一歩先の仮想化とは?
仮想化によってどんな課題が解決できるのかを考えるとき、まずは「サーバーを統合したい」、「必要なリソースをできるだけ効率的に使用したい」、「サーバー・ルームの省スペース化をはかりたい」などの声が挙がる。確かに、サーバー統合やリソース使用の効率化などの課題に対して、仮想化は有効な解決策であり、実際多くの企業で、その取り組みが進められてもいる。しかし、さらに一歩進め、仮想化におけるシステムの運用、管理のさらなる向上に役立てていくことを検討する時期がやって来ている。
仮想化の新たな役割と機能
高可用性システムの構築や、ソフトウェア・ライセンス/アカウントの管理など、システムの運用・管理上の課題に対して、仮想化はどのようなアプローチで貢献するのだろうか。従来の仮想化機能と新しい機能について検証しながら役割との関係を見てみよう。
サーバー仮想化の機能
リソース共有(1台を複数に)
例:
LPAR、z/VM®、VMware、VMM
手法:
サーバー統合、ラピッド・プロビジョニング
価値:
柔軟な資源・ワークロード管理
エミュレーション
例:
仮想Ethernet、エミュレーター、iSCSI
互換性、効果的投資、柔軟性
アプライアンス
ソフトウェアの配布効率化
複雑なシステムの構築を単純化できる
リソース統合(複数を一台に)
例:
並列Sysplex、Grid、クラスター、GPFS
価値:
拡張性、高可用性、運用容易性
リソース隔離
例:
DLPAR、CoD、クラスター
価値:拡張の柔軟性
モビリティー
例:
VMotion、LivePrtMobility、Live Migration
価値:
高可用性(計画停止の排除)、省電力
仮想化の典型的な機能には従来3つのアプローチがある。その内の1つが「リソース共有」だ。これは、1台のサーバー(物理資源)をパーティショニングして複数の論理資源に見せる方法である。IBMの具体的なテクノロジーにはLPARやz/VMがある。サーバーの構成方法としては、垂直統合型でスケール・アップしていくパターンとなり、サーバー統合などに適用される。
次の「リソース統合」は、複数の分散配置されている物理資源を1つの論理資源として利用する方法で、アグリゲーション(集約)と呼ばれることもある。サーバーの構成方法としては、水平分散型でスケール・アウトしていくパターンとなり、クラスターやストレージの仮想化、グリッド・コンピューティングなどに適用される。
「エミュレーション」は、ある物理資源を別のタイプの物理資源として利用できるようにする論理資源のことである。エミュレーションの提供例としては、仮想的にパーティショニングされたリソース間のシステム・バスでの通信を、あたかもイーサネットとして管理できるようにしたり、プログラムを書き換えることなくアプリケーションを異なるOSで稼働させることなどに適用される。
この3つの仮想化アプローチは、従来から利用されてきたものであり、これらだけでは、運用・管理の効率化を果たすことは難しい。そこで、新しい機能として、「リソース隔離」、「仮想アライアンス」、「モビリティー」などの技術が開発された。
「リソース隔離」は、たとえば、アプリケーションが必要とするリソースを、そのアプリケーションに専用で割り当てるなどの細かな設定を自動的に行うことが可能になる。IBMのAIX®サーバー上で稼働するダイナミックLPERなどがこのリソース隔離を応用する具体的な技術である。
「仮想アプライアンス」は、ゲストOSやミドルウェア、アプリケーションなどのイメージを仮想マシンにインストールしておくことで、万一の障害などの際の自動プロビジョニングを可能にする。また、「仮想モビリティー」は、サーバーのリプレースやワークロードの負荷分散などをスムーズに行うために、稼働中の仮想マシン全体を、別の物理サーバーに瞬時に移行することを可能にする。IBMからは、IBM Power Systems上で稼働するLive Partition Mobilityが提供されている。
このように、新しい仮想化技術は、リソースとOSやアプリケーションの動的に変化する相関関係を自律的に最適化し、運用、管理を簡素化する仕組みを提供する。
| 非機能要件 | 課題/仮想化適用時の考慮点 | 仮想化テクノロジー |
|---|---|---|
| 管理容易性 | サーバーのワークロード管理を適切にしたい | クラウド・コンピューティング ワークロード従量課金 アプライアンス |
| ライセンスやアカウンティングは仮想化環境ではどうなるのか | ||
| 仮想サーバーがどんどん増えてしまう | ||
| OSやミドルウェアなど依存関係や設定などの条件が複雑 | ||
| 導入・カスタマイズが複雑でスキル・工数が必要。初期トラブルが多い。 | ||
| 拡張性 | リソースの要求の変化が激しい | CoD(キャパシティ・オン・デマンド) |
| 必要なリソースを必要な時に必要なだけ欲しい | クラウド・コンピューティング | |
| 可用性 | BCPが無ければ取引もできない | クラスター モビリティー |
| 24時間365日サービスを実現したい | ||
| 高可用性/災害対策の構成は複雑で高コストになる | ||
| 計画停止も無くしたい | ||
| 環境 | 電力・熱・CO2排出量を低下・削減したい | モビリティー クラウド・コンピューティング |
| CO2排出量削減は企業の社会的責任 | ||
| サーバー有効使用 | ||
| 保守性 | サーバーが必要となるたびに稟議(りんぎ)を上げていては時間が掛かる | 仮想化層 アプライアンス DLPAR、CoD |
| 基幹システムとして長期間使用したい | ||
| 開発環境で作成したアプリケーションが本番環境で稼働しない | ||
| ハードウェア・サポート切れによるシステム更新は避けたい | ||
| リソースの追加をサーバーを停止しないで行いたい |
- chapter1.仮想化技術とシステム管理者の悩み
- chapter2.IBMの仮想化システムとアドバンテージ
- chapter3.失敗しない仮想化導入プロセス
- chapter4.仮想化と今後の企業ITインフラ
IBM, IBMロゴ, AIX, GPFS, Power Systems, z/VMは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標。
