近年、ストレージ・システムに格納されるデータ容量は増加の一途を辿り、その膨大なデータを効率的に運用・管理するため、SAN(Storage
Area Network)に対する企業の関心が高まっています。しかしながら、ファイバー・チャネル(FC)によるSANの導入は初期コストが大きく、専門知識を持つ技術者も不足しており、はじめて導入する場合はある程度のワークロードと時間を要するため、敷居が高くなっているというのが現状です。
NTTグループの電気通信設備メインテナンス会社である株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー東北(以下、NTT-ME東北)では、職員の増加によるファイル・サーバーのデータ量増大に対応し、さらに将来の別棟および遠隔地ファイル・サーバー接続を視野に入れ、「IBM
TotalStorage FAStT700 ストレージ・サーバーおよびFAStT EXP700 拡張エンクロージャー・ユニット」とシスコシステムズ株式会社のiSCSI対応ストレージ・ルーター「SN
5428」を組み合わせたSANソリューションを導入。既存IPネットワークを利用した汎用性の高いSAN環境を実現しています。
課題
・ファイル・サーバーのデータ量増大、将来の別棟および遠隔地ファイル・サーバー接続に対応するSAN環境の短期間・低コストでの自社構築
ソリュー
ション・IBM FAStT700 ストレージ・サーバーおよびFAStT EXP700 拡張ユニット、Cisco SN5428導入
効果
・短期間でのSAN環境の構築
・既存IPネットワークの利用による初期コストの低減
新しい技術を積極的に導入し、自社スキルの向上を図る
NTT-ME東北の企画総務部e-イノベーション推進室は、社内システムの運用・管理を中心業務としていますが、親会社であるNTT東日本のグループ体制見直しに伴い職員が増加したことにより職員が利用するファイル・サーバーのデータ量も増大し、既存の老朽化したファイル・サーバーでは対応できなくなりました。そこでファイル・サーバー兼アプリケーション・サーバーとしてブレード・サーバーを導入することになったのですが、将来的には他の既存サーバー(別棟および遠隔地のファイル・サーバーなど)でも活用できるストレージ・システムにしたいという意向から、ファイバー・チャネルを利用したSAN構築を検討。しかし、ファイバー・チャネルによるSAN(FC
SAN)の構築実績はありませんでした。
検討を始めたのは2002年12月。このとき課題となったのが、年度内サービス開始のために短期間で、また限られた予算内で構築しなければならないという前提条件です。FC
SANは初期コストが大きく、チーム内での構築実績もないため別のアプローチが必要になりました。そこでiSCSI
(Internet SCSI)という技術に着目しました。iSCSIは既存のIPネットワーク・インフラを利用したSAN(IP
SAN)の構築が容易に実現できるため、汎用的なSAN環境の導入を促進する技術として注目されています。このような経緯から、IP
SANとFC SANの双方のメリットを享受できるハイブリッドSANというソリューションが検討されました。
千葉一城氏
「社内システムですから、自分たちでメインテナンスできなければ意味がありません。しかし、スキル・アップのためには新しい技術も導入していく必要があります。そのバランスを考慮した結果、既存のスキルで対応できるIPネットワーク(イーサネット)利用とFC対応ストレージの拡張性を視野に入れ、ハイブリッドSANを構築することにしました」(企画総務部e-イノベーション推進室千葉一城氏
FC SANのメリットは、高速アクセスが可能、今後の普及が見込まれる技術、対応ストレージ製品が豊富という点。デメリットは、SAN対応でない既存システムが多いという点です。一方、IPSANのメリットは、接続性が高い、既存のインフラが利用可能という点。デメリットは、対応ストレージ製品が少ない、認知度が低く参考例が少ないという点です。ハイブリッドSANは双方のデメリットを相互補完し、より利用しやすいストレージ・ネットワーキングを実現することができます。
ハイブリッドSAN構成図
iSCSIの相互接続性検証による信頼性とハイパフォーマンスが決め手に
NTT-ME東北が他に例のなかったハイブリッドSANの導入に踏み切った背景には、シスコシステムズ株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社、ネットワンシステムズ株式会社、プロストレージ株式会社によるiSCSI技術をベースとしたIP
SANソリューションにおける提携がありました。この4社により、IPネットワーク経由でストレージへのユニバーサル・アクセスを提供するシスコ社のストレージ・ルーター「SN
5428」と、「IBM TotalStorageFAStT700ストレージ・サーバー」をはじめとしたSAN対応ストレージ製品の相互接続性や性能、冗長化構成での動作状況などについての検証が行われ、費用対効果に優れたストレージ・ネットワーキング・ソリューションを構築できることが確認されたのです。この検証結果による信頼性が、IBM
Total Storage FAStT700ストレージ・サーバーとCisco SN5428の組み合わせによるハイブリッドSAN導入の決め手になりました。
IBM TotalStorage FAStT700ストレージ・サーバーの採用については、「2Gbps(200MB/秒)ファイバー・チャネルに対応し、標準で2GBのキャッシュを搭載していることから、将来的にも安心であると判断したからです」(千葉氏)と、そのハイパフォーマンスを理由に挙げています。また、必要なときに必要なストレージ容量を拡張できるIBM
TotalStorage FAStT700拡張エンクロージャー・ユニットも同時に導入しています。同社では以前、IBM
TotalStorage IP Storage200iを導入しており、その安定稼働性もIBMストレージ製品への信頼に結びついています。
未経験のスタッフ中心にわずか2週間で構築、コストも最小限に
今回のハイブリッドSANは、千葉氏と中堅スタッフ2名により、2週間あまりの短期間でベースとなるシステムを構築。2003年1月に機種選定、2月下旬にIBM TotalStorage FAStT700ストレージ・サーバーとCisco SN5428の設定などに関する研修を半日ほど受けたあと、3月中旬から千葉氏がリードしつつもストレージ・システム構築経験のない中堅スタッフ2名が中心となって作業が進められました。これは前述のようにスキル・アップが目的です。

神山 敬氏
「概念的なところから勉強して作業をしたので最初は不安もありましたが、夢中になって楽しみながら構築しました」(企画総務部e-イノベーション推進室 神山敬氏/浅野光晴氏)
ストレージ未経験とはいえ、スキルのあるイーサネット(IPネットワーク)を利用したシステムであったことが、これほどの短期間で構築が実現できた要因と言えるでしょう。
このソリューションには、企画から導入までプロストレージ株式会社のサポートもありました。
浅野光晴氏
同社は、ネットワンシステムズと日本IBMとの合弁で設立された、ストレージ・ネットワーキング分野に特化したソリューション・プロバイダーです。特にiSCSIを利用したIP
SANソリューションについては、早期から技術検証を進め、積極的にIPネットワークとストレージの融合を推進しています。
NTT-ME東北では、ブレード・サーバーからの接続をすべてイーサネットとし、ファイバー・チャネル接続を限定的にしたことにより、最小限のコストで要件を満たすパフォーマンスのSAN環境を実現できました。このハイブリッドSAN構築の先進事例は、既存のIT投資を無駄にしないため、コスト面で不安を抱いていた企業にぜひ参考にしていただきたい事例です。
お客様プロフィール

株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー東北
■ 概要
本社
宮城県仙台市若林区五橋 3-2-1
設立
1986年10月31日
年間予算
1億9,735万円円
職員数
1,800名
URL
- IBM、e-businessロゴは、International Business Machines Corporationの米国およびその他の国における商標です。
- 他の会社名、製品名、サービス名等は、それぞれ各社の商標または登録商標。
