目次
- 1. "ERP"ってなに?
- 2. ERP出現の背景
- 3. TO BE OR NOT TO BE ? ERPにするべきか、否か?選択中,
- 4. ERPをとりまく情報システムのひろがり
- 5. ERP導入を成功させる為に
前回は、ERP誕生の経緯ならびに好調の背景についてお話しました。然るに、その実態は? というわけで、今回はまず弊社の導入事例からご紹介したいと思います。

われらがSystem i の生まれ故郷であるIBMロチェスター研究所(米国ミネソタ州)でもERPシステムが採用されています。以前は400万ステップにものぼる自社開発のシステムを利用していたのですが、システムの老朽化・空洞化に伴いERPシステムの採用を決定しました。
ロチェスター研究所は世界中のSystem i の製造拠点でもありますので、ユーザー数1200、部品点数14万、また現場管理などの既存システムとのインターフェースも必要という要件ではありましたが、決定以来18ヶ月で全面稼働に成功し、19ヶ月で初期投資回収を実現いたしました。
また、「ERPシステム=大福帳型データベース」を証明すべく、リアルタイムでの迅速なデータベース検索が可能となっただけではなく、データの精度も飛躍的に向上しました。通常IBMでは社内規定により行われる年間棚卸しの為2~3日間ラインを停止する必要がありましたが、この在庫精度の向上により「棚卸し不要事業所」と認定され、絶大なる効果を上げることに成功しました。また、IBMオースチン工場からpSeriesの製造ラインが一部移転されてきた際にもシステムの環境を2本立てにすることにより短期間でその管理業務を立ち上げることができました。

このように、一見いいことずくめのようなERPではありますが、勿論長所だけではなく短所もあります。
ERPはバックオフィス・アプリケーションの礎として膨大な数の機能を提供し、その中からどの機能を利用するかという組み合わせを、多くのERPパッケージではパラメーターで設定するようになっています。導入にあたっては、これらの多彩な機能をひとつひとつ詳細に理解するだけではなく、相互関係までも把握した上でセットアップする必要があり、ここにまず第一の関門が有ります。またここで、業務とパッケージ双方に精通したインテグレータと出会えるかどうかも導入成功の大きな鍵を握ることとなります。ひいては、ERPパッケージの提供元でもあるソフトウェア・ディベロッパー各社のサポート体制も重要なポイントになります。
また、ERPの提供する標準機能以外の業務のためにどうしてもカスタマイズが必要となった場合の対応も大きな問題点のひとつです。現場の使い勝手を重視するあまり、カスタマイズ要件が膨れ上がってしまったような場合、ERPの利点でもあるシステム構築期間やコストの最少化、将来のバージョンアップへの対応などが著しく損なわれる恐れが有ります。ERPのなかにもカスタマイズのしやすいもの、しにくいものとそれぞれ特徴が有ります。しかし、基本的には現場の標準をいかに世界標準にすりあわせてゆくか=カスタマイズをいかに最小限に止めるか、これが出来なければERPの長所は短所にも変わり得るのです。
その他にも、多くの主要ERPディベロッパーが外国企業であるという事から、日本対応がどうしても遅くなるという短所も認められます。それは単に日本語バージョンの発表が遅い、膨大なマニュアルが日本語化されていない、といった表面的な事象に止まらず、例えば手形管理や製番管理などの、日本固有の業務形態/商慣習にパッケージが未対応といった根幹にかかわる部分も存在します。これらのデメリットも念頭に置きつつ、個別開発にするのか、ERPにて業務改革をとりいれるのか、検討の必要が有るのは言うまでもないことです。

ここでご参考までに、要件定義の段階から導入、稼動後の保守にいたるまで段階別にERP導入の場合と手作りシステムの場合を比較してみました。
まず、要件定義から業務プロセスの決定に至るまでのステップで比較してみると、手作りシステムでは現場の声=現行プロセスが優先され、結果、現場の使い勝手をよくする為のシステムが出来上がります。それに比べるとERPは、企業の経営効率を高めることを目的としているため、業務プロセスの雛形を提供し、現場はそれに合わせる/使い勝手は二の次、という側面があるのは事実です。ですからこの段階で、現場の個々の問題改善を図るシステムなのか、国際標準対応の業務改革を伴ったシステムを採用するのか、充分な検討が必要になるのは言うまでもないことです。(ERP導入成功の秘訣については、また改めてお話します。)
システム構築のステップでは、ERPはパッケージソフトとしての強みを発揮します。まずほとんどのERPディベロッパーがすでに確立された導入手法を用意していますので、導入にかかる期間は状況に応じ差は有るものの、平均して会計/販売物流で約1年ほどといわれています。また、事前にエンドユーザーに完成形をもって仕様確認することが出来るので、手戻りも少なく、開発工数の見積もりもしやすいのが特徴です。それに比べると、手作りシステム場合、まず整合性のある統合システムの開発には多大な作業量が必要となり、また、仕様次第で作業量も大きく異なる為、とても1年という期間で会計/販売物流までの統合システムを構築することは困難でしょう。但し、ERPは前述の通りいかに業務をパッケージに合わせるか、という点が導入成否の鍵を握る為、この段階で現場との間に大きな軋轢が生じる場合が有ります。その点、手作りシステムは社内要望にぴったり沿ったシステムが出来る為、こういった心配は有りません。
システム構築後の保守/機能拡張においても、ERPはメリットを提供します。まず、業務拡張や組織変更など将来の環境の変化にはパラメーターの設定変更で対応が可能です。また、多くのERPパッケージは定期的にリリースアップを行っていますので、ソフトウェアの保守に限らず、将来のIT技術の進歩(例えばJava対応など)への対応もいわばディベロッパーまかせに出来るというのも大きな利点のひとつです。手作りシステムでは、これらの対応はすべて自社でまかなう必要が有ります。
