OS®)の論理区画を1台の中に構成・集約することが可能です。この機能のことをLPAR(Logical Partitioning)と呼びます(LPARについては別途こちら(LPAR(論理区画)とは)をご参照ください)。

特にPOWER6® プロセッサーもしくはPOWER7® プロセッサーを搭載したモデルでIBM i 6.1もしくは7.1を稼働させる場合には、複数のIBM i の環境を1台にまとめるに当たって様々な選択肢があります。図1はPower Systems(POWER6以降のモデル)におけるIBM i 論理区画構成のバリエーションを示しています。

【図1 Power SystemsにおけるIBM i 論理区画構成のバリエーション】
IBM i 論理区画構成バリエーションの概要図

1つ目は論理区画に物理的なディスク装置およびRAIDアダプターを割り振って、区画専用のディスクI/O環境を用意する方法です。従来からの論理区画の構成方法はこの方法となります。複数の論理区画に関し、それぞれ物理的なディスク装置/RAIDアダプターを割り振って構成している場合には各論理区画は干渉し合うことなく、独立した運用管理を行うことが可能です。

2つ目は他のIBM i にホストされるクライアント区画として構成する方法です。ホストとなるIBM i 論理区画側でクライアント区画用の仮想ディスクを切り出して、サーバー・ファームウェアであるPOWER Hypervisor™ を通じてクライアント区画に取り付けることとなります。

そして3つ目はVIOS(Virtual I/O Server)にホストされるクライアント区画として構成する方法です。VIOSとはAIX® をベースとしたPower Systemsにおける仮想化資源提供に特化したOSでPowerVMテクノロジーの核の一つです。IBM i もVIOS側で定義および設定した仮想資源を利用することが可能です。VIOS上で仮想ディスクを切り出して、POWER Hypervisor経由でIBM i クライアント区画に取り付けます。

IBM i クライアント区画の構成を実現する方法は2つ目と3つ目の計2つの選択肢があります。今回はそのうちの2つ目の方法である「他のIBM i 区画の仮想ディスクを利用したIBM i クライアント区画」についてご紹介いたします。またこのセミナーでは仮想ディスクを提供するIBM i 区画を「IBM i ホスト区画」、仮想ディスクの提供を受けて稼働する区画を「IBM i クライアント区画」と表記します。

IBM i において仮想ディスク資源をAIX区画やLinux® 区画に対して提供する仮想化機能は実は以前のリリースにおいても利用することができていました。IBM i 6.1で仮想ディスク提供機能の対象として従来からのAIX、Linux® 区画に加えて、他のIBM i 区画も追加されたということになります。

図2はIBM i ホスト区画、IBM i クライアント区画の関係を示したものです。この構成で登場する要素としては以下があります。

【図2 IBM i ホスト区画とIBM i クライアント区画の関連】
IBM i ホストとクライアントの区画概要図

ネットワーク・サーバー記憶スペース(*NWSSTG)オブジェクト

IBM i ホスト区画で切り出した仮想ディスクはIBM i の用語ではネットワーク・サーバー記憶スペース(*NWSSTGオブジェクト)と呼びます。ネットワーク・サーバー記憶スペースの実体はIFS(統合ファイル・システム)上のストリーム・ファイルです。このネットワーク・サーバー記憶スペースを次に挙げている仮想SCSIアダプターに紐付けして、IBM i クライアント区画にディスク資源として提供することになります。

仮想SCSIアダプター

PowerVMテクノロジーが提供する仮想化機能で、論理区画間でのSCSI接続を可能にするための仮想アダプターです。IBM i ホスト区画には仮想SCSIサーバー・アダプターを構成し、IBM i クライアント区画には仮想SCSIクライアント・アダプターを構成して、サーバー/クライアントのセットで利用します。

