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サプライチェーン・マネジメント

3.「サプライチェーン・マネジメント」を実施するためのステップ

これまで2回の連載を通じて、「サプライチェーン・マネジメント」がビジネスの効率化を追求したうえで、商品やお金の流れを早め、最終的に顧客満足度の向上を実現する経営情報戦略であることをご理解いただけたかと思います。

ただ、前回も述べましたように、自社内で効率化できる体制をつくっても、それはあくまでも「部分的な最適化」であり「サプライチェーン・マネジメント」が狙っている効果を得るためにはそれを「全体最適化」へと発展させていく必要があります。

第3回目は、具体的にどのようなステップを踏めばサプライチェーン全体での「最適化」が実現できるのかを、 以前取り上げた清涼飲料水の例を用いて解説していきたいと思います。

自社の仕組みの確立

先ずは企業のおかれているビジネス環境や顧客のニーズを十分に把握したうえで、会社としての戦略と目標を明確にして、それらを達成するために各部門が具体的なプランをたてて活動することが求められます。 プロジェクトそのものを評価していく基準にもなるので、この目標は具体的に数値化できるものを設定します。 例えば、飲料水のメーカーと原材料のサプライヤーの場合は「原材料や缶などの在庫を50%削減する」や、「商品は必ず2日以内にメーカーの手元に届ける」といったような事があげられます。

これらの目標を達成するためには、業務の標準化や部門間の協業体制の確立、場合によっては組織の変更も必要になるでしょう。そしてそれらの組織、あるいは個人の役割や責任を明確にして目標を確実に達成する体制をつくらなくてはなりません。

原材料の果汁をどのタイミングで発注するのか、又、その基準の変更は誰がおこなうのか、倉庫にある缶の在庫の引き当ては誰がおこなうのか、といったように責任の所在を明確にすることに加え、「気温があがるとどのような種類の飲料水の需要が伸びる」などの需要予測やトレンド分析をおこなううえでも他部門との協業体制が求められてくるでしょう。

そして、最も重要なのは企業としての取引上の「事実」を正確に把握する事です。 今日どの飲料水がどれだけ出荷されたのか、正確な販売データは揃っているでしょうか? 缶やペットボトルなどの在庫がどの倉庫/店舗にどれだけあるか、正確に把握できているでしょうか? これらの情報に基づき生産計画や物流計画がたてられるわけですから、誤ったデータがチェーン上を流れると、「効率化の追求」どころか逆に「ロス」を招きかねません。あるとされていた原材料が実際に存在せず、あわてて発注をかけるようではせっかくたてた生産計画も無意味となってしまうのです。

基幹システムの精度をあげ、更にはPOSやインターネットなどの情報システムを活用していくことは、これらの「事実」を正確にタイムリーに把握するためには欠かせない情報技術なのです。

情報共有できるパートナーを探す

冒頭でも述べたように、自社内の仕組みを確立するだけでは「全体最適化」にはつながりません。 次のステップとして、情報共有をおこなったうえでパートナーシップを組める企業の選定が必要になってきます。
パートナーシップを組むということは企業内の情報を公開する事になるので、お互いが信頼できる関係である事が最も重要な要素となります。そして、経営戦略の方向性が同じで将来にわたってパートナーシップが持続できる企業を選ぶ事が成功のためのポイントとなります。

以下、パートナーを選定する際の基準をいくつかまとめてみました。

飲料水メーカーが原材料のサプライヤーとパートナーシップを組む上で、まず互いに信頼し合い良好な関係を築くことは重要なポイントです。そして、メーカーが事前に自社の在庫や今後の生産計画をサプライヤー側に渡すことにより、サプライヤー側が欠品という状態をさける事が可能になるのです。 また、メーカーは余分な在庫を自社で抱えることなく必要な時に必要な量の在庫を入手でき、スムースに生産へとつなげる事が可能となる一方、サプライヤーは急な発注に対応するための過剰在庫をもつ必要がなくなり、小分け配送などの必要性も減り、相互にメリットが生まれるのです。

まったく異なった企業が、互いの経営情報を共有しながらサプライチェーンの全体最適のために活動をおこなうわけですから、そこから得られる成果も共有すると共に、伴うリスクも分かち合う事になります。 両者が完全に同等の立場であり、且つ強い信頼関係で同じ戦略を共有していることは、「サプライチェーン・マネジメント」を成功に導くうえで非常に重要な要素となります。

プロジェクトの実施

パートナー企業が決まったら、効果が求められやすいところからパイロット・プロジェクトをスタートさせましょう。
例えば、果汁を提供するサプライヤーとのパートナーシップを決めたうえで、まずは「果汁100%ジュース」の製造業務をそのパイロットとして取り上げるのです。

プロジェクトの対象を決定したら、プロジェクトに携わるメンバーを選定します。メーカー側からは、製造部門、販売部門などの業務に関連するすべての部門からの参画が求められ、サプライヤーからも販売部門や調達部門など今回のプロジェクトの対象となる関連部門からの参画が必須となります。 経営体制の変革を伴う大きなプロジェクトですので、必ず経営者格の人がリーダーないしはオブザーバーとして参画することが求められます。
次に、1で決定した要領でプロジェクトの目標を設定し各企業の役割と責任を明確化します。既に述べたように在庫計画や発注計画、需要予測など「サプライチェーン・マネジメント」の精度を左右する活動がたくさんありますが、それぞれの担当者と最終責任者を必ず明確にし、その目標を達成するためにお互い実施しなくてはならない活動項目を洗い出すのです。

実際の活動を展開すると、今まで発生していた無駄なコストが削減され、多くの業務が効率化されてきます。
例えば、データの共有により今までおこなっていた伝票の送付が不要になったり、検品作業を省く事が可能になったりします。
ここで更に大きな成果をあげるためには、今までの業務の流れを大幅に変更するリエンジニアリングも必要となってきます。

プロジェクトの評価

プロジェクトが終了する時点で、目標に対する達成度をレビューしていきます。 目標通り在庫は50%に削減されたでしょうか?メーカーへは2日以内に原材料が届けられているでしょうか?
又、計画に対して急な変更が生じた場合は対応できたでしょうか? それらの目標が達成されていない場合は、その原因を見直す必要が出てきます。メーカー側の生産計画に問題があるかもしれませんし、あるいは物流に問題がある可能性もあり、必要に応じて計画を見直す事も必要も出てきます。
逆に成功要因はその経験を蓄積し、次のプロジェクトへと反映させていきます。 このようにプロジェクトを評価し改善を繰り返すことによって、その仕組みを徐々に展開し最終的には「サプライチェーン・マネジメント」による全体の最適化を目指していくのです。

先ずは 「部分最適化」からスタートし、「全体最適化」へとステップを踏んでいくことにより、最終的に「サプライチェーン・マネジメント」の全体を構築していくのです。

最後に成功するためのポイントをいくつかまとめてみましょう。


次回は、「サプライチェーン・マネジメント」を構築するにあたって必要不可欠な情報技術について述べる予定です。