ネットワーク・サーバー記述(*NWSD)オブジェクト

IBM i ホスト区画にて作成する、仮想SCSIサーバー・アダプターを示す記述オブジェクトです。このネットワーク・サーバー記述オブジェクトに対して、切り出したネットワーク・サーバー記憶スペースを紐付けます。ネットワーク・サーバー記述および仮想SCSIアダプターを経てIBM i ホスト区画上のネットワーク・サーバー記憶スペースがIBM i クライアント区画側ではディスク装置として認識されると言う仕組みになります。

IBM i クライアント区画の構成

ここでは、実際にIBM i クライアント区画を構成するに当たっての主な流れを示します。まずはIBM i クライアント区画を構成するに当たっての前提条件は以下となっています。OSリリースがIBM i 6.1やIBM i 7.1であってもハードウェアがPOWER5™ やPOWER5+™ プロセッサー搭載モデルでは構成できません。また、JS12/22/23/43およびPS700/701/702のPower Architecture® Bladeでも構成できませんので注意が必要です。

IBM i の仮想ディスク機能を利用したIBM i クライアント区画の構成手順は以下の通りです。

1. 仮想SCSIアダプターの構成

1-1.HMCの画面左側のナビゲーション領域にて「システム管理」の「サーバー」から「“サーバー名”」をクリックします。画面中央のコンテンツ領域にサーバー内に構成されている論理区画 (パーティション) の一覧が表示されます。
ハードウェア管理コンソールの画面キャプチャー

1-2.IBM i ホスト区画にチェックを入れて選択し、パーティション名の右側の矢印をクリック。「構成」から「プロファイルの管理」をクリックします。IBM i ホスト区画のパーティション・プロファイルの一覧が表示されます。
ハードウェア管理コンソールの画面キャプチャー

1-3.仮想SCSIサーバー・アダプターを構成するパーティション・プロファイル名をクリックします。「ロジカル・パーティション・プロファイルの属性」画面が表示されます。
管理対象プロファイルの画面キャプチャー

1-4.画面の「仮想アダプター」タブをクリックします。
ロジカル・パーティション・プロファイルの属性の画面キャプチャー

1-5.「アクション」の「作成」から「SCSIアダプター」をクリックします。「仮想SCSIアダプターの作成」画面が表示されます。
仮想アダプターの画面キャプチャー

1-6.以下の項目に入力し、「了解」ボタンを押下します。

仮想SCSIアダプターの作成の画面キャプチャー

1-7.パーティション・プロファイルの変更内容を区画に反映させるためにIBM i ホスト区画をシャットダウン後、プロファイルから起動させます。(ここではパーティション・プロファイルに対して作成を行っているために必要な作業です。その他、仮想SCSIアダプターは動的資源移動が可能で、IBM i ホスト区画が稼働中に仮想SCSIアダプターを追加することもできます。稼働中の追加を行った場合も、今後のためにパーティション・プロファイルに対して仮想SCSIサーバー・アダプターの作成を別途行っておいてください。)

1-8.次にIBM i クライアント区画にチェックを入れて選択右パーティション名の右側の矢印をクリック。「構成」から「プロファイルの管理」をクリックします。IBM i クライアント区画のパーティション・プロファイルの一覧が表示されます。
パーティション・プロファイルの画面キャプチャー

1-9.仮想SCSIクライアント・アダプターを構成するパーティション・プロファイル名をクリックします。「ロジカル・パーティション・プロファイルの属性」画面が表示されます。
管理対象プロファイルの画面キャプチャー

1-10.画面の「仮想アダプター」タブをクリックします。
ロジカル・パーティション・プロファイルの属性の画面キャプチャー

1-11.「アクション」の「作成」から「SCSIアダプター」をクリックします。「仮想SCSIアダプターの作成」画面が表示されます。
ロジカル・パーティション・プロファイルの属性の画面キャプチャー

1-12.以下の項目に入力し、「了解」ボタンを押下します。

仮想SCSIアダプターの作成の画面キャプチャー

IBM i ホスト区画/クライアント区画で仮想SCSIアダプターを構成する際には、下記図3のようにお互いのIDをそれぞれ設定しておくことに注意してください。

【図3. 仮想SCSIアダプターの設定】
仮想SCSIアダプターの作成の画面キャプチャー


2. IBM i ホスト区画での仮想SCSIサーバー・アダプターの状況確認

2-1.コマンド行にて「WRKHDWRSC TYPE(*CMN)」と入力、実行します。仮想SCSIサーバー・アダプターは記憶装置資源 (*STG) ではなく通信資源 (*CMN) として認識されることがポイントです。

2-2.タイプが「290B」の通信アダプター「CTLxx」が存在しており、状況が「操作可能」になっていれば正常に認識されています。
ホスト区画での仮想SCSIサーバー・アダプターの画面キャプチャー


3. IBM i ホスト区画でネットワーク・サーバー記述の作成

ネットワーク・サーバー記述 (*NWSD) オブジェクトはIBM i ホスト区画における仮想SCSIサーバー・アダプターを表すオブジェクトです。CRTNWSDコマンドで作成します。

3-1.コマンド行にて「CRTNWSD」と入力し、F4キーを押下します。CRTNWSDコマンドで指定する主なパラメーターは以下の通りです。

デフォルトでは、IBM i ホスト区画上にある光メディア装置、仮想光メディア装置をIBM i クライアント区画から利用することが可能です。RSTDDEVRSCパラメーターで装置記述名を指定することでその光メディア装置、仮想光メディア装置はIBM i クライアント区画からは利用できないようにする (すなわちそれらの装置はIBM i ホスト区画専用とする) こともできます。

以下のような設定を行う場合のCRTNWSDコマンドの例となります。

【設定内容】

【コマンド例】
CRTNWSD NWSD(LPAR4) RSRCNAME(CTL04) TYPE(*GUEST *OPSYS) PTNNBR(4) ONLINE(*YES) PWRCTL(*NO) RSTDDEVRSC(OPT01)


4. IBM i ホスト区画でのネットワーク・サーバー記憶スペースの作成(仮想ディスクの切り出し)

IBM i ホスト区画上でIBM i クライアント区画に提供する仮想ディスク(ネットワーク・サーバー記憶スペース (*NWSSTG) オブジェクト)の切り出しを行います。作成にはCRTNWSSTGコマンドを使用します。CRTNWSSTGコマンドで指定する主なパラメーターは以下の通りです。

なおNWSSIZEパラメーターでの容量指定時の考慮点として以下の2点があります。

以下のような設定を行う場合のCRTNWSSTGコマンドの例となります。

【設定内容】

【コマンド例】
CRTNWSSTG NWSSTG(LPAR41) NWSSIZE(20480) FORMAT(*OPEN)


5. IBM i ホスト区画でのネットワーク・サーバー記憶スペースのリンク付けとネットワーク・サーバー記述のオンへの構成変更

5-1.作成したNWSSTGのNWSDへのリンク付けを行います。この作業はディスク・アダプターにディスク装置を取り付ける作業に相当します。リンク付けにはADDNWSSTGLコマンドを利用します。なお1つのNWSDあたり最大で16個のNWSSTGを取り付けることができます。

【コマンド例】
ADDNWSSTGL NWSSTG(LPAR41) NWSD(LPAR4)

5-2.作成したNWSDをオンに構成変更します。NWSDのオンへの構成変更は、ディスク・アダプターの電源を入れる作業に相当します。オンへの構成変更は以下のVRYCFGコマンドで実行します。このコマンド以外にもWRKCFGSTS CFGTYPE(*NWS)の画面からオプション1 (オンへの構成変更) を選択することでも実施できます。

【コマンド例】
VRYCFG CFGOBJ(NWSD名) CFGTYPE(*NWS) STATUS(*ON)


6. IBM i クライアント区画の導入/起動

IBM i ホスト区画でNWSDをオンに構成変更を実施後は、通常のIBM i 区画と同様にHMCからIBM i クライアント区画のOSを導入したり、起動させたりすることができます。なおIBM i クライアント区画では、仮想SCSIクライアント・アダプターはタイプが「290A」の記憶装置資源として認識され、仮想ディスクはタイプが「6B22」のディスク装置として認識されます。

【図4. IBM i クライアント区画における認識状況】
BM i クライアント区画の画面キャプチャー


7. IBM i クライアント区画の運用

ここでは、IBM i クライアント区画の基本運用について以下の2点に関してまとめます。ここでは、IBM i クライアント区画の基本運用について以下の2点に関してまとめます。

7-1.起動終了
IBM i クライアント区画の起動は必ず以下の順序で行う必要があります。

a. IBM i ホスト区画でのネットワーク・サーバー記述のオンへの構成変更
b. HMCからIBM i クライアント区画の起動

そのため、IBM i ホスト区画が稼働していない限りIBM i クライアント区画も起動できない点には注意が必要です。IBM i ホスト区画は位置づけとしてはPOWER4™ マシンの8xxモデルの頃の一次区画のようなイメージで捉えて頂くと良いでしょう。理想的にはIBM i ホスト区画では本番業務は動かさずに、仮想ディスク資源の提供用としておくことが推奨されます。 なお、IBM i ホスト区画の起動時にIBM i クライアント区画も自動的に起動させるような設定を行うことも可能です。

また、終了は以下の手順で実施します。

a. IBM i クライアント区画でのPWRDWNSYSコマンドによる終了
b. IBM i ホスト区画でのネットワーク・サーバー記述のオフへの構成変更

7-2.保管運用
IBM i ホスト区画上のネットワーク・サーバー記憶スペースを保管することで、IBM i クライアント区画のシステム全体の保管を行うことができます。ただし、この保管方法は、ディスク全体のイメージ保管に相当しますので、個別のオブジェクトの復元に対応することができません。 そのため日次保管や週次保管と言ったユーザー・データの保管は基本的にIBM i クライアント区画上で行います。


8. まとめ

POWER6もしくはPOWER7プロセッサー搭載のPower SystemsでIBM i 6.1もしくはIBM i 7.1を稼働させる場合にはIBM i クライアント区画としても構築できることをご紹介してきました。この方法で構築した場合は、単にディスク資源をIBM i ホスト区画に集約するだけではなく、以下のようなメリットもあります。

a. IBM i ホスト区画の光ディスク装置が利用可能
IBM i ホスト区画に作成した仮想ディスクだけではなく、光メディア/仮想光メディア装置 (OPTxx/OPTVRTxx) をIBM i クライアント区画から利用することができます。 そのため、IBM i ホスト区画にPTFやOS導入メディアのイメージ・カタログを作成しておけば、IBM i クライアント区画では物理メディアを利用することなくPTFの導入/OSの導入やリリース・アップが行えます。

【図5. 仮想SCSI接続による光メディア機能の提供】
IBM i ホスト区画の光ディスク装置の構成図

b. PTF適用 / リリース・アップ時の事前保管運用の効率化
IBM i ホスト区画でNWSSTGをコピーしておけば、PTF適用やリリース・アップ作業前のIBM i クライアント区画の旧環境を取っておくことが可能です。個別のオブジェクト復元には対応できませんが、万一PTF適用後やリリース・アップ後にIBM i クライアント区画をPTF適用前やリリース・アップ前の環境に戻したい場合でも短時間で戻すことができます。

【図6. NWSSTGのコピーによる保管運用の効率化】
事前保管運用の効率化構成図

IBM i クライアント区画はIBM i ホスト区画が稼働状態でない限りは起動することができないといった考慮点としてありますが、一時的にテスト環境を作りたい場合など、この機能を是非ご活用ください。

IBM、IBMロゴ、ibm.com、POWER4、POWER5、POWER5+、POWER6、POWER7、Power Architecture、POWER Hypervisor、Power Systems、PowerVMは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corporationの商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点でのIBMの商標リストについては、www.ibm.com/legal/copytrade.shtml(US)をご覧ください。
Linuxは、Linus Torvaldsの米国およびその他の国における登録商標です